がんスクリーニング検査で寿命が伸びるか?
:ランダム化臨床試験のメタ分析
JAMA Intern Med 2023
doi:10.1001/jamainternmed.2023.3798
目的:
がんスクリーニングによってどのくらい寿命が延びるかを推定すること。
研究に用いたデータ:
一般的に用いられている 6種類のがんスクリーニング検査について、スクリーニングを受けた場合と受けなかった場合とを比較し、全死亡率および生存期間延長の推定値を報告した 9年以上の追跡期間を有するランダム化臨床試験を対象として系統的レビューおよびメタ分析を実施した。解析は一般集団を対象とした。MEDLINEおよびCochrane libraryデータベースを検索し、最終検索は2022年10月12日に実施した。
対象とした研究:
乳がんのマンモグラフィ検診、大腸がんの大腸内視鏡検査、S 状結腸鏡検査、便潜血検査(FOBT)、喫煙者および元喫煙者の肺がんのコンピュータ断層撮影検診、または前立腺がんの前立腺特異抗原検査
データ抽出と統合:
研究の検索と選択基準は、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)報告ガイドラインに従った。データの抽出は一人の研究者が行い、プールされた臨床試験のデータを用いて解析を行った。
主要評価項目および測定法:
がんスクリーニングによって得られた生存期間の延長は、スクリーニング群とスクリーニングなし群における観察された生存期間の差として算出した。
結果:
合計 2,111 958人を解析対象とした。追跡期間中央値は、コンピュータ断層撮影、前立腺特異抗原検査、大腸内視鏡検査で 10年、マンモグラフィで13年、S状結腸鏡検査とFOBTで 15年だった。スクリーニング検査によって生存期間に有意な延長が認められたのは S状結腸鏡検査のみだった(110日;95%信頼区間: 0-274日)。マンモグラフィ(0日; 95%信頼区間: -190~237日)、前立腺がん検診(37日; 95%信頼区間: -37~73日)、大腸内視鏡検査(37日; 95%信頼区間: -146~146日)、FOBT検診を毎年または隔年(0日; 95%信頼区間: -70.7~70.7日)、肺がん検診(107日; 95%信頼区間: -286~430日)では有意差は認めなかった。
結論:
このメタ分析の結果は、S状結腸鏡検査による大腸がん検診を除き、一般的ながん検診が寿命を伸ばすという主張を、現在のエビデンスが立証していないことを示唆している。
所感:
Table 2 を見ると、6種類のスクリーニング検査で全死亡率はほとんど減っていないことが分かる。さらにがんによる死亡の絶対リスクについても差があったとしてもごくわずかであることが分かる。
健康な人に対してがんのスクリーニングを行うよりも、喫煙者を減らしたり、生鮮食品が手に入りやすくしたり、睡眠不足や運動不足になりやすい労働環境を改善したり、子どもの貧困対策に力を入れて不健康な人を減らす努力をした方が、幸せに長生きする人を増やせるのではないかと思う。
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2808648?guestAccessKey=c7d91084-054d-49f3-97be-9b302f883c9c&utm_source=twitter&utm_medium=social_jamaim&utm_term=11181634494&utm_campaign=article_alert&linkId=232083149