兎神伝
紅兎〜追想編〜
(13)厨房
「全く!里一さん、何やってんだ!せっかく、二人きりになれるようお膳立てしてやってんのに、 何にもならねえじゃねえか!」
皆と一緒に、愛と朱理を呼びに行った振りをして、密かに残って厨房を覗き見てる政樹は、イライラしていた。
「女なんてのはなー、しのごの言わず、さっさと押し倒して、する事しちまえば良いんだよ!もう!里一さん!」
「ポヤポヤ~?マサ兄ちゃんって、まーだ、男女の事、な~んにも、わかってないポニョ~。」
隣で並び、一緒になって覗きをしてる茜は、腕組みし、知ったかぶった顔して、首をフリフリ言った。
「こう言う事はね、課程が大事だポニョ、課程が。あーやって、最もらしい顔して、他愛ない話を羅列しながら、お互い、焦らしに焦らして、その気にさせて…最後に一気にしちゃうポニョ。私達もそうだったポニョ。」
「そう言えば…そうだったな。最初、恥ずかしがって、ちょっとでも手を握れば、顔を真っ赤に泣きそうになるお前を、一緒に菓子作って、味だの形だのの話をしながら、俺が徐々に気持ちを解してやったんだっけ…それで、ここぞと言うところで、一気に…」
「ポヤポヤ~?違うポニョ~。マサ兄ちゃんこそ、手を握る事もできず、舞い上がってろくに話もできなかったのを、私が、お菓子をつくりながら、それとなくすり擦り寄って…ほら、背中を掻いて欲しいってお願いして…手の位置を少しずつずらしてもらいながら、胸に触らせてあげたポニョ~。マサ兄ちゃんったら、ちょっと私の乳房に触れただけで、もう、お顔真っ赤っかにしちゃって、可愛かったポニョ~。」
「それはないだろう。茜ちゃんが、いくら肝心な話をしようとしても、すぐ顔を赤くして、お菓子の話にそらすから、痺れを切らした俺が、一気に押し倒して…」
「ポヤポヤ~?そうじゃないポニョ!そうじゃないポニョ!ちょっと胸やお尻を触らせただけで、顔を赤くして尻込みしちゃうから、こりゃー埒あかんと思って、私が帯といて、裸になって、一気にマサ兄ちゃんを…」
「いやいや、そうじゃない、そうじゃない…」
「ポヤ~?待って、マサ兄ちゃん、ユカ姉ちゃん、行動に出たポニョ~。」
「本当か?」
と…
覗かれているとも知らず…
「待って、それ、私が運ぶわ。里一さんは、洗い物をお願い。」
由香里は、大鉢いっぱい盛られたソーメンを運ぼうとする里一を慌てて止めて言った。
「なーに、心配いらねえっすよ。これくらい、あっしにだって運べやす。」
「駄目よ、危ないわ。」
と…
由香里は、大鉢を取り上げようとして、里一の手に触れてしまうと…
「アッ…」
と、声を上げて、手を引っ込めてしまった。
「由香里さん、どうしなすった!大丈夫でござんすか?」
里一が、慌てて大鉢を置いて、空を弄りながら、手で由香里を探し求めた。
「大丈夫よ!」
由香里は、フラフラ自分を探す里一の手を、慌ててとった。
「里一さんこそ、危ないわ。だって、里一さん…」
言いかけ、由香里が口をつぐむと…
「心配、ござんせん。あっしはめくらでも、由香里さんの姿はいつだって見えてござんす。」
里一は、さっと由香里の肩を抱いた。
「よっしゃー!イケイケッ!里一さん、それでこそ男だ!そのまま、押し倒しちゃえっ!」
「ユカ姉ちゃん!今ポニョ~。今こそ、里一さんの手を胸にいれちゃうポニョ~。でもって、そのまま寝床に引っ張りこんで…」
しかし…
物陰の政樹と茜の期待するようにはならず…
「大丈夫、これくらいのもの、あっしは軽く運べやす。」
また、赤面して俯く由香里の肩を離すと、里一は軽々と大鉢を、食卓に運んで行った。
「あっしはね、小さい頃から、何でも目あきと同じようにできるよう、訓練してきたんでござんすよ。」
ソーメンの大鉢を運び終えると、天麩羅を盛り付けた小鉢を運びながら話し始めた。
「親父さんに頂いた命、どうしても、みんなに認めて欲しくてねー。」
「里一さん、苦労してきたのね…」
由香里は、しんみり言いながら、一緒にお膳を食卓に並べ始めた。
「苦労だとは思っておりやせん。」
里一は、見えぬ目を、由香里の方に向けると、笑顔を浮かべて言った。
「あっしら仔兎神(ことみ)は、一月の間、産みの母の手元に置かれるでござんすよ。健康かどうか、見分ける為にね。それで、もし、あっしのようにめくらなのが分かると、産んだ母親は、健康な子を産まなかったと散々に折檻され、その母親の目の前で、子供は殺されるのでござんす。」
「知ってるわ…前の親社(おやしろ)様の時は、ここもそうでしたもの…雲雀(ひばり)姉さんの産んだ子も、ちんばなのがわかって、目の前で殺されたもの…
床上げ早々、拷問みたいな折檻もひどかったけど…その子が殺されたのが元で、気が触れて、死んでしまったのよ。
愛していた、萬屋の錦之介さんとの間にできた子だと思って、とても可愛がっていたからね…」
由香里は、遠い昔、可愛がり、事ある毎に身をもって庇ってくれていた、心優しい歳上の白兎を思い出して涙ぐんだ。
「でも、あっしは生き長らえる事が出来やした…」
里一は、大きく息を吐いて言った。
「親父さんが救ってくれやした。あっしを殺すように命じられた親父さんが、おっ母さん仕込みの仮死にする薬を盛って、死んだ事にして見逃してくれたんでござんす。
親父さんが、無かった筈のあっしの命を拾ってくれやした。だから、あっしは、親父さんを本当のお父っつぁんだと思っておりやす。その親父さんから頂いた命、価値がねえとみなした連中に、価値がある事を見せつけてやりてぇんです。だから、目開きと同じように何でもできるよう、特訓してきたでござんすよ。」
「そうでしたの…」
由香里がしんみり言うと…
「なーにが、特訓だー!」
またまた、物陰でまた、政樹が苛々し始めた。
「そんな特訓良いから、さっさと押し倒せ!もう!俺が、男の房中事を特訓してやらあ!」
「ポヤポヤ…本当、マサ兄ちゃんは、なーんにも知らなくて困っちゃうポニョ~。」
隣で、茜がため息ついて言う。
「あのね…あーゆー、湿っぽい話をして、情を引くのは、男女の駆け引きの基本中の基本ポニョ~。涙を誘う話をして、情引く…情にほだされたように受け止め、同調する…
そうやって、徐々に気持ちを高めてゆくポニョ~。
そろそろ、ユカ姉ちゃんの神門は濡れ出してるポニョ~。
でもって、ユカ姉ちゃんがメソメソし始めると、里一さんの穂柱が、少しずつ堅くなり始めるポニョ~。」
「そーかー?」
「そーよー。見てるポニョ~。これから、ユカ姉ちゃんは、手拭いを目頭に当ててメソメソしながら、里一さんにしな垂れかかるポニョ~。それで、里一さんは、慰めるように肩に腕を回しながら、胸元に手を入れて、乳房を弄って、唇を重ね…
後は、ゆっくり押し倒して、帯を解くポニョ~…
わあ!何か、だんだん、私の神門が濡れてきそうだポニョ~。」
「そーかー?」
「そーよー。本当、マサ兄ちゃん、まだまだ男女の事、なーんもわからなくて、困っちゃうポニョ~。後で、床の中で、しっかり教育してあげるでポヤポヤ…」
しかし…
「ポヤポヤ~?」
首を傾げる茜の前で、今、政樹に話して聞かせたような展開にはならなかった。
「ところで…
ユカさんは、どうして、此処を出なさらねえんでござんすか?
兎神子(ことみ)はとっくに解かれてると聞きやすぜ。」
里一が、不意に話題を変えて尋ねると…
「それは…」
言葉を詰まらせる由香里の代わりに…
「何、野暮な事聞いちゃってるポニョ~。」
今度は、思った通りの展開にならず、茜が苛々しながら言った。
「ユカ姉ちゃんが、此処を出て行かない理由は、一つに決まってるポニョ~。里一さんポニョ~。里一さんに会う為に決まってるポニョ~。」
由香里は、目と鼻の先で、興味津々な弟分と妹分が気を揉んでるとも知らず…
「此処を出てゆくのが怖いの…」
「怖い?」
「そう…また、あの子達が、いつもお腹を空かす事になるんじゃないかと…」
そこまで言うと、唇を噛んで俯いた。
「それはねえでござんすよ。」
里一は、漸くお膳が綺麗に並べられたのを、肌の感覚で確認すると、由香里を近くの椅子に座らせて言った。
「あいつらも、もう立派な大人でござんすよ。由香里さんが出て行きなすっても、ちゃーんとやって行けるでござんす。」
「でもね…」
由香里は、呟きながら、前の宮司の頃を思い出していた。
当時…
兎神子(とみこ)達は、飼われた兎以下の扱いを受けていた。
一日の殆どは、穂供(そなえ)目当ての参拝者の相手をさせられた。
兎神子(とみこ)の身体(からだ)目当てに来る参拝者がいなければ、社(やしろ)の神職(みしき)達、神漏(みもろ)達や神使(みさき)達に、寄ってたかって、弄ばれた。
まともな着物も着せて貰えず、食べ物と言えば、餌と呼ばれる残飯を投げ与えられていた。
それも、十分には与えられなかった。敢えて、いつも空腹にさせられていた。空腹でいた方が、穂供(そなえ)の際、穂柱を咥える時の吸い付きが良くなるとされていたのだ。
そうして…
粗相なく相手を勤め上げれば、若干、いつもより余分に食べさせて貰える時もあったが、一人でも粗相をしでかした時は、全員何も食べさせて貰えなかった。
そんな時…
厨房からは、いつも良い匂いがしていた。
覗くと、神職(みしき)達や神漏(みもろ)達が口にする、美味しそうなご馳走の数々が並んでいた。
由香里は、それを見て、いつも涎ではなく、涙を流していた。いつも、側でビービー泣いている、弟妹のように思っていた、幼い兎神子(とみこ)達に食べさせてやりたかったのだ。
ある時…
思い余って、厨房に並ぶ料理を盗んで、まだ小さかった、政樹と茜にこっそり食べさせてやった。
すると、政樹と茜は、夢中で食べながら、何とも言えない笑顔を見せた。いつも、激しい折檻と陵辱に怯えて、幼子らしさのかけらも見せた事のなかった二人が、こんな無邪気な顔をするのかと思った。
由香里は、それが忘れられず、何度も何度も、厨房に潜りこんで、食べ物を盗んでは、兎神子(とみこ)達に与えた。
しかし、あまりにも度々の事であったので、遂に露見する日がやってきた。
幼い兎神子(とみこ)達が、厨房のものを食べてる事が露見しそうになると…
由香里は、わざと、調理係の神人(じにん)達が見えるところで、厨房のものを貪り食って見せた。
『この、泥棒猫が!』
『兎の分際で、人様のモノに口付けるとは、とんでもねえ奴だ!』
神人(じにん)達は、凄まじい剣幕で罵りながら、薪木や箒を持ち、延々と殴る蹴るの暴行を加えた。
それだけでない。
『脱げ…』
雪の中…
全裸で木に繋がれて死にはぐってる美香の為に、僅かな汁物と粥を盗んだ時の事。
やはり、見つかってしまった由香里は、盗んだものを雪絵と茜に渡すと、わざと神人(じにん)に見つかるように、厨房のものを貪り食って見せた。
すると、神人(じにん)に告げ知らされた、前任の眞吾宮司(しんごのみやつかさ)は、境内の外に連れ出すと、皆の見てる前で着物を脱ぐように命じた。
『何してる、裾除けも取れ…』
そう言って、一糸纏わぬ姿にさせると…
『四つん這いになれ…さっさとなれ!』
由香里を思い切り蹴り倒し、蹲る由香里を何度も激しく蹴飛ばし、牛用の鞭で叩きのめした。
そして…
『おまえ、そんなに食い物が欲しかったのか?そうか、そうか、だったら、たーんとご馳走してやろう。』
ニンマリ笑って言うと、神人(じにん)に持って来させた、グツグツ音を立てて煮え立つ、鍋いっぱいの煮物を、傷だらけになった背中にぶっ掛けてきたのである。
由香里は、彼女が仕置きされる姿に大泣きする幼い兎神子(とみこ)達の姿を見回し、必死に悲鳴を堪えながら、ずっと思い続けていた。
厨房が欲しい。
あの厨房さえ手に入ったら、好きなだけ、あの子達に食べさせてやれる。
お腹いっぱい、美味しいものを食べさせてあげられる。
厨房が欲しい。
厨房が欲しい。
切に願い続けてきたのだ。
そうして、前任の宮司(みやつかさ)が禰宜や権禰宜(かりねぎ)達と共に失踪し、その他の神職(みしき)達や神漏(みもろ)達も解雇されると、念願の厨房が手に入った。
しかし…
調理などした事がなかった由香里は、料理とは、茹でたり焼いたりした、野菜や魚に、調味料をぶっかけるだけだと思っていた。とにかく、山程食べさせる事しか考えてなかった、由香里の出す料理は、食えたものではなかった。
それでも、由香里がどんな気持ちで生きてきたか知ってる兎神子(とみこ)達は、その不味いなんてものではない料理を、必死に嬉しそうな顔を作って、喜んで食べて見せたのである。
しかし、作った当人である由香里が、それを口にして、思わず吐き出した。来る日も来る日も、自分で作った料理を口にしては、思い切り吐き出しながら、せっかく厨房が手に入っても、幼い兎神子(とみこ)達に美味しいものを食べさせてやれず、泣き続けたのである。
そんな時、里一が社(やしろ)を訪れ、調理を一から仕込んでくれたのであった。
「由香里さんは、本当に頑張りやしたよ。あっしは、幼い弟分や妹分達に、美味えものを食わせる事に一途な由香里さんに…」
里一が、由香里に背中を向けて言いかけると…
「言えっ!里一さん、言うんだ!男だろう!」
「そうよ!頑張っるポニョ~。里一さん、頑張るポニョ~。」
目と鼻の先の物陰で、政樹と茜が、手に汗握って、熱く声援を送っていた。
しかし…
「どうしたの、里一さん?」
おし黙る里一に、由香里が首を傾げると…
「いえ、何でもありやせん…」
里一が、大きく息を吐いて振り向き…
「さあ…みんなが戻って来る前に、洗えるものは、洗っておきやしょう。」
言うなり…
「ありっ….」
「ポヤポヤ…」
政樹と茜は、思わず前のめりにこけ落ちそうになった。
由香里は、黙々と洗い物を始める里一の後ろ姿を見つめながら思った。
いつからだろう…
自分では、歳下の兎神子(とみこ)達を満腹にさせるのが使命だと思っていた。自分が食べなくても、飢えていても、あの子達のお腹を膨らせる事の為だけに生きていると思っていた。
でも…
いつの頃からか、もう一つ、生きる道を見出すようになっていた。
それは…
この背中を見る事だった。
たまに訪れては、調理の手解きをしてくれる見えない人…
彼には光がない。
彼に見えるものは何もない。
その彼が、調理のイロハも分からなかった自分に、厨房の光を当ててくれた。
初めて、自分の手で作った料理…
それは、冷ソーメンであった。
今となっては、自分にとっては特別な料理…
この世で最も美味しい料理を、見せてくれたのだ。
次に覚えた美味しい料理は、鍋であった。
そうやって、彼が訪れる度に、厨房に眩い光が差し、新しい料理を見させてくれる。
それが…
いつの頃からか、彼自身が、眩い光となっていた。
この人は光…
眩い自分の光…
この光に照らされる為に、生きているのだ…
この光に照らされる為に、生まれてきたのだ…
由香里は、そう思うようになったのである。
「あっ…里一さん、危ない…」
里一が見えない目で、包丁を洗おうとした時…
思わず、彼のそばに駆け寄り、由香里は逆に取り上げようとした包丁で、自分の指先を切った。
「大丈夫でござんすか?刃物にいきなり手を出しては、危のうござんすよ。」
里一は、隣で軽く声を出す由香里の手を取って言った。
「大丈夫よ、里一さん。」
由香里が、指先を切った手を後ろに隠そうとすると…
「大丈夫じゃないでしょう。怪我してるじゃあ、ござんせんか。」
里一は、懐からいつも持ち歩いている傷薬を取り出し、由香里の手当てを始めた。
「うわっ!バカッ!違うだろう!そこは、指を舐めてやらなきゃー!」
またもや、物陰で、政樹が地団駄踏んで言った。
「ポヤポヤーーーッ!もうっ!唐変木!この絶好の機会なのに!女はね!こう言う時、指を舐められるだけで、濡れちゃうポニョ~!もうっ!私が濡れてきたってのにポニョ~!後は、さりげなく唇を吸って、乳房を揉んであげれば…」
茜も続けて唇を噛み締めると…
「何でも良いけど、茜ちゃん、痛え…」
政樹が頭を抑えて言った。
茜が、苛立ちの余り、前にしゃがみ込む政樹の頭をポカポカ叩いていたのだ。
そんな覗き魔の事など露知らず…
「あっしの事は、心配しねえでおくんなせえ。この目は、何でも見えておりやすから…」
里一が言うと…
「でも…せめて、私の前では、危ない事はしないで…
その…
いつも、側にいて差し上げられないけど…せめて、ここにいる時だけは、私、里一さんの目でいたいの…」
由香里は一気に言って、頬を赤くした。
「何の…
由香里さんは、いつだって、あっしの目であり、光でござんすよ。」
里一もまた、そう言うと、頬を熱らせた。
「里一さん…」
「由香里さんが居てくれやしたら、あっしは、何でも見えるんでござんす。由香里さんがおいでになるここは、いつだって、光輝いてござんす。だから…」
ずっと、側にいて欲しい…
里一は、最後の一言を呑み込んで、代わりに由香里の手を握りしめた。
「よしっ!行けっ!その調子だ!」
またもや、政樹が、物陰で手に汗握り出した。
「ポヤポヤ~!ユカ姉ちゃんも頑張るポニョ~!里一さんに、抱いて欲しいんポニョ~!もう、五年近くも、里一さんに抱かれる夢ばかり見て、参道をムズムズ、神門をビショビショにしたんでポニョ~!」
と、茜は何故か自分が股間に手を強く押し当てて、モジモジし始めた。
「どうした、茜ちゃん?オシッコ我慢してるのか?」
政樹が首を傾げると!
「バカッ!」
茜は、政樹の頬を引っ叩いた。
「ユカ姉ちゃん、ここはもう、あと一押しポニョ!思い切って、両肌脱いで、お乳出すポニョ!それで、しのごの言わせないで、押し倒しちゃうポニョ!唇吸って、強く乳房に手を押し当てさせちゃうポニョ!そうしたら、もう、完璧だポニョ!」
茜は、何故かまた、自分が股間に手を押し当てて、モジモジしながら、熱くなった。
しかし…
茜の期待通りには展開せず…
「でも、由香里さんに心配かけちゃあ、申し訳ねえ。ここは、刃物はお任せいたしやしょう。」
里一が言うと…
「うん。」
由香里は満面の笑みで頷いた。
「さあ、みんなももうすぐやって来るでござんしょう。急いで、洗い物を片付けやしょう。」
「うん。」
もう一度、由香里が頷いて、里一の顔を見上げると、里一の見えない筈の目線が、何故か由香里の目線と絡み合い、二人は幸せそうな笑みを交わした。
「ポヤポヤーーーーッ!!!なんなのポニョ~~~~!!!!」
茜は相変わらず股間を強く押さえてモジモジしながら、もう片方の手で、政樹の頭をポカポカ叩き出した。
「だから、痛えって!」
政樹が、また、頭を抑えて言うと…
「ポヤポヤ…マサ兄ちゃん…」
茜は、今度は涙目を、まっすぐ政樹に向けた。
「どうした…やっぱり、オシッコに行きたいのか?」
政樹が首を傾げて言うと…
「ポヤポヤ…あんな中途半端見せられて…身体は火照るポニョ~…参道の疼きは止まらないポニョ~…どーしたら良いポニョ~…」
茜は、ますます涙ぐんで、べそを掻き出した。
「なーるへそ、そーゆー訳か。」
政樹が、ポーンと右拳で左掌を叩くと…
「そーゆー事なら、兄ちゃんに任せとけ!今、そいつを鎮めてやるからな。」
そう言って、茜を抱きしめながら、裾除けの中に手を忍ばせた。
「アン…アン…そこ…そこが…」
茜が、甘えるような声を上げると…
「そうだな…確かに、こんなに疼いてるんじゃあ、辛いだろう。兄ちゃんが、今、楽にしてやるかなら…」
「本当?本当に、鎮めてくれるポニョ~?」
言いながら、自分から両肩脱いで、前より幾分膨よかになりかけた可愛い乳房を剥き出して見せた。
政樹は、思い切り鼻の下を伸ばして、満面の笑みを浮かべると、答える代わりに、唇を吸い上げていた口を、うなじに這わせながら、ゆっくり乳首に運んで言った。
「アン!アン!マサ兄ちゃん、好きポニョ~!誰に何を言われても良いポニョ~!されても良いポニョ~!私、マサ兄ちゃんが好きポニョ~!愛してるポニョ~!」
茜は、可愛い乳首を舌先で転がされ、吸われながら、一層、甘えるような声を上げて言った。
その時…
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、オッパイ、オッパイ、チューチューしてるよ!チューチューしてるよ!」
突然、横から、何ともあどけない大きな声が聞こえてきた。
いよいよ、出来上がりかけた政樹と茜が、慌てて振り向くと、例のオカッパ頭が、ニコニコ笑いながら、ジーッとこっちを見つめていた。
「うわっ!」
「ポヤポヤッ!」
政樹と茜は、思わず声を上げると…
「うわーーーっ!覗きでごじゃるよーー!!!覗きでごじゃるよーーー!ここに、覗きがいるでごじゃるよーーーー!!!」
甲高い声が響き、今度は、由香里が血相変えて、厨房から飛び出してきた。
「まあ!あんた達!!!!」
そこには、同じ格好で腕組みする朱理と希美に、ジーッ睨みつけられ、バツ悪そうに頭を掻く政樹と茜がいた。
「エヘヘへ…」
「ポヤポヤ、ポニョ、ポニョ…」
政樹と茜は、眉に皺寄せ、口をへの字にした由香里に見下ろされると、思い切り笑ってごまかそうとした。
次の刹那…
「あんた達、さっきから、ずーーーーっと覗き見してたんだー!」
言うなり、由香里は思い切り、拳を振り上げた。
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