兎神伝
紅兎〜追想編〜
(12)赤子
「爺じ、お帰りなさーい。」
障子を開けると、明るい声が一斉に私を出迎えた。
私は、暫し目を瞑る。
まだ、愛と赤子と向き合う心の準備ができていない…
幼い身での出産にしては、愛は然程の難産ではなかった。
助産の腕は天才的とも言える亜美が、助手を務めてくれた事もあるのだろうが、意外な程、呆気なく赤子は生まれ落ち、私の腕の中で元気よく産声をあげた。
『愛ちゃん、産まれたよ。女の子だ。』
愛は、ただにこやかに、私から赤子を受け取り、その胸に抱いた。
まだ、膨らみかけたばかりの乳房なのに、乳はよく出て、赤子は元気よく飲み始めた。
『アッちゃん、ありがとう。君のおかげで、無事に産まれたよ。』
私の言葉に、返事はなかった。
今までなら…
『フン!あんたの為にやったんじゃないよ。サナちゃんが、赤ちゃん助けてって言うから、仕方なくやったんだ。礼なら、サナちゃんに言いな。』
と、そっぽ向いて答えるところなのだが…
その日は、やはり無表情の無反応であった。
『亜美姉ちゃん、ありがとうね。』
愛しそうに赤子を抱きながら、笑顔を傾ける愛にも、愛の産んだ子も見ようとせず、亜美はその場を去って行った。
そして、残された私と愛と赤子の三人…
『見て、もう寝ちゃったわ。』
愛は、お腹が膨れるとすぐに寝息をたててしまった赤子を見て、クスクス笑いだした。
『何て、可愛んだろう。』
愛は、嬉しそうな笑顔を向けて、私の顔を見上げた。
私は、何と答えて良いかわからなかった。
愛に抱かれた時、深い安らぎと眠りがあった。
愛が身篭った時、至福の喜びと充足感があった。
しかし…
漸く産まれ出た我が子の顔を見た時…
深い悲しみと無力感に襲われた。
この子は…
雪解けを待って、和邇雨一族が取り込みを画策している家に、養子に出されて行く。
一生、和邇雨一族の野望陰謀の道具にされて生きる定めにある。
何の為に産んだのだろう…
何の為に産まれてきたのだろう…
愛の皮剥を阻止できなかった。
愛が目の前で始終玩具にされてるのを見ている事しかできなかった。
早苗と智子が願っていたように、私は愛を拾里に送る画策をしていた。
愛が使い物にならなくなったと言う事にして、拾里に送り込む…
それ事態は、そう難しい話ではない。
実際…
そうやって山林に捨てられた赤兎は過去五万といる。
しかし、愛は拾里行きを望まなかった。
『私が拾里に行ったら、次は誰が赤兎になるの?』
『それは…』
私が答えに詰まると…
『舞ちゃん?』
愛は、実に大人びた静かな眼差しを向けて尋ねた。
『舞ちゃんは…君の妹はならない。一度、赤兎を出した兎神家(とがみのいえ)からは、赤兎を出さないのが慣習だ。』
私が硬く目を瞑って答えると…
『それじゃあ、誰?』
私は何も答えず沈黙した。
『誰かは、赤兎に兎幣されるのよね…』
次の愛の問いにも、私は沈黙した。
『きっと、舞ちゃん…自分から赤兎になると言うわ。』
私が思わず目を見開くと、愛はまた大人びた眼差しを向け、大きく頷いた。
『あの子は、そう言う子なのよ…』
『いや、それはない!絶対にない!私が、そんな事…』
『あの子はね…』
愛は、慌てて打ち消す私の言葉を聞き流すように話し続けた。
『舞ちゃんは、自分が最初の田打で泣き出した事で、私が赤兎に兎幣された事を、ずっと悔やみ続けていたの。
私が道端で大勢の男達に穂供(そなえ)をされているのを、遠目に見てはずっと泣いていたの。
それで、ある時期から、自分が代わりたいと言い出した…』
知っている。
愛の父、山田屋隆夫が、泣きながら私に話していたから…
舞は、今すぐ自分を赤兎に兎幣して欲しい…
自分が赤兎になるから、愛を自由にしてやって欲しいと、泣きながら毎日訴えていると…
一度、兎幣された赤兎は、何があっても解かれる事はない…
そう告げると…
なら、次の赤兎には自分が兎幣されると言って、自ら着物を脱いで、田打するよう父に求めたと言う。
隆夫が、赤兎を出した兎神家(とがみのいえ)から、次の赤兎は兎幣されない事を告げられると…
『それなら、お姉ちゃんが赤兎でいる間、私も着物着ない…ずっと裸でいる。私が裸になって、少なくとも河曽根組の神漏(みもろ)様達や若様達には、私が何でも言う事を聞くから、お姉ちゃんに酷い事をしないようにお願いする…』
そう言って、どんなに父や母と義母に窘められても、決して着物を着なくなったのだと言う。
結局、河曽根組の連中が、舞に手を出す事はなかった。
私が舞に指一本でも触れれば、河曽根鱶見家(かわそねふかみのいえ)の断絶をほのめかせたのもあるが…
最近、康弘連(やすひろのむらじ)の思惑で選出された、鱶見社領(ふかみのやしろのかなめ)の神使(みさき)筆頭である、大使主(おおおみ)の河金丸信使主(かわかねまるのぶのおみ)が、舞に手を出そうとした河曽根組の子弟を告発したのが大きかった。
元々、康弘連(やすひろのむらじ)と肌が合わず嫌悪していた河金丸信使主(かわかねまるのぶのおみ)は、何故か自分を気に入り大使主(おおおみ)に取り立てられた後も、それは変わらず、絶えず康弘連(やすひろのむらじ)の足を引っ張ろうとしていた。
その一貫として、愛の妹の舞に手を出そうとする子弟を告発した。
康弘連(やすひろのむらじ)は涼しい顔して、自ら舞に手を出した河曽根組の子弟を断罪した後…
『怖かったろう?うちの門下衆が、酷い事をしてすまなかったね。』
その日も全裸で町を歩く舞を呼び止め、謝罪して言った。
『舞は良い子だ。姉の為に自ら着物を脱ぎ捨てて、身代わりになろうとするなんて、何て健気なんだ。
そんな健気な子に酷い事をするなんて、二度と許さないよ。
それに…
赤兎の家族は、次の赤兎にならないのが慣習だ。
次の赤兎は…』
そして、舞の耳元近く囁いて告げたのは、山田屋隆夫同様、居店座頭、林屋木久蔵に可愛がられている兎神家(とがみのいえ)…
柳屋小太郎の娘である小雪の名であった。
『あの子、自分の代わりに私を赤兎にした上、今度は幼友達の小雪ちゃんが赤兎にさせられるなんて、絶対望まない…
もし、どうしても私の妹である事を理由に自分が赤兎に兎幣されず、小雪ちゃんが兎幣されたら…
死ぬまで、着物を着ないで、全裸で過ごし続ける…
あの子は、そう言う子なの…』
『わかってる…』
私は、愛の言葉にジッと耳を傾けた後、重い口を開いて言った。
『だから、小雪ちゃんも、決して赤兎にはしない…させない…何としてでも…』
すると…
『そうしたら…今度は小雪ちゃんが傷つくわ…』
愛は、目に涙を溜めて言った。
『あの子は、自分が親友の舞ちゃんの身代わりに赤兎になるつもりで、既に始まってる田打に耐えている…
舞ちゃんの為だけじゃない…
自分が赤兎になる事で、自分が赤兎でいる間、誰も赤兎にならずに済む…
それを支えに、毎日、父親からどんな痛い事や恥ずかしい事をさせられても、耐えている。
だのに…』
『愛ちゃん…』
『神領(かむのかなめ)の決まりは誰にもどうにもできないわ。例え、親社(おやしろ)様でも…
でも、せめて、私が赤兎でいる間は、他の誰も赤兎にならずに済む。私が赤兎でなくなるまで、みんな…
だから、私…』
私は、それ以上、愛の言葉を待つ事なく、ただ黙って愛を抱きしめるしかできなかった…
結局…
十二の歳まで、赤兎でいさせる事になってしまった…
そして、産まれてきた子…
愛の為に何もできなかった私は、この子の為にも何もしてやれない…
何と無力なのだろう…
『親社(おやしろ)様、どうしたの?この子、可愛くないの?嬉しくないの?親社(おやしろ)様の子なのよ。』
愛は、私の顔を見つめながら、次第に悲しそうな顔をして言った。
『いや、嬉しいとも。可愛い子だ、良い子を産んでくれて、ありがとう。』
私がそう言って、愛の頬を撫でてやると、愛はまた嬉しそうに笑った。
そうとも…
束の間であっても、精一杯の愛情を注いでやろう…
それで…
連れられて行く日には、愛と共に泣こう…
連れられた後は、生涯、この子の事を思って苦しみ続けよう。
それで消えはしないが、精一杯の償いをし続けよう。
私は、心を決めると、ゆっくりと目を開けた。
「もう!爺じ、遅い!」
まず、ブンむくれた菜穂の顔が目に入った。
「まあまあ、そう怒らない怒らない。父親って、こう言う時、心の準備が大変なんだ。」
次に、嗜めるつもりで言い…
「何が、心の準備よ!一人でずっと赤ちゃんと待ち続けた、愛ちゃんの身にもなって!だいたい、本当なら一日だって側を離れたくない愛ちゃんから、爺じが離れなくちゃならなかったのは、誰のせいなの!お父さんが、呑んだくれて迷子になったせいでしょう!」
返って、菜穂に叱られる羽目になって、タジタジとしている和幸の姿。
次に、相変わらず無愛想だが、優しい眼差しを向ける秀行。
「アッちゃん!」
思わず声を上げると、亜美は一瞬、ハッとなり…
「アッちゃんも、来てくれたのか!」
私が言うと、忽ち、怒りとも憎悪ともつかぬ形相で睨みつけ、プイッとそっぽを向いてしまった。
『この人殺し!あんたが、殺した!あんたが、サナちゃんを殺したんだ!』
『その通りだ…私が、サナちゃんを殺した。この手で、サナちゃんを殺した。』
『許さない!絶対、絶対、あんたを許さない!殺してやる!あんたを殺してやる!』
『良いよ…サナちゃんを殺した私を殺すと良い。もし、あの世で会えたなら、あの子に君の悲しみを伝えて、謝ってこよう。』
早苗が逝った日…
私に、激しく掴みかかり、殴りつけてくる早苗に、されるがままになっていた私は言うと、懐から匕首を抜いて、亜美に渡した。
『さあ、それで私の胸でも腹でも好きな所を指すと良い。一思いに殺してくれとも言わん。サナちゃんが味わった分、私も同じ痛みを味わおう。」
すると…
しばし、匕首を握りしめて、刃を見つめて震えていた亜美は…
『やめた!』
不意に、匕首を放り投げるや、そっぽを向いてしまった。
『あんた何か、殺す値打ちもないわ!私、絶対、あんたを許さない!一生かけて、あんたを恨んでやる!憎んでやる!そんな私をみて、死ぬまで、サナちゃんを殺した事を思い出して苦しむと良いわ!あの子が、どんな風に苦しんで、泣き叫んだか、思い出すと良いわ!』
そして…
それを実行するかのように、ひたすら憎悪の眼差しを私に送り続けてきた。
そう…
早苗が産んだ子が、連れ去られて行くその日まで…
あの眼差しを、今、また向けてきていたのだ。
それで良い…
私を憎む事で、また生きられるなら、一生、私を憎み続けると良い。
「ジャジャーン!!!」
漸く、私に目を向けられると、朱理が待ってましたとばかりに、二本指で鼻の下を擦りながら愛を前に突き出してきた。
「エーーーッヘン!エーーーーッヘン!どーだー、凄いじゃろう!!!!」
私は、思わず息を飲み込んだ。
元々、大人びた子だとは思っていたが…
白無垢を着込み、綿帽子から仄かに垣間見える愛の澄まし顔は、凡そ十二歳の少女とは思われぬ、成熟した色香を漂わせていた。
「愛ちゃん…君は、本当に愛ちゃんなのか?」
私が尋ねると、物静かに俯いていた愛は、仄かな紅を差す口元を綻ばせると、小さく頷いて見せた。
私が憑かれたように魅入っていると…
「テヘヘへ…ほーら、愛ちゃん、もっと顔を見せてあげなよ。」
何故か、朱理が思い切り照れながら促すと、愛はそっと綿帽子に手を添えて、中の顔を出して見せた。
私は、また息を飲み込む。
朱理が、着付けと一緒に、ほぼ一日かけて施した化粧も良かったのだろうが…
伏せ目がちだった、大粒な瞳の眼差しをまっすぐ向けられた時、何とも言えぬ美しさに、鼓動が高鳴るのを感じた。
同時に…
かつて、太郎率いる悪餓鬼達や黒兎達と境内や裏山を駆け回り、泥まみれになっていた幼い少女はもういない…
そんな寂しさと、赤兎として過ごした三年の月日が、子供から子供らしさを奪ってしまったのだと言う胸の痛みも感じた。
それは、共に側に立って愛を見つめる太郎も同じだった。
恋い焦がれる少女に見惚れると言うよりは、痛々しい胸の疼きを堪え、俯いていた。
すると…
「お帰りなさい、爺じ。」
愛は、突然、悪戯っぽい笑みを満面に浮かべたかと思うと、十八番の片目瞬きをして見せた。
「おいおい、愛ちゃん…君まで、爺じなのかい!」
私が、苦笑いして言うと、それまで何処か張り詰めていたその場が、一気に爆笑の渦に包まれた。
「へん!こいつに、爺じ何て、勿体ねーや!」
今にも泣きそうにだった太郎も、着物が立派なだけで、中身が何も変わってない愛に元気付いたのか、急に、いつもの悪態をつきだした。
「こいつにはなー、クソジジイで十分だぜ。」
「まあ、酷い!」
ついさっきまで、十二の少女とは思えぬ大人の色香を漂わせていた愛もまた、既に昔のお転婆な少女に戻り…
「私の大事な人に、クソジジイ何てあんまりよ!そんな事言うなら、もう遊ばない!」
口を尖らせ、プイッとそっぽを向いた。
「そんな、愛ちゃん…」
忽ち、太郎がしょげると、愛はニコッと笑い…
「太郎君、お久しぶり。今日は来てくれてありがとう。」
十八番の片目瞬きをして見せると、今度は、太郎は頭をかきながら顔を真っ赤にした。
そこへ…
「もう!爺じったら、大事な事を忘れちゃダメでごじゃるよ!」
さっきから、痺れを切らしたように、私を見守っていた朱理が、すかさず口を出してきた。
「大事な事?」
私が思わず首を傾げると…
「愛ちゃん、一日かけて、こーんなにめかし込んだのは、誰の為だと思ってごじゃるか?
何か言う事あるでごじゃろう!」
「ああ、そうだった、そうだった…愛ちゃん、綺麗だよ。とっても綺麗だ。」
「ありがとう、爺じ。」
私が、朱理の言う大事な一言を漸く思い出して言い、愛が嬉しそうな笑顔を満面に浮かべるのを見て…
「うんうん、これで良いのじゃ、これで良いのじゃ。」
朱理が胸張って腕組みして言うと…
「そう言う、アケちゃんも、今日は一段と美しゅうござるぞ。」
進次郎が、後ろから顔を出して言った。
「まあ!進次郎様!」
朱理は、思わず声を上げると、顔を真っ赤にした。
「こらこら、私に様付けはなしだと、前からの約束ではござらぬか。私の事はシンさんと呼んでくれってね。
でも、本当に綺麗でござるよ。」
「そうでしょう、私もさっき見て、凄く驚いたのよ。」
菜穂が横から口を出して言うと、朱理はますます顔を赤くした。
「だってねえ…アケ姉ちゃん、私の着付けと同じくらい、自分がめかしこむのにも、時間かけていたものね。」
愛が、また片目瞬きをして言うと…
「ほほう…それはまた、一体、誰の為でござろう。」
進次郎は、広げた手で鼻の下を擦りながら、いかにも疑問に思っているような物言いで言った。しかし、目線は既に、和幸の方を見つめてる。
「決まってるじゃーないの。人のおめかしにはやたら関心持つ癖に、自分の身なりを殆ど気にしないアケちゃんがめかしこむ理由と言ったら…」
「そそ、めかしこむ理由といったら…」
雪絵と竜也は、一瞬、二人してまんじりと和幸の方を見つめた後…
「ねえ。」
「ねえ。」
と、二人は顔を合わせて、同時に頷きあった。
「ウォッホン!ウォッホン!」
和幸が、むせこむような咳払いをすると…
「だのに、お父さんったら、冷たいのよ!アケ姉ちゃんのおめかしに、全然気づいてあげないで、愛ちゃんの事ばっかり褒めてさ!」
菜穂は、また、クドクドと和幸に説教を始めた。
「お父さんが、トモ姉ちゃんと拾里に行く時は、物凄く強がっていたけどね、いざ、居なくなってから、毎日泣いてたんだからね。その拾里でも、いなくなっちゃったって聞いてからは、もう…心配で何も食べられなくなるし、寝る事も出来なくなるし…みんな、お父さんと同じくらい、アケ姉ちゃんの事を心配したんだからね。だのに…アケ姉ちゃんのおめかしに気づかないどころか、アケ姉ちゃんの方を見ようともしないで。お父さんが、こんなに女の子の気持ち知らない人だと、思わなかったわ。それに…」
あの淑やかで、大人しかった筈の菜穂が、何がどう彼女を変えたものか、開いた口が延々と止まらないのを見て、皆、呆気に取られる中…
「おい、名無し…じゃなくて、爺じだったな。」
純一郎が、私の袖を引いてきた。
「ジュン、その呼び方はもう…」
私が苦笑いして何か言いかけると、純一郎は、ニィッと笑いながら、軽く顎をしゃくって見せた。
私はまた、忘れかけていた胸の疼きを思い出した。
愛の赤子は、揺かごの中で、スヤスヤ気持ち良さそうに眠っていた。
私が一月に渡って、二人参籠所にこもり、愛に身篭らせた子…
やがて…
和邇雨一族の思惑の道具として里子に出される子…
里子に出すのはこの私だ…
どんな顔して抱けると言うのだ…
すると…
「爺じ、爺じ…」
それまで、揺かごの赤子を嬉しそうに見つめていた希美が、不意に私の方を向き…
「赤ちゃん、赤ちゃん。」
そう口走りながら、手招きしてきた。
私が憑かれたように、側に行くと…
「爺じ、赤ちゃん、かーいーねー。」
希美は、私の顔を見上げ、ニコニコ笑って言った。
「そうだね、可愛いね。」
私もまた、希美の頬を撫でながら、笑いかけて言うと、何故か、ごく自然に、赤子を抱き上げていた。
そして…
赤子は、急に目を覚まし、ぱっちり開けた目で私を見たかと思うと、ケラケラ笑いだした。
「よしよし、良い子だ良い子だ、よしよし…」
ごく自然に口走りながら、改めて赤子を見つめた時…
私の胸から、憂いと無力感…心の疼きは消え、代わりに、暖かい赤子の温もりと、愛しい思いがいっぱいに広がっていた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます