(描いてみました)
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」
(内容)
幼い時から里親に虐待を受けていたウィルは、高校卒業後、大学の構内の清掃の仕事をし、仕事の他は夜の街で仲間と酒を飲む生活をしていた。
ある日、ランボー教授が数学の難問を廊下の黒板に掲示し、翌日ウィルはその解答を黒板の隅に書き込んだ。その難問は構内のどの優等生でも解けないレベルのものであった。
ランボー教授は、その解答を書きこんだ人物を探すがなかなか見つからない。
しかし、後日偶然廊下で(別の問題の)解答を書き込んでいるウィルを目にする。
この後、ランボー教授はウィルの才能に磨きをかけ、また人間的にも成長させようとあらゆる支援の手を差し延べていく。
エヴァリスト・ガロアとの比較(※片やフィクションですが)
ウィルもエヴァリスト・ガロア(仏1811~1832)も、数学の才能を埋もれさせてしまっていた点では共通しています。
しかし両者を比較してその違いは、
ウィルは幼少の頃から不幸な家庭環境で育ったのに対して、ガロアは比較的裕福な環境で育ったことです。
人生の原点が異なっているので、その後、二人の人生のベクトルも大きく異なっていきます。
ウィルは理想の未来を思い描くことなく半ば人生なんてどうでもいいという気持ちで生きていきますが、ガロアは名門校に入って数学に没頭したいけどそれが叶わず挫折の人生を歩んでいきます。
しかし両者に救いの手が差し延べられます。
ウィルにはランボー教授や心理学の講師のショーンやハーバード大学の女学生のスカイラー達。
ガロアには、彼の天才性を見抜いた数学教師リシャールや、彼の才能に着目した科学アカデミー会員のポアソン。
ウィルは彼らに救われ人生を希望有るものへと軌道修正していきますが、リシャールやポアソンは悲運の淵へ向かうガロアを軌道修正して、立派な数学者として大成させるには力が及びませんでした。
ポアソンの場合、ガロアの論文が斬新すぎて理解できなく(当時の数学者で理解できたものは皆無でした)、彼の理論の解読は彼の死後の40年後に数学者ジョルダンによってようやく成し遂げられます。
そしてガロアはステファニーに恋をして、それが彼女の婚約者の怒りに触れて、決闘をする羽目になり、そして相手の銃弾が腸を貫通して命を落とします。
ガロアの方はいわゆる「早すぎた天才」であり時代と反りが合わなかった。
数学の才能を開花させてからは時代に、まるでつまはじきにでもされるかのように不運と挫折に見舞われてしまったように見えます。
作中のウィルの数学の才能は問題を解く際の天才的閃きにあるように見えますが、それがガロアのように時代にそぐわない斬新的な理論を作り出す才能であった場合、映画のストーリーももっと苦悩に満ちたものとなっていったのではと勝手ながら想像してしまいました。
【お薦めの一冊】
面白すぎる天才科学者たち 世界を変えた偉人たちの生き様(講談社) 内田麻理香著
東大工学部卒の内田麻理香氏により、ニュートンやダーヴインやアインシュタインや南方熊楠などの天才偉人達の生涯について女性視点で書かれています。
厚みのある知的な話を、女性ならではの感情的でしかも柔らかい表現でよく299ページにまとめ上げていることがまず驚きです。
前書きでは「どうかお気軽な気持ちで読んでください」とあるように、あまり気構えなくてもさくさく読めるよう文章全体に配慮が行き届いるように感じました。
何より登場する天才偉人(奇人もいますが)への筆者の愛情が読み手の方にも伝わってきます。
これは是非ともお勧めの一冊です。
孤高の天才達の意外な人間臭さが感じ取れます。