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ー 小話1 ー
斎元の学習
「斎元」は、はじめて「そら」と二人で出かけた時から、
”学ぶ事”が多かった。
@1・・・「そら」は待ち合わせの時間と場所の確認を何度も繰り返し、
それにずっと付き合った後でないと、無事な当日を迎える事ができない、という事。
「そら」からの「確認メール・確認電話」は10回20回と執拗に続く。
そのやり取りを1回でも怠ると、「そら」は時間や場所を間違えてしまうのだ。
他に「そら」は、どこも「行きたい所」がない、という事。
「そら」は「斎元と一緒」であればそれだけでいいのだ。
だから自然と行き先を決めるのは「斎元」の役回りとなる。
@2・・・「そら」の”バッテンナンバー”のスクーターは、「斎元」には大問題だった。
「盗難車」は、”よろしくない”。
「初・デート」の折にも「そら」は平気で”それ”でやって来たが、
「”それ”はいけない」という会話から「初・デート」は始まった。
「斎元」は「自転車」を買ってやる事を約束したが、きわめて低所得の「斎元」にとって、
「一万円を超える買い物」は、かなりな”奮闘”が必要だった。
電気・ガス・水道・電話料金を一カ月支払わずにおく事で、
その資金はどうにかなり、その話しは現実となった。
@3・・・「そら」は”手をつなぐ”事が大好きだ、という事。
はじめは「人目」が気になる「斎元」だったが、それははじめだけだった。
どこに行く時も、スッと「斎元」の左側。
「斎元」はそんな「そら」が可愛くてならなかった。
「斎元」は時折強く抱きしめたくなったが、それはさすがにできなかった。
しかし、そうして欲しい「そら」の気持ちも「斎元」は分かっていた。
「人のいない所で・・」と思っていたが、
そうした状況になっても、なぜかその「勇気」が湧かなかった。
@4・・・「そら」は一つの会話が「尻切れトンボ」に終わっても、
何んら気にしない、という事だ。 「あの話しは何んやたっけ?」などとは言わない。
また、「えびすメンバー」の誰がどうした、という話しが多かったが、
全く同じ話しを何度繰り返しても、「そら」は違和感を感じない。
だから「斎元」も「あ、またその話し・・」と思っても気にしない事にした。
「そら」が嬉しそうに話しているのを見ると、「斎元」も嬉しくなるからだ。
@5・・・「そら」に何かを説明する時は、あまり長い例えや言い回しをすると、
わからなくなってしまう、という事。
「そら」は、わからなくなると、黙ってしまうのだ。
「話しの内容」は理解できていなくても、
「「今の話し」を自分が理解できなかった」、という事は理解できるからだ。
だから、「斎元」の親友の田川も一緒の時など、
仕事の話しで盛り上がったりするが、「斎元」は必ずその内容を、
「そら」が分かるような言葉に並べかえて、もう一度話すのだ。
この”学習”は「斎元」にとって、楽しくてしかたがなかった。
「そら」の事が分かれば分かる程に、「斎元」は自分の生命の奥底に、
”勢い”が生まれるのを感じるのだ。
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