与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語2・「出会い」

2009-10-21 06:32:37 | そらの物語


「であい」


 


最後の一瞬にのみ 美しく明滅する


青白い閃光のように


あまりに短命で 率直な死を遂げる


「そら」という少年の


ちいさな物語の報告である



私達は  「与一」から生まれ/成長を続ける生き物である


体長は平均的に子猫ほどで 一番大柄な「よも清さん」でも/たいした事ではない


そんな私達が 大阪・京阪沿線の/特に 寝屋川市から京橋にかけての


各所のポイントで/様々な活動を開始してすぐに


「そら」と出会った


 


時は2008年の年明け早々 未だ寒さの厳しい2月の夜


場所はJR・京橋と 京阪・京橋の間の/キャバ嬢がきらめきを増し


行きかう人々の欲望が燃え上がる 歓楽街の中ほどの


そこだけ うす暗くなった「JR高架下」


この出会いは/私達の仲間の一人 「Hiたかお(はいたかお)」の


無茶な行動に始まる



「Hiたかお」は 私達の中でも/選りすぐりのスピードを備えた生き物であったが


その性急で挑戦的な性格ゆえに/時として「やりすぎる・行き過ぎる」傾向があった


「Hiたかお」は一言でいうと「お調子もの」であったが/スピードと実践力においては


群を抜いていた


いつも彼は 早く行動に移りたいあまり/あわて過ぎの早口で


熱く 熱く まくし立て/語り終わる前に もう動いてしまうので


まわりの私達を いつもバタバタさせるのである


この時も「Hiたかお」は/俄然 張り切っていた


京橋での行動は これが初日でもあり/私達の仲間は数名に別れ


京橋・歓楽街の 危険箇所のレクチャーを行っていたが/「Hiたかお」は


最後まで聞き終わる前に


「りょりょりょりょりょ了解しましたぁ!!!!」と 言うなり飛び出し


猛然と走り出したのだが/向かった先が 「JR高架下」


私達にとって もっとも危険なポイントだった


そこには「毒ちわわ」の存在が 確認されていたから


「毒ちわわ」は 通常の「ちわわ」が いつからか野犬と化し


何らかの原因により 恐ろしい「毒」をもった「毒ちわわ」となったのである


そして「毒ちわわ」は/私達を 喰いちぎるのである


この恐ろしい野犬に/またたくうちに捕らえられた「Hiたかお」は


「あり得ねえ! あり得ねえ!!」と言いながら 必死でもがいたが


もがく程に「毒ちわわ」「毒」はまわり


もはや 逃れる事は叶わない



絶体絶命の「Hiたかお」の 恐怖にうるんだ視線の先に


夜の繁華街を切り裂くような パトカーの赤い光/サイレンの音/そして罵声


「クソ野郎っ!!!!!」


キャバ嬢たちの悲鳴についで/大型バイクとスクーターの2台が 荒々しい勢いで


「Hiたかお」が捕まる高架下・入り口の/「一方通行」の標識に追突し


それをなぎ倒し/突然の事で呆然とする「毒ちわわ」と「Hiたかお」の目の前に


こなごなに砕け散るバイクの部品ともども転がり込んで来たのだ


それが「そら」達だ


熱く乱暴な気配に満ちた/バイクごと転がり込んできた二人に


「毒ちわわ」はすぐさま「ゥゥゥゥゥゥ・・・・」という/「犬」としてはもっともな唸り声をたてた


「Hiたかお」は ただただ身の危険の回避を願う様に/地面に伏せるのみだ


「そら」は 横倒しのスクーターを起こしながら


もう一人 うつ伏せにひっくり返った大型バイクの男に


「おい!ネコっ!!ネコ! 行こう!!」と押し殺した声で呼びかけた


うつ伏せの 「ネコ」と呼ばれた大柄な男は 「おお」と小さく応え


身体の随所に痛みのあきらかな/重たい動きで立ち上がった


お互いの安否を気遣う間もなく/すぐにも「そら」達を追って高架下に迫る


怒りの気配のパトライトと/白バイの無線のやり取りのざわめき


「ネコ、はしれる?」 「おお・・とりあえず、行こ!!」


唐突すぎるこの二人の動向を ただ見つめていた「Hiたかお」が/「ギョっ」とした


「そら」が こちらを見ている


「おいで・・・」  逃走の体勢にスクーターを立て直しながら


はっきりと「Hiたかお」を見つめて「そら」は言った/「おいでって!!」


「Hiたかお」は事態が読めぬまま 「お、おまえ、おれが見えるのか?」と聞いたが


「そら」と「ネコ」の現在地を見つけたパトカーと白バイが/高架下のもうすぐそこに


次々と急停車するスリップ音にかき消された


「そら」は2~3回の「からふかし」で/あっさり「毒ちわわ」を追い払い


「Hiたかお」に 控えめな笑顔で「だいじょうぶ!」というなり


転倒で泥まみれになった細い腕で抱き取り/自分の上着の中に放り込んだ


「そら」の熱く汗ばんだ上着の中で「Hiたかお」は/なぜか安堵感があった


「ネコ」が「そら」に「いったん 散ろ!!」と叫ぶ声と


「そやな!」と応じる「そら」


次いで 故障まみれのマフラー音とともに/二人は左右に分かれ


夜の京橋の中に消えた


 


これが 「そら」と私達の出会いとなった



 


 


 


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2 コメント

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惚れてまうやろー (ココ)
2009-10-22 09:09:08
ちょ、そら、男前すぎ。

「来い」じゃなくて「おいで」。
この言葉のチョイスがすごく好きです

そらくんにとって不可思議なものってないんじゃないかと思いました。
たとえ他人には見えない生き物だったとしても、それはそういうものなんだと当たり前に感じる感性を持っている気がします。

それは透明な、美しい、でも脆いようなもの。
そしてタチが悪いんですよね?(笑)

この短いやり取りだけで「そら」の印象を決定付けてしまう井川さんの力量には圧倒されるばかりです。
淡々とした状況説明もとても分かりやすく、目の前に背景が見えるよう。
「Hiたかお」の「あり得ねぇ!あり得ねぇ!!」に思わず茶吹きました(笑)
もう、スゴイ!の一言です。

また興奮しすぎて長文になってしまいました
すみません~^^;
でもこれからの続きを本当に楽しみにしています

またそらくんに会いに来ます
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ココさんへ (お返事)
2009-10-23 03:24:02
わあ!!出た!ココさんのロング・ローングコメント!!久しぶりな気がします。「書いた側が、ついついうれしくなってしまうコメント
ありがとうございます

ーー透明で美しく脆いような--
「おいで」だけで、ここまで読み取ってしまうあなたは、何者(笑)????
この「であい」の次の話「履歴」のトコで、「そら」くんの人物像を少し細かいめに掘り下げてみましたが、その内容を見透かされているような・・・怖ぇ

これから話は、丁寧に、ゆっくりと進めようと思っているのですが、もうちょっと進むと「斎元」くんが登場して、やや「BL(と言えるかどうか??)っぽい恋愛ばなし」的な展開になります。が、この話、全体を通じて「恋愛」を描き出そうというものではなく、もっと根本的なことを描いてみようと思っているんです。そのキーワードというか、手掛かりというか、それ的な事が、ココさんの言う「脆さ、透明さ、美しさ」になると思います。
「タチは」ずっと悪いままで(笑)。

ーー「Hiたかお」のありえねぇ(笑)ーー
この「おまぬけキャラ(笑)」が、なんとも可愛くて可愛くて(笑)
「Hiたかお」くんはこれから先も、「そら」くんとペアーなので、何卒よろしくお願いします(笑)!

ココさんコメント、こちらが興奮してしまい、負けじと長文になってしまいました

しばらく、「これ」ばっかに集中になってしまうかもしれませんけど、よろしくです!!

コメありがとうございました


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