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「一の妄の生中継・3」
「そら」には、この疾走には重要な意味がある、
としか思えないのだった。
久しく放置されていた”盗難スクーター”に飛び乗った勢いのままに、
集合場所のJR京橋駅・「吉野家横の路地」へ向けて、
”サエモト”救助の想いの塊となっての疾走。
片手に握りしめた”鉄パイプ”は、今すぐ暴漢達が襲いかかって来ても、
”応戦OK”の構えで、道行く人々をギョッとさせる程に、気合い十分だ。
「サソリ」が差し向けるであろう、暴漢達と何も知らない「斎元」が、
待ち合わせ場所で落ち合い、「斎元」が”そらの携帯”を渡す、
暴漢達が「斎元」を捕える、うろたえる「斎元」、
「斎元」の顔が苦痛にゆがむ、そう思い浮かべるだけで、
「そら」の想いに応えるべく、懸命にうなり上げる盗難スクーターの、
悲鳴の様なマフラー音さえ、苛立たしい。
京橋駅前まで来ると、未だ立て籠ったままの「サソリ」を発信源とする、
大きな騒ぎで、大通りまではみ出した野次馬と警察による通行封鎖の為、
前へ進めない。
「こいつら・・・じゃま!!」。
上空にはどこかの放送局のものか、1台のヘリが滑空を始め、
物々しい空気に拍車がかかる。人、人、人、人だ。
そしてこの中に、”そらの携帯”を返そうと、
田川とともに イソイソとやって来た「斎元」もいたのだった。
「はたらき協議会」が開催されて一日と経たぬうちに
このように緊迫した 状況判断に迫られる「協議会」となるとは
私達「生き物」の誰ひとりとして 想像しなかったのだ
現在 「協議会・中央」のPCには
「Hiたかお」の視点から映し出された
「飛び出してしまった「そら」を追うヘビ・ネコ」の映像と
途切れがちの乱れた映像で
「犯行現場に突入してしまった一の妄」の映像が
交互に映し出され そのどちらもが
”急を要している”事が明らかだ
そして 場合によっては その生中継に登場する
「そら・ネコ・ヘビ・斎元さん・斎元さんの友人の方」に対し
一斉に”見えない設定”を施す必要があるのだ
「見えなくする」事により 安全を確保する為だ
そうした 「人間」に対しての”見えない設定”は
私達としては 未だかつてない事だ
そしてもう一つ
私達がこうしている間に 19チャンネル「TV大阪」で
放映された”サソリの犯行声明”の中で
「月の者」という言葉が出てきた事を
私達は 見逃していない
これは 大変 不可解な発言であり
事態を混乱させるばかりなのである
なぜ彼が そうした言葉を知っているのだろうか?
「大調査」が進む中 ある程度の”予測不能”な
出来事の到来は おおむね覚悟はしていた
しかし 「サソリ」の行動だけは あまりに想定外だ
「そら」の携帯を持った「斎元」と田川は、京橋駅前の異常な人だかりに、まずは驚いた。「あかんで!たがっち、これ直進は無理や。向こうの、ダイエーの方まで大回りせんとJR側まで行かれへんわ!」。と「斎元」。 「しゃあないな。だいたい、これ、何んの騒ぎなん?」。と「斎元」と同じく急ぎ足の田川。 ”騒ぎ”自体眼中にない「斎元」は「知らん。まあ、有名人でも来てるんとちゃうか(笑)あっ!あそこ、抜けれるで」。と、人ごみが幾分か和らぐ通りを指さして。 「あほ、有名人が来てて、なんでパトカーとか救急車とかあっちこっち いてんねんな(笑)こらあ、事件やでぇ!!なあ、よしお、事件でっせぇ~(笑)」。 「斎元」が指さした方向に向けて「斎元」と歩調を合わせながらおどける田川。 「あはは!!それ、誰の真似(笑)?取りあえず行こ行こ!!」。
上手く人だかりをかわした二人が、待ち合わせ場所の”吉野家・横の路地”に入ろうとするやいなや、二人の背後から「あんた・・・サイモトさん?やんな?」。との声。 振り向いた二人はギョッとした。そこに立つ数名の男たちには見覚えがある。 「はい、そうです。あ、どうも・・・」。
ーー あ・・この人ら、この前の・・ ーー
「斎元」も田川も、同じ事を思い出して、一瞬 不審顔を見合わせた。 鉄パイプ・クサリ・破壊音・怒鳴り声・バイク・・・・・。
「こんなにすぐに見つかるとは、思いませんでしたよ、サイモトさん。で、携帯は?・・・」。と”男たち”のうちの一人。丁寧な話し方には明らかに無理がある。 田川は警戒する視線を「斎元」へ向け、「斎元」は小さくうなずきながら「ええ、ここはよく知ってるんで・・」と答え、すぐには”携帯”を出さなかった。 「そうですか!ははは、じゃあ、携帯をいただくついでに・・」 ”男たち”のうちの一人が、そう言葉をつぐタイミングで、他の数名がポケットから、ジャラジャラという金属音をわざわざたてて、暴漢達お決まりの「鉄パイプ・クサリ」を取り出した。 「サイモトさん、あんたにもちょっとついてきてもらいたいんですけどね・・そっちのお友達も一緒に!」。
ーー ホラ!!来た!! ーー
あまりにも”暴漢丸出し”の、男たちに「あ・・・携帯は・・い、いや僕は・・・」。と、うろたえる「斎元」を無視して田川。「よしおっ!!あかん!!逃げよ!!ヤバい!!」。
「いやいやいやいや、ヤバくない、ヤバくない(笑)、大丈夫ですよ!!」。 と、とっさに逃げる態勢の二人をサッと取り囲む男たちは、もはや”忘れものの携帯を、本人に代わって預かりに来た者”を演じる気は まるで無しだ。 暴漢達が、不敵な笑顔のまま「逃げる必要は・・・」と一斉に二人に飛び掛かろうというタイミングで、暴漢達の背後から不意に、「わあああああ!!!」という大声と共に、誰も乗っていないスクーターが暴漢たちに荒々しく追突し、それと同時に鉄パイプを振り上げた「そら」が飛び掛かって来たのだった。完全に不意をついての「そら」の激しい登場に、暴漢たちも「斎元」たちもいったん唖然とする。 一瞬静まった乱闘の気配の中心で仁王立ちの「そら」が再度 威嚇の大声。「わああああああ!!!」。
「ビックリした~!!!お・・・おい、このガキって・・・」。と暴漢の一人。 「ああっ!!こいつ・・・サソリ様の言ってた・・・”6号”??」。 「あ!そやそや!!あほや!!はははは!!自分から出て来おった!!」。 「そ・・・そら・・くん」と腰ぬけの態勢の「斎元」。 「おまえ、「えびす」の6号やな?」。と暴漢の一人。 「探しとったでぇ~ホンマに・・」。暴漢の一人が、さかさまにひっくりかえった「そら」の盗難スクーターを蹴り倒し、「6号・捕獲」というこれ以上ない”てがら”の前に、抑えきれない”したり顔”でにじりよる。「あほか!おまえらがおれをさがすんやなくて、おれがおまえらをさがしてここに来たんや!!わからん大人かおまえら!!!」と「そら」。
この瞬間である。「ネコ・ヘビ」と共に”現場”に到着した「Hiたかお」が、鉄パイプを振りかざした「そら」を”目視”したのは。 全てが同時だった。「そら」の鉄パイプに応戦しかかる暴漢。 とっさに「わっ!」と声にならぬ声でうずくまる「斎元」と田川。 「6号!!ちょっと待て!!」との「ネコ」の叫び。 そして、この唐突な展開を「協議会」のPCで見ていた「FA637」が、反射的に”見えない設定”をかけたのは。
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見えちゃ駄目なの?
見えちゃ駄目だよね…
空は特別…見えるの?
「月の者」
サソリの赤い胸は
アンタレス
「月の者」
血を流す…
心臓…
生まれる…
命…
想像だけが膨らんでいく
考えても見ませんでした
サソリ座の”★”ですね!!
「サソリ」という命名についてのgaoちゃん流解釈
今、ちょっと見てみたら、「赤色巨星」って書いてありました。
赤くて巨大な星
偶然!!!かな??
極悪キャラの「サソリ」の赤い顔。
gaoちゃんのコメントから、こちらのイメージもいろんな方向に膨らみます
命名とその言葉の指し示す「意味合い」については、何も考えずに付けています(笑)。
もともと「サソリ」くんは「えびすメンバー」だったので、「ネコ」とか「ヘビ」と来ればじゃあ次は「サソリ」かな(笑)ってな感じで。
でも、そこに”アンタレス”って発想を意味付けると、とっても深まりが出てきますね
おもしろい!!
=見えない設定=
「そら」くんだけには通用しない”見えない設定”です。
「生き物たち」が人々を驚かさない様に、
自分たちを見えない様にする事=見えない設定、なのですが、「そら」くんにだけは見えてしまう・・・ってのが「見えない設定云々~」の始まりでした
いろいろと想像を膨らませて、この物語と遊んでやって下さいませ
久しぶりに心にゆとりを持てる時間がとれたので、物語をゆっくりと読ませて
いただきました♪
それにしても今回の冒頭の一連の文章には、そのスピード感に乗せてそらくんの
焦燥が絶妙な言葉で表現されていて、のっけからとても素晴らしいなぁ~と感じ
ました。
久しく放置されていた盗難スクーターの、悲鳴の様なマフラー音さえ、苛立たしい。
そう、「苛立たしい」のですよね、この時のそらくんにとっては。
また、「久しく放置されていた」と言うこの度の疾走劇にはあまり関係のなさそうな
修飾にも、なんだか深い思いが込められているようで、この部分だけで心が熱く
なってしまいました。
そして冒頭のそれとは全く対称的に、最後の一小節では今回のストーリーで
語られてきた「混乱の中での緊迫した動き」が瞬間的に静止画に切り変わる
ような「一瞬の描写」ですよね。 なんだか映画の撮影用カメラから見た映像を
意識したような描き方だなぁ~と感じた次第です。
ところでここで一つお知らせが、
次週より わたくし"ともゆき”は 再び守口の現場 そう、「そらの物語」ゆかりの地
あの大日の交差点近くの現場での作業が始まります。 ・・・と書けば、もう私の
意図は御理解いただけますよね? 井川さん またご連絡下さいませ。
こちらは更に勢いを頂けたような
ともゆきさんのおっしゃる「冒頭部分」は、3~4回書きなおしている部分なので、救われた気分です
「そらくんの疾走の部分」とその後の「生き物たち」の「はたらき協議会が開催されて、一日も経たぬ・・・」の部分も、最初は逆になってました。
下記はちょっと面白いかもしれないので、もとの”携帯版の原稿”です
ーーー「そら」には、この疾走には
意味がるとしか思えないのだった。
「間にあってくれ!・・・」そう口をついて出る程に。
久しく放置されていた”盗難スクーター”に飛び乗った後、
「Hiたかお」が言った通り、
「サソリ」が差し向けるであろう暴漢と「斎元」が待ち合わせる場所へ向けて、
小型スクーターでは容量オーバーの・・・・・・ーーー
と、こんな感じで、ちょっと僕的には「グダグダ」した感じだったんです
ともゆきさんの言う様に、「焦燥感」を表現するのに、”状況の説明”をだだだ~っと書いてもなかなか納得のいく感じにはならないですよね
本当に「ともゆき節」に救われ感じです。
=なんだた映画の撮影用カメラから見た映像=
そうそう!!!つまり、「シナリオの書き方」なんですよ
所々、描き方を「小説の書き方」ではなくて、そういったちょっと中途半端なシナリオ風にする事で、緊張感や緊迫感、スピード感が出せないものかな・・・というチャレンジでした
話しそのものが解りにくくなってしまう危険もありますね
でも、なんたって”個人のblog”ですから(笑)
ただ、”いいもの”にできれば、どんな表現の仕方でも僕的に”OK!!”なんです
=お知らせについて=
ぐひひひひひひ(笑)・・・・
ではでは、詳細はまた連絡しますね
さりげな~く、なのにシッカリ重みのあるコメント、本当にありがとうございました~!!!!