与一から出て来た生き物の記録

奇妙な生き物。早朝の自宅ガレージ奥の「与一」の中から、様々な働きをする者たちが生まれています。その有様と効能の記録です。

そらの物語10・「なっちゃん」

2010-01-10 13:44:55 | そらの物語


「なっちゃん」


 


「毒ちわわ」から逃れる事ができた「Hiたかお」は、少し毒の廻った朦朧とした意識から目覚めたのは、「そら」の服の中の、ピンと張ってやわらかな素肌に触れる あたたかさの中だった。    そして「そら」は「なないろ」へ向けて未だ逃走中だったが、白バイに捕獲される危険から逃れた事を確認すると、それがどこかはわからぬ夜の自動販売機の陰に、あちこち痛んだスクーターを止め、販売機で「なっちゃん」を買ったあと、「かえるちゃんのがまぐち財布」を覗いてこう言った。


「うわっ!!かねないで!!!」



「そら」の服の中」からもぞもぞと出てきた「Hiたかお」に「おまえの分あれへんわ!これはんぶんこにしよか!!」と続けた。  真冬の2月、身を切る夜風に身震いしながら、「そら」の横に腰をおろした「Hiたかお」は、それには答えずに「助けてくれて、ありがとう!」と、まずは礼を言った。「いいよ」と鼻水をすすりながら「そら」。


「おまえって何?むし?なにの生きもの?」と、冷たい「なっちゃん」をぐいぐい飲みながら「そら」は「Hiたかお」に聞いてみた。 「おれは ”良い事” をする生き物やで。」  「えっ??どんないい事やってんの??」 と「そら」は興味シンシンで、寒さで真っ赤になった鼻をこすり、その手をズボンで ”シュッ”。  「まだや!これからや!!今はその為の ”大調査” を始めたとこやな!」   「ふぅん・・・だいちゅうさんやってるんか・・・・それは大変やなぁ・・・でも、おまえ悪そうやで!だいたい顔が悪そうや!と少し笑うと、「まあ、顔は生まれつきやから しゃあないわ」と、「そら」から「なっちゃん」を両手で受け取り、ぐびぐび飲み出す「Hiたかお」。  「良い事するって、なんかウソっぽいで!!いい事とか言うてて、おれをだましたりするんやろ??かねないで!」。  「なっちゃん」のペットボトルは両手で抱えても、「Hiたかお」には重い。それを下から支えて助けてやりながら、「そら」が続けた。 「おれは あたまがちょっと弱いから、だましたらあかんねんで!」 「あほ!!だます とかじゃなくて、良い事するって言うてるやないか!ちゃんと聞いとけよ! ”なっちゃん”ありがと!これ、おれには多すぎやな!しかも、めっちゃ冷たい!」と「なっちゃん」を「そら」に返しながら「Hiたかお」。  「よっしゃ、ほんなら あとはおれがもらうな!!」と、残りの「なっちゃん」をかたずけた。


真冬の真夜中、冷たい「なっちゃん」は身体の芯まで凍りつかせる様で、二人はガタガタ震えながら話に夢中になっていった。「そら」のペットボトルを持つ真っ赤になった指先は、さっきの鼻水が光っている。



 


 


「なないろ」の早朝は、「カイ」の一人舞台で始まった。


と言うのも、いつも「カイ」の後をつけて廻る「そら」が、昨夜からまだ帰ってきていなかったから。 毎朝、ちょっとした朝食のレシピを「そら」に解説しながら用意するのが「カイ」は気に入っていたので、今朝はおもしろみがない。 「そら」は解説されたレシピを一つとして記憶する事はなかったが、ひたすら ”納得” の素振りを示すので、聞き手としては優秀だった。「そら」が理解していなくても。



 簡単メニュー、納豆・ごはん・たまご・味噌汁・あったかいお茶。 これだと一応の6人分といっても、さほど手間はいらない。 「なないろ」の周辺は使っていないプレハブや廃材が放置されたちょっとした広場があり、そこに皆の作業服が中心の衣類が「数珠つながり」に干してあり、そこに朝日が差し込む光景はのどかで美しい。 「城東区」という都会の片隅ならではの風情がある、と「カイ」は思っている。 そして、真冬の、痛い程冷え切った空気に、あたたかな朝日は、コーヒーの香りを上質にしてくれる。 この時間が大好きな「カイ」は、熱いコーヒーから立ち上る湯気を見ながら、「あいつ、まだ帰らんな・・・」とつぶやいた。 電話の電源は切っとるし・・・・・・・・。 


 「カイ」がカップに残った最後のコーヒーを飲み干す頃、「カイ」の携帯がなった。 「あ!6号!!」。  あわてて携帯を取ると「おはよっス!!!!!」と元気な「6号」。    「おまえ!何時に帰って来るんや??ネコはもう帰ってきてるで!!」 「帰り方がわからんねん!!、どこや?ここ??カイさん、迎えに来て!!」 「いや、いいけど 今どこやぁ??それが分からんと、迎えにも行かれへんで!!!」 「それが・・・んんんん・・ひなかなが・・・漢字で・・・・あれ、読めるかな・・・・・んん???」 と口ごもる「そら」の電話口の向こうから、「おおおおおおおおおおお、おれ、分かるって!!!!分かる分かる!!!」とあわてて横入りしようとする、誰かの声。 「おい!6号!!誰かと一緒なんか?」と、不審げに「カイ」。 「カイさん、おれむずかしいことばわからんから、ちょっと電話、かわるで!!と、何の紹介も説明もなしに「Hiたかお」に電話を移す「そら」。 「あ!!どうも!ははははじめまして!!ボク、ハイ たかおといいます!!!たかお、って呼んでください!!お仲間の方ですよね!!いやあぁ!よかった!ハッピーです!!!ラッキーです!!あなたは素晴らしい!!!!え??迎えに来て下さる??!!信じられない!!ボクたちは本当に、あなたに出会えてよかった!!これから出会えて、よかった!!!いやいや!ほんとほんと!!まさに感無量!!! で ですね、ボクたちの現在地はですね・・・・・・」  「何や???こいつ????」 不審げな「カイ」は勝手に説明をはじめる「Hiたかお」のハイテンションなトークを聞くしかなかったが、聞き終えた時は「そら」が説明するよりも明確に、二人の現在地が了解できた。 「カイ」は不信感はそのままに、”族仕様”の派手派手でも、くたびれかけの愛車にキーを挿した。



「カイ」が出発してしばらくして起きてきた「1号」は、「6号」のスクーターが帰っていないままなのと、「カイ」の愛車がない事で、万事を了解できた。 放っといたらいいのに・・・・・・・・。  食卓にはパックの納豆、たまご、うつ伏せの茶碗、味噌汁の器、おはしが、きれいに並べられていた。   簡単メニューの朝食を終えた「1号」が、タバコをふかしていると、「ネコ」と「ヘビ」が、どちらが味噌汁に火を入れるかモメながら起きてきて「あれ?6号、まだ帰ってないの???」と「1号」に聞いた。  「たぶん、カイさんが ”お迎え” に行ってるな」。「そっか・・放っといてもええのに!!」


そんな会話の最中に「カイ号」が「6号」と合わせて、「珍客」も連れて帰ってきた。


 


 


 


  


 


  


 


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2 コメント

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コメント長いのは癖なのです (やまっつぁん)
2010-01-12 22:12:09
 どうも、初めてコメントさせてもらいます、やまっつぁんです。
 先日はトラコミュ参加に私のブログへのコメントありがとうございました!
 本当に感謝しています!

 さて、そしてここの物語ですが、かなり新鮮ですね!
 私は型にはまった小説しか見たことはないので、ここを見たときはとても面白いと思いました!

 個性的なイラスト(もちろんいい意味でですよ!)にこれまた個性的なキャラクターたち。
 どれも魅力的です。

 特にHi たかお!
 名前を見ただけで思わず笑みがこぼれます。
 
 いやぁ、続きが気になりますよ!
 Hi たかお(←気に入ってます)どうなるんですか!
 いやいや、Hi たかおじゃなく、Hi たかおを見た1号達のリアクションが気になります。
 
 というわけで、続きを楽しみにしています!
 私はこういった文を書くとき緊張してしまうので言いたいことがうまく表せていないのですが、作品とても面白いです!
 これからもがんばってくださいね!
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やまっつぁん殿!(お返事) (井川)
2010-01-13 02:40:55
やまっつぁんさん、ようこそ
初のコメント、本当にありがとうございます!!!!
コミュの方では、お世話になっています というか、今後ともよろしくお願いいたします!!
やまっぁんさんの新しくお若い感性に、何かしら響くものがあったのであれば、こんなうれしい事はありません!!
「Hiたかお」もやまっつぁんさんに気に入ってもらえて、ますますHiテンションです(笑)!
これから先、「そら」くんの相方として「Hi
たかお」はますます飛ばして行くでしょう(笑)
「Hiたかお」は、「お調子もの」そうで、実はいろいろ考えている、そんなキャラなんです。実にいい奴ですので、今後ともよろしくお願いします(笑)!!

ー型にはまらない!!!ー
基本的に「やりたい放題(笑)」なんです
ただ、「やりたい放題」やってるうちに、若干の問題(でもないのですが・・)も出てきたので、次の記事では一旦物語から離れて、「ひとこと」しなければいけなくなりましたので、
「1号」たちと「Hiたかお」のご対面(笑?)はその後のUPになるかと思います。おたのしみに~

「コメントに後押し」してもらって、がんばれる、とはこの事です

共々にバシバシ絡みつつ、いい作品を作っていきましょうね~

初の感想、本当にありがとうございます!!!

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