「我が家の本当の物語；４」

「新しい我が家の誕生」

 

７月１６日　午後、「珠月（すず）」が誕生した。

 

「お嫁ちゃん」は７月１５日から入院の段取りで、その前夜から大忙しだった。

おそらく、僕自身も、もろもろでいっぱいいっぱいになる事を見込んで、長男のみなみは

実家にあずけていた。その為、手術前夜はスラム街と化した我が家は僕一人だった。

その夜、不思議な、意味ありげな夢を見た。

 

数年前、「いなかのおばあちゃん」と親族から呼ばれていた、徳島に住む９０歳のおばあちゃんが、

大往生で亡くなった。このおばあちゃん、僕から言うと、僕の母の母。

９人兄弟だった母を含めた兄弟（親族）の中では、ものすごい権力のある「おばあちゃん」。

その「ことば」も、親族の間では最重要の重みのある言葉として、皆から大切に扱われていた。

老年になってからもその明晰な頭脳は衰える事はなかった。

僕は、少年の頃に何度か両親と共に泊まりに行ったが、僕たち「孫」には限りなくあたたかな

おばあちゃんだった事を覚えている。そして、母達には限りなく厳しかったようだ。

「いなかのおばあちゃん」の訃報を聞いたのは、僕がもう成人してかなりたってからだった。

最後のお別れに、僕は行かなかった。その時の現実の忙しさにかまけていた。

しかし、葬儀に参列した母が涙ながらに語ってくれた「おばあちゃんの最後の言葉」は

僕の心に突き刺さった。

「ちいさな誠一（僕）が来て、わしがこぼしたお米を、一生懸命、拾ってくれよるでよ！！」

おばあちゃんの中で僕は「ちいさな誠一」のままだった。

この時僕は、何か「世界の一部が無くなった」ような、とどめようのない「喪失感」でいっぱいになった。

この出来事がそのまま夢に出てきて、いよいよ明日となった帝王切開の手術の成功か否かと

シンクロしてしまい、ほとんど眠れなかった。

手術前後の４日間、という約束で実家に預かってもらっていた息子のみなみ。漢字は「陽己」と書く。

自分自身が太陽の様に輝いて、周りの人をも輝かせていけるような、明るく優しく

能動的で強い人に、との親の勝手な想い、いっぱいいっぱいの名前だ。

初めて「よそのおうち」での寝泊り。心配だった僕は何回もメールや電話で様子を確認したが、

いつ聞いても「この子、全然平気の屁やなあ自分の家みたいに、わあわあ盛り上がってるで！」

との事。確かに、電話口の向こうで「わああ！！」とか「きゃあああ！！」とか、

さんざんブレイクしている陽己の「雄叫び」が聞こえている。僕は姿を見せない方がいいと思い

４日間、様子を見に行く事はしなかった。　で、５日めに迎えに行くと、

様子が何かおかしい・・・・・・・

そう、僕と「目」を合わそうとしないのだ！！！！　な・なんでや？？？？？？？

「みなみ～っ！！かえるぞお～！！！」と言っても、知らんぷり・・・・・・・

まるで僕は「しらないおじさん」・・・・・・・・・　保育所に迎えに行く時は僕の顔を見るなり、

「だだだあああーっ」と走って来るのに・・・・・

そう、これは陽己の「戦い」だったのだ。２歳児の許容量オーバーの孤独と不安に打ち勝つ方法、

それは、環境の変化を「即座に受け入れて、それを楽しむ事！！」

わが子ながら、すごい・・・・・　　　　そこには、幼児にとってはかなりの割り切りも必要だったはず。

また、強くあることも。そして、「強い子モード」にせっかくなっている時に、あまえてもいい人が

現れたとしたら・・・もう対応不可！！無視するしかない。あまえんぼモードにもどると、

また親がいなくなった時につらい、かといって強い子モードを崩すわけにもいかない・・・・・

 

その夜、陽己と共に帰宅した僕はスラム街となった我が家のかたずけをする予定だったが・・・・・・・・・・・やめた。

陽己の大好きなアンパンマンの絵本づくしと、ブッブーのおもちゃで冒険ごっこ、

お風呂でさんざん水遊び、でプリンを食べて・・・・・・・・で・・・・・・・・・・プリンで遊ぶ。

いつも電池が切れたように、突然に眠りにつく陽己は、その日もそのとうりに眠り、

暑苦しいくらいに僕に「びたっ！！」と張り付いたまま　しあわせそうな寝顔で、

僕をたまらない気持ちにさせてくれた。スラム街はその激しさを増し、そのゴチャゴチャの中で

僕たちは安らかな眠りについていた。

手術前夜の「お嫁ちゃん」メール。

「誠一、あしたうまれたら　おとこかおなのこかわかるかなあ？？」

「うまれてるんやから、そら～わかるやろ！！！」

「あの‘‘ちょんぱ‘‘で見るからか？？」

「ちょんぱ？？って（ちょうおんぱ）のことやな？エコーか何か言うやつやろ？？」

「そや」

「・・・・・じゃなくて、うまれてきたら、子供は（外）に出てきてるやん！！、そやから、ふつうに

男の子か女の子か、見たらわかるで」

「それはそのとおりやな」

 

いつもの通りこんな感じのわかったような、わからんようなやり取りの後、しめは

「誠一でんわのでんげんが亡くなりそやわ」・・・・・・・・・・で当日を迎えた。

 

当日は「お嫁ちゃん」のお母さんも駆けつけて来てくださり、無事、「珠月（すず）」はこの世に生をうけた。

７月１６日、この日は僕たち家族にとって、本当に大切な日となった。

手術前夜に見た夢のせいか、この日は「世界が一人分、大きくなった日」、

「地球が一人分、その重みを増した日」という気がしてならない。

一人の人が生まれるという事は、人類全体にとって大事件であり、

一人の人が死ぬという事も、人類的大事件なんだと思う。

おおげさだろうか？？？？？

 

「お嫁ちゃん」が、出産まえにコメントを頂いた方々に御礼の手紙を書きました。

ココさん、ち～さん、ことめちゃん、ほっくんパパ、asawakuruさん、nekonoteさん、

満天さん、リリーさん、へ

ここに書かれていない方で、コジローさん、tomoyukiさん、えつをさん、他にも、「一言」の

コーナーを通じて、あたたかな激励と熱い応援を下さった方々がいてたからこそ、

僕たちの新しい家族はこの世に生を受ける事ができたと実感しています！！

本当にありがとうごさいました！！！

お一人お一人に直接電話して、「ありがとう」って言いたい（笑）！！！