誰もやっていないこと、世の中に必要とされることを見つけてそれを事業化(ビジネス化)することは悪くない。いや、むしろ奨励されるべきことだと思う。
ただ、困ったビジネスもある。
私が「マナー屋」と呼ぶビジネスもその一つである。ビジネスマナーを教えるとして、お金儲けをする人たちである。
ビジネスに限らず、社会生活を円滑に過ごすために、相手に不快感を(極力)与えないような仕草、動作、言葉遣い等をマナーという。所作がより洗練されているように見せるという茶道や礼法というものもあるようであるが、私はいずれもよく知らない。
マナーは学校では体系的に教えてくれない(と思う。少なくとも私の時代は)ため、これを教える(伝える)方法が必要であり、ビジネスであってもよい。
しかし、行き過ぎや、勝手に作られては迷惑である。
例えば、こんなことがある。
「ノック2回はトイレのノック。部屋の中にいる人に用があるときのノックは3回」。これを学生に「そうか」と聞かれたときはびっくりした。エッ、誰が決めたの。ノックは相手が見えないドア越しに相手の注意を喚起するもので、障子や襖の文化の日本にはなかった習慣である。日本では障子越し、襖越しに声をかけた。だからノックは欧米から輸入した比較的新しい習慣である。ノックは1回では注意をひかないこともありそうだ。だから2回以上。それで何が悪い。勿論3回でもかまわない。でもそれが当たり前であるというのは、マナービジネスを成功させるための口実もいいところである。
英米の子供のことば遊びに「Knock, knock」というものがある。例えば、
子供A:”Knock, knock”
子供B:”Who’s there?”
子供A:”Alison”
子供B:”Alison Who”
子供A:”Alison Wonderland” 解説:Alice in Wonderlandである。AlisonとAlice inの音が似ていることを利用している。
また、私が好きな米国のTVドラマのThe Big Bang Theoryでは、Sheldon Cooperという鼻もちならない(でも憎めない)理学博士が、人を訪ねるとき、「2回ノックし、部屋の住人の名前を呼び、これを3回繰り返す」ことをルーチンにして笑いを取っている。2回ノックしてね。
ノックの元祖の文化にトイレは2回、なんてものはない。
話題は変るが、お臍のあたりに手を置いてお辞儀をするというものがある。これが全国的にいきわたっているようであるから、やはり「マナー屋」の仕業だと思っている。この方法は、局面によっては極めて礼儀正しく見えていいのであるが、どんな局面でもとなると、違和感がある。スーパーのレジでレジが終わった後にレジ担当これをされると、こちらが決まりが悪くなる。両手を自然と脇に垂らす。あるいは自然に前に垂らしてそのまま両手を軽く重ねるでなぜ悪い。
UXテレビのスーパーJチャンネル(ニュース番組)の宣伝で、気象予報士の女性がこの形でたたずんでいる。不自然に見える。また、アナウンサー二人が、テーブル(デスク)の上に両手を置いて手を組み合わせているのも、上から目線のようで好きではない。会社で上司に話を聞くときに上司は机に手を置いても話を聞く方は机の上に手を置かないだろう。
マナーはTPOが極めて重要であり、いつでもどこでも同じ所作というのはマナーではなくなる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます