ハービィが戻って来た。右肩に六フィートほどの長さの金属製の棒杭を二本担ぎ、左肩には十六フィートほどの長さの金属製の細い鎖を二本ぶら下げ、その両端は地面を引きずっている。その姿を見て、ジェシルはイヤな顔をする。
「あはは!」ミュウミュウは笑う。「ハービィにハニーなんて呼ばれているけど、結局はアンドロイドよ! あなたじゃなくってご主人様のオーランド・ゼムの言う事を聞くのよね!」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らして、ミュウミュウを睨む。「あなたなんか、そんなハービィに興味も関心も持ってもらえないじゃない!」
「あんなポンコツアンドロイドなんかに興味や関心を持たれると思うと、ぞっとするだけだわ!」
ハービィはオーランド・ゼムの前に立った。次の指示を待っているようだ。
「では、ハービィ、ジェシルとムハンマイド君の後ろに杭を立てたまえ。それが終わったら杭に鎖を結んで、その後に二人を鎖で拘束するのだよ。完全に身動きが出来ないようにするのだよ」
「かしこまりましてございますです」
ハービィは答えると、杭と鎖を地面に置いた。
「ジェシル……」ミュウミュウはにやにやしている。「杭に鎖なんて、捕らわれた動物みたいね。惨めだわね。惨め過ぎて笑っちゃうわね」
ジェシルは悔しそうな顔でミュウミュウを見ている。その傍らで、ハービィは左右の手で一本ずつ杭を持った。
「ねえ、ハービィ、止めてよ!」ジェシルは、杭を持って近づいて来るハービィに言う。「わたしの事が好きなんでしょ? 好きな人には乱暴をしないものよ」
ハービィは、ジェシルの声が聞こえていないのか、足を止める事がなかった。右手に持った杭を、ジェシルの座っている脚の取れた椅子の背もたれの後ろに突き立て、左手の杭は動かないムハンマイドの頭の傍に突き立てた。その衝撃のせいなのか、ムハンマイドが小さく呻いた。それが終わると、ハービィは鎖を取りに戻る。
「あはは! ジェシル、あなた、すっかり無視されちゃっているわねぇ」ミュウミュウが笑う。「わたしと同じね? どう? 悔しいでしょ? 泣きたくなっちゃうでしょ? 泣いて良いのよ。最期の時だもの。泣いて許しを請うと良いわ。……でも、許してあげないけどね! あはは!」
ハービィは、左右の手に一本ずつ鎖を持って、地面を引きずりながら、ジェシルたちに近づく。地面に鎖を置くと、一端を杭に巻き付けて縛る。しかし、それほど器用ではないハービィは、思いの外、時間が掛かっている。ミュウミュウは明らかに、いらいらしている。
「ハービィ、早くしなさいよ! そんなにのろのろやっていたら、明日になっちゃうわよ!」
しかし、ハービィは答えない。作業のペースも変わらない。
「ははは!」ジェシルは笑う。「やっぱりあなたはハービィに相手にされていないんだわ! いや、存在している事すら関心が持たれていないのよ! オーランド・ゼムとの仲良しもハービィには通用しないのね! 泣きたくなったでしょ? 泣けばぁ?」
ミュウミュウは拳を握るとジェシルを睨みつけた。ゆっくりとジェシルに迫りながら拳を振り上げた。ジェシルは臆する事なく、ミュウミュウを睨み返している。と、ハービィが二人の間に立った。ミュウミュウはむっとしてハービィを睨む。ハービィは鎖のもう一端を持ったまま、頭をオーランド・ゼムに向けた。
「オーランド・ゼム、鎖で縛るですか」ハービィが言う。「鎖はそこそこ重いので、からだに乗せても動けないでありますです」
「ぐるぐる巻きにしてやれば良いのよ!」ミュウミュウが声を荒げる。しかし、ハービィは動かない。ジェシルが小馬鹿にしたように笑む。ミュウミュウはさらにむっとする。「……このポンコツめぇ……」
「……そうだな、重いのなら、からだに乗せておくだけで良いだろう。縛るとなると、余計に時間が掛かりそうだからね」オーランド・ゼムが答える。「では、各自の脚の上にでも置いてくれたまえ」
「かしこまりましてございますです」
ハービィは言うと、紐でぐるぐる巻きにされているジェシルの脚の上に、とぐろを巻きながら丁寧に鎖を積んで行く。徐々に重さが増して行く鎖に、ジェシルは呻いて眉間に皺を寄せた。
「……ハービィ、重いわ……」ジェシルの声は弱々しい。「それに、痛い……」
「ははは!」ミュウミュウは笑った。そして、乗せ終えた鎖の上に飛び乗った。ジェシルは激痛に呻る。ミュウミュウは残忍な笑みを浮かべ、ジェシルの苦悶の表情を見つめる。「良いわぁ、その顔…… ぞくぞくうずうずしてきちゃう……」
ハービィは、ムハンマイドの脚の上にも鎖でとぐろを作った。ムハンマイドも呻いた。
「……このボクちゃん、まだ意識が戻らないのかしら? それとも、狸寝入り?」ミュウミュウは、ジェシルの鎖の上からムハンマイドを見る。「……まあ、どっちでも良いわ。どうせ、もうすぐ終わっちゃうんだから」
ミュウミュウは言うと、身を屈めてジェシルに顔を近づける。そして、優しく微笑む。と、突然、拳でジェシルの横面を殴った。ジェシルは短い悲鳴を上げた。
「ふん! これで少しは気分が良くなったわ!」ミュウミュウは鎖から飛び降りた。「あなたも、もうすぐ終わりだわ。どう? 抵抗出来ずに最期を迎える気分は? 悔しいでしょう? わたしが憎いでしょう? ふふふ…… ああ、ぞくぞくうずうずが止まらないわあ!」
「ミュウミュウ、話は済んだようだね……」オーランド・ゼムが話しかける。ミュウミュウは満足そうにうなずく。「では、時限爆弾をセットして、この星を離れよう。……ハービィ、操縦を頼むよ」
「あら、ダメよ!」ミュウミュウは言う。「ポンコツハービィも、ここで終わりよ」
つづく
「あはは!」ミュウミュウは笑う。「ハービィにハニーなんて呼ばれているけど、結局はアンドロイドよ! あなたじゃなくってご主人様のオーランド・ゼムの言う事を聞くのよね!」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らして、ミュウミュウを睨む。「あなたなんか、そんなハービィに興味も関心も持ってもらえないじゃない!」
「あんなポンコツアンドロイドなんかに興味や関心を持たれると思うと、ぞっとするだけだわ!」
ハービィはオーランド・ゼムの前に立った。次の指示を待っているようだ。
「では、ハービィ、ジェシルとムハンマイド君の後ろに杭を立てたまえ。それが終わったら杭に鎖を結んで、その後に二人を鎖で拘束するのだよ。完全に身動きが出来ないようにするのだよ」
「かしこまりましてございますです」
ハービィは答えると、杭と鎖を地面に置いた。
「ジェシル……」ミュウミュウはにやにやしている。「杭に鎖なんて、捕らわれた動物みたいね。惨めだわね。惨め過ぎて笑っちゃうわね」
ジェシルは悔しそうな顔でミュウミュウを見ている。その傍らで、ハービィは左右の手で一本ずつ杭を持った。
「ねえ、ハービィ、止めてよ!」ジェシルは、杭を持って近づいて来るハービィに言う。「わたしの事が好きなんでしょ? 好きな人には乱暴をしないものよ」
ハービィは、ジェシルの声が聞こえていないのか、足を止める事がなかった。右手に持った杭を、ジェシルの座っている脚の取れた椅子の背もたれの後ろに突き立て、左手の杭は動かないムハンマイドの頭の傍に突き立てた。その衝撃のせいなのか、ムハンマイドが小さく呻いた。それが終わると、ハービィは鎖を取りに戻る。
「あはは! ジェシル、あなた、すっかり無視されちゃっているわねぇ」ミュウミュウが笑う。「わたしと同じね? どう? 悔しいでしょ? 泣きたくなっちゃうでしょ? 泣いて良いのよ。最期の時だもの。泣いて許しを請うと良いわ。……でも、許してあげないけどね! あはは!」
ハービィは、左右の手に一本ずつ鎖を持って、地面を引きずりながら、ジェシルたちに近づく。地面に鎖を置くと、一端を杭に巻き付けて縛る。しかし、それほど器用ではないハービィは、思いの外、時間が掛かっている。ミュウミュウは明らかに、いらいらしている。
「ハービィ、早くしなさいよ! そんなにのろのろやっていたら、明日になっちゃうわよ!」
しかし、ハービィは答えない。作業のペースも変わらない。
「ははは!」ジェシルは笑う。「やっぱりあなたはハービィに相手にされていないんだわ! いや、存在している事すら関心が持たれていないのよ! オーランド・ゼムとの仲良しもハービィには通用しないのね! 泣きたくなったでしょ? 泣けばぁ?」
ミュウミュウは拳を握るとジェシルを睨みつけた。ゆっくりとジェシルに迫りながら拳を振り上げた。ジェシルは臆する事なく、ミュウミュウを睨み返している。と、ハービィが二人の間に立った。ミュウミュウはむっとしてハービィを睨む。ハービィは鎖のもう一端を持ったまま、頭をオーランド・ゼムに向けた。
「オーランド・ゼム、鎖で縛るですか」ハービィが言う。「鎖はそこそこ重いので、からだに乗せても動けないでありますです」
「ぐるぐる巻きにしてやれば良いのよ!」ミュウミュウが声を荒げる。しかし、ハービィは動かない。ジェシルが小馬鹿にしたように笑む。ミュウミュウはさらにむっとする。「……このポンコツめぇ……」
「……そうだな、重いのなら、からだに乗せておくだけで良いだろう。縛るとなると、余計に時間が掛かりそうだからね」オーランド・ゼムが答える。「では、各自の脚の上にでも置いてくれたまえ」
「かしこまりましてございますです」
ハービィは言うと、紐でぐるぐる巻きにされているジェシルの脚の上に、とぐろを巻きながら丁寧に鎖を積んで行く。徐々に重さが増して行く鎖に、ジェシルは呻いて眉間に皺を寄せた。
「……ハービィ、重いわ……」ジェシルの声は弱々しい。「それに、痛い……」
「ははは!」ミュウミュウは笑った。そして、乗せ終えた鎖の上に飛び乗った。ジェシルは激痛に呻る。ミュウミュウは残忍な笑みを浮かべ、ジェシルの苦悶の表情を見つめる。「良いわぁ、その顔…… ぞくぞくうずうずしてきちゃう……」
ハービィは、ムハンマイドの脚の上にも鎖でとぐろを作った。ムハンマイドも呻いた。
「……このボクちゃん、まだ意識が戻らないのかしら? それとも、狸寝入り?」ミュウミュウは、ジェシルの鎖の上からムハンマイドを見る。「……まあ、どっちでも良いわ。どうせ、もうすぐ終わっちゃうんだから」
ミュウミュウは言うと、身を屈めてジェシルに顔を近づける。そして、優しく微笑む。と、突然、拳でジェシルの横面を殴った。ジェシルは短い悲鳴を上げた。
「ふん! これで少しは気分が良くなったわ!」ミュウミュウは鎖から飛び降りた。「あなたも、もうすぐ終わりだわ。どう? 抵抗出来ずに最期を迎える気分は? 悔しいでしょう? わたしが憎いでしょう? ふふふ…… ああ、ぞくぞくうずうずが止まらないわあ!」
「ミュウミュウ、話は済んだようだね……」オーランド・ゼムが話しかける。ミュウミュウは満足そうにうなずく。「では、時限爆弾をセットして、この星を離れよう。……ハービィ、操縦を頼むよ」
「あら、ダメよ!」ミュウミュウは言う。「ポンコツハービィも、ここで終わりよ」
つづく
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