「おいおい、それはどう言う事だね?」オーランド・ゼムが言う。「ハービィの操縦は確かなのだよ」
「でも、わたしを嫌っているみたいじゃない!」ミュウミュウはハービィを見ながら言う。「そんなのと一緒だなんて、イヤだわ!」
「そうは言うがね、ミュウミュウ……」オーランド・ゼムは苦笑する。「ハービィは、わたしの長年の友なのだよ」
「わたしとハービィと、どっちを取るのよ?」ミュウミュウはオーランド・ゼムに詰め寄り、じっと目を見つめながら笑みを浮かべる。「……もちろん……?」
「ああ、もちろん、君だよ、ミュウミュウ」オーランド・ゼムは優しく笑いかける。「……分かったよ。ハービィとは、ここでお別れだ」
「ちょっと! オーランド・ゼム!」ジェシルが声を荒げて割って入る。「何を言い出すのよ! そんな女より、ハービィの方が何百倍も役に立つじゃない! それに、そんな女、すぐに見栄えも悪くなるわ!」
「……うるさい女ねぇ」ミュウミュウはジェシルを睨むと、拳を握り、それをジェシルに見せた。「また殴られたいの? ……それにね、今はハービィなんか足元にも及ばない、優秀なアンドロイドが山ほどいるのよ。時代遅れのハービィなんか、もう御役御免だわ!」
「そう言う事のようだよ、ジェシル」オーランド・ゼムが言う。「それに、好きになった相手と共に最期を迎えられるなんて、ロマンチックだと思わないかね? ハービィも満足するだろう」
「馬鹿な事を言わないでよ!」ジェシルはオーランド・ゼムを睨む。「ハービィは、あなたの友なんでしょ? 連れて行ってあげなさいよ!」
「何度も言わせないでよね。ハービィなんていらないって言っているじゃない!」ミュウミュウは言うと、動かないハービィを見る。「そんな時代遅れのポンコツなんか! それに、わたしの言う事を全く聞かない欠陥品なんか、ゴミ捨て場に行けって言うんだわ!」
「ジェシル……」オーランド・ゼムが真顔になる。「お遊びはおしまいだ。わたしたちはもう行かねばならない。……楽しかったよ」
「そうね、楽しかったわ」ミュウミュウは、ジェシルに飛び切りの笑顔を見せた。「残りの時間をぎりぎりまで悔やんで死んで行けば良いんだわ」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らす。「じゃあ、時限爆弾の爆破時間を決めなさいよ!」
「そうだな、それが良いだろう、ミュウミュウ」オーランド・ゼムがうなずく。「せっかく、ジェシルが言っているのだからね」
「ミュウミュウ!」ジェシルが声を荒げる。「今すぐ爆発させなさいよ! そして、みんなで終わりにしちゃえば良いんだわ!」
「うるさい!」ミュウミュウにジェシルに近づき、頬を平手打ちにした。「何で、あなたが仕切ろうとしているのよ! 黙っていなさいよ!」
「ミュウミュウ」オーランド・ゼムが言う。「ハービィが操縦しないとなると、わたしがしなければならない。わたしにとっては久々なものだからね、少し戸惑うかもしれない。その点を考慮すると、発進までに三十分は必要だ」
「あら、そうなの? すぐに飛び立てると思っていたのに……」
「一番大切なのは、飛行前のチェックだよ。……ハービィなら、自分自身を宇宙船と繋いで同調させ、自動的に瞬時にチェックが済むのだがね」
「そんな事を言ったって、ダメよ」ミュウミュウはぷっと頬を膨らませる。「絶対、ハービィは乗せないわ!」
「ならば、今言った時間は必要だ」オーランド・ゼムは苦笑する。「まあ、それを踏まえて、設定をしてもらおうか」
「じゃあ……」ミュウミュウは手慣れた様子で爆弾を扱っている。その手元を見ているジェシルの視線に気が付いた。ミュウミュウは笑う。「ふふふ…… わたしは生きて行くために色々とやったのよ。その中でテロリスト集団の手伝いもしたわ。その時に、こう言った武器や兵器の扱いを覚えたのよ。結構優秀だったのよ」
ミュウミュウは設定を終え、表示された時間をジェシルに向けた。デジタル表示で「01:00:00」とあった。
「わたしって、情け深くて優しいでしょ? 三十分で済む所を一時間にまで伸ばしてあげたのよ」ミュウミュウは、残忍な笑みを浮かべてジェシルを見る。「大丈夫よ。わたしたちが飛び立ってから三十分はあるじゃない? 誰も見ていないんだから、思いっ切り、泣いて良いわよ」
ミュウミュウは笑った。そして、爆弾をジェシルに足に乗せられた鎖の上に置いた。時間表示がジェシルに見えている。が、ちょっと考えて、向きを逆にした。これでは時間が分からない。
「ふふふ……」ミュウミュウは意地悪そうに笑う。「時間が見えちゃうと、覚悟しちゃうじゃない? そんなの面白く無いわ。後どれだけ残っているのかが分からないままで、おしまいになってもらうわね。……あら、イヤだわ! 楽しくなっちゃって、ぞくぞくうずうずが止まらなくなっちゃいそう……」
「ふん! 何なのよ、この変態馬鹿女!」ジェシルが罵る。「さっさと消えちゃってよ!」
「心配しないで、すぐに居なくなるから」ミュウミュウは、ジェシルの罵りに平気な顔をしている。「……でも、あなたの泣き叫ぶ顔が見られないのが残念だわねぇ……」
「じゃあ、わたしの泣き叫ぶ顔を見てから行けば良いじゃない!」
「あら、楽しそうね……」ミュウミュウは言うと、オーランド・ゼムを見る。「ねぇ、あなた、ジェシルが言った様にしちゃ、ダメかしら?」
「わたしとしては、急ぎたいのだよ、ミュウミュウ」オーランド・ゼムは言う。「それに、爆発なら宇宙からでも確認は出来るさ」
「そう……」ミュウミュウは残念そうだ。「……分かったわ。わがままばかり言ってちゃ、子供よね? わたしは大人の女なんだから」
「聞き分けが良くて嬉しいよ」オーランド・ゼムがうなずく。「では、起爆スイッチを入れると良いだろう」
「そうね」ミュウミュウは言うと、ジェシルに顔を向ける。悲しそうな顔だった。「さようなら、ジェシル。楽しかったわ。あなたの事は、一生忘れないわ」
ミュウミュウは言うと、急に笑い出した。笑いながら起爆スイッチを入れた。数字が「00:00:00」に向かって減り始める。
つづく
「でも、わたしを嫌っているみたいじゃない!」ミュウミュウはハービィを見ながら言う。「そんなのと一緒だなんて、イヤだわ!」
「そうは言うがね、ミュウミュウ……」オーランド・ゼムは苦笑する。「ハービィは、わたしの長年の友なのだよ」
「わたしとハービィと、どっちを取るのよ?」ミュウミュウはオーランド・ゼムに詰め寄り、じっと目を見つめながら笑みを浮かべる。「……もちろん……?」
「ああ、もちろん、君だよ、ミュウミュウ」オーランド・ゼムは優しく笑いかける。「……分かったよ。ハービィとは、ここでお別れだ」
「ちょっと! オーランド・ゼム!」ジェシルが声を荒げて割って入る。「何を言い出すのよ! そんな女より、ハービィの方が何百倍も役に立つじゃない! それに、そんな女、すぐに見栄えも悪くなるわ!」
「……うるさい女ねぇ」ミュウミュウはジェシルを睨むと、拳を握り、それをジェシルに見せた。「また殴られたいの? ……それにね、今はハービィなんか足元にも及ばない、優秀なアンドロイドが山ほどいるのよ。時代遅れのハービィなんか、もう御役御免だわ!」
「そう言う事のようだよ、ジェシル」オーランド・ゼムが言う。「それに、好きになった相手と共に最期を迎えられるなんて、ロマンチックだと思わないかね? ハービィも満足するだろう」
「馬鹿な事を言わないでよ!」ジェシルはオーランド・ゼムを睨む。「ハービィは、あなたの友なんでしょ? 連れて行ってあげなさいよ!」
「何度も言わせないでよね。ハービィなんていらないって言っているじゃない!」ミュウミュウは言うと、動かないハービィを見る。「そんな時代遅れのポンコツなんか! それに、わたしの言う事を全く聞かない欠陥品なんか、ゴミ捨て場に行けって言うんだわ!」
「ジェシル……」オーランド・ゼムが真顔になる。「お遊びはおしまいだ。わたしたちはもう行かねばならない。……楽しかったよ」
「そうね、楽しかったわ」ミュウミュウは、ジェシルに飛び切りの笑顔を見せた。「残りの時間をぎりぎりまで悔やんで死んで行けば良いんだわ」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らす。「じゃあ、時限爆弾の爆破時間を決めなさいよ!」
「そうだな、それが良いだろう、ミュウミュウ」オーランド・ゼムがうなずく。「せっかく、ジェシルが言っているのだからね」
「ミュウミュウ!」ジェシルが声を荒げる。「今すぐ爆発させなさいよ! そして、みんなで終わりにしちゃえば良いんだわ!」
「うるさい!」ミュウミュウにジェシルに近づき、頬を平手打ちにした。「何で、あなたが仕切ろうとしているのよ! 黙っていなさいよ!」
「ミュウミュウ」オーランド・ゼムが言う。「ハービィが操縦しないとなると、わたしがしなければならない。わたしにとっては久々なものだからね、少し戸惑うかもしれない。その点を考慮すると、発進までに三十分は必要だ」
「あら、そうなの? すぐに飛び立てると思っていたのに……」
「一番大切なのは、飛行前のチェックだよ。……ハービィなら、自分自身を宇宙船と繋いで同調させ、自動的に瞬時にチェックが済むのだがね」
「そんな事を言ったって、ダメよ」ミュウミュウはぷっと頬を膨らませる。「絶対、ハービィは乗せないわ!」
「ならば、今言った時間は必要だ」オーランド・ゼムは苦笑する。「まあ、それを踏まえて、設定をしてもらおうか」
「じゃあ……」ミュウミュウは手慣れた様子で爆弾を扱っている。その手元を見ているジェシルの視線に気が付いた。ミュウミュウは笑う。「ふふふ…… わたしは生きて行くために色々とやったのよ。その中でテロリスト集団の手伝いもしたわ。その時に、こう言った武器や兵器の扱いを覚えたのよ。結構優秀だったのよ」
ミュウミュウは設定を終え、表示された時間をジェシルに向けた。デジタル表示で「01:00:00」とあった。
「わたしって、情け深くて優しいでしょ? 三十分で済む所を一時間にまで伸ばしてあげたのよ」ミュウミュウは、残忍な笑みを浮かべてジェシルを見る。「大丈夫よ。わたしたちが飛び立ってから三十分はあるじゃない? 誰も見ていないんだから、思いっ切り、泣いて良いわよ」
ミュウミュウは笑った。そして、爆弾をジェシルに足に乗せられた鎖の上に置いた。時間表示がジェシルに見えている。が、ちょっと考えて、向きを逆にした。これでは時間が分からない。
「ふふふ……」ミュウミュウは意地悪そうに笑う。「時間が見えちゃうと、覚悟しちゃうじゃない? そんなの面白く無いわ。後どれだけ残っているのかが分からないままで、おしまいになってもらうわね。……あら、イヤだわ! 楽しくなっちゃって、ぞくぞくうずうずが止まらなくなっちゃいそう……」
「ふん! 何なのよ、この変態馬鹿女!」ジェシルが罵る。「さっさと消えちゃってよ!」
「心配しないで、すぐに居なくなるから」ミュウミュウは、ジェシルの罵りに平気な顔をしている。「……でも、あなたの泣き叫ぶ顔が見られないのが残念だわねぇ……」
「じゃあ、わたしの泣き叫ぶ顔を見てから行けば良いじゃない!」
「あら、楽しそうね……」ミュウミュウは言うと、オーランド・ゼムを見る。「ねぇ、あなた、ジェシルが言った様にしちゃ、ダメかしら?」
「わたしとしては、急ぎたいのだよ、ミュウミュウ」オーランド・ゼムは言う。「それに、爆発なら宇宙からでも確認は出来るさ」
「そう……」ミュウミュウは残念そうだ。「……分かったわ。わがままばかり言ってちゃ、子供よね? わたしは大人の女なんだから」
「聞き分けが良くて嬉しいよ」オーランド・ゼムがうなずく。「では、起爆スイッチを入れると良いだろう」
「そうね」ミュウミュウは言うと、ジェシルに顔を向ける。悲しそうな顔だった。「さようなら、ジェシル。楽しかったわ。あなたの事は、一生忘れないわ」
ミュウミュウは言うと、急に笑い出した。笑いながら起爆スイッチを入れた。数字が「00:00:00」に向かって減り始める。
つづく
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