お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

冨美代とみつ

2022年05月23日 | 霊感少女 さとみ 外伝 4
 ああ、素敵ですわぁ、みつ様……
 あなたが男子であったなら、どれほど嬉しい事でございましょうや。
 寸暇を惜しんでなさる剣の修行。
 ……あ、今わたくしを熱い眼差しで見て下さった!
 ああ、頬が熱くなり、からだも芯から熱くなって行くのが分かりますわ……
 わたくしはみつ様に恋慕致しておりまする……
 そもそも恋慕とは異性に抱くものと心得てはおりますわ。
 なれど、みつ様の、凛々しいお姿、豪胆な振る舞い、真っ直ぐなご気性……
 どれを取りましても、日本男児そのもの。
 みつ様が女子である事を、わたくしはお恨み致します。
 いえ、女子としても、みつ様は大和撫子でございます。
 わたくしなど当然、足元にも及びますまい。
 ご器量の良さは、わたくしが会うた姫様方に比しても群を抜いておられますわ。
 それでも尚、みつ様が男子であったならと思うのでございます……
 嵩彦様と結婚致しましたが、みつ様を知れば、決して致さなかったと申せます。
 それほどに、わたくしは、みつ様をお慕い申し上げているのでございます……


 うわぁ、またわたしを見ているぞ……
 それも、何と言う視線である事か……
 冨美代殿、近頃やたらと絡んでくるし、何やら身の危険すら感じてしまう。
 それにしても、姫様のようでありながら、薙刀の腕は大したものだ。
 中々の修練を積んだものだと思われる。
 ならばこそ、手の空いている今こそ、さらなる修練を目指せばよかろうに……
 ……そのつもりで冨美代殿を見たと言うのに、何たる視線であろうか!
 女子同士である事を、冨美代殿は忘れてでもいるのか?
 ……それとも、わたしは男に見えてしまうのか?
 生前も「女侍」などと揶揄されていたが、あれは男に見えると暗に言われていたのだろうか?
 気にも留めてはおらなんだが……
 そう言えば、お祖母さまに「器量良しを侍姿で包み隠すとは」と嘆かれた事があったな。
 何を戯れた事をおっしゃるのやらと、その場では一蹴したのだが。
 まさか、真の事だったのだろうか?
 わたしは女の姿の方が良いのだろうか?
 とは言え、今さら姿を変えるわけにもいかないし……
 冨美代殿、嵩彦殿を追いかけて出て行かぬものかなぁ……


 二人の心は咬み合わないようで……



作者註:次回から「霊感少女さとみ 2」の新章をお届けする予定です。


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