「あの三人に共通している点がある。何だか分かるかい?」
「犯罪の容疑者って点かしら?」
「それは捜査官の目線だよ。一般的に考えれば、三人に共通しているのは、揺るぎない地位と有り余っている財力だ。何の不自由も無い暮らしをしている」
「じゃあ、付け入る隙なんか無いじゃない」
「ところがだ。地位でも財力でも、手にするのが難しいものがある」
「何よ?」
「へっへっへ……」ロールはグラスを一気に飲み干した。「おやおや、グラスが空だ」
ジェシルは舌打ちをし、客の間を忙しく飛び回っている球体のロボ・ウェイターの一つを呼び止めた。
「この酔っぱらいにドムドム酒を一杯……」
「おいおい。ジェシルの奢りなんだろ? じゃあ、超高級酒のゼドゼドを一杯だ!」
「……ロール……」ロボ・ウェイターが呆れた口調で言う。「うちの店に、そんな良い酒あるわけないだろ? 分相応にドムドムにしておきな」
「ちぇっ、湿気た店だぜ!」
「常連のあんたに言われたくないぜ」
ロボ・ウェイターはドムドム酒を取りにカウンターへ飛んで行った。ジェシルは遣り取りを見て、ざまあみろとばかりに笑っている。
「あははは! 分相応だってさ! ロボ・ウェイターに説教されるなんて、情報屋ロールも焼きが回ったわね!」
「ふん! なんだか気分が悪いなあ!」
「でも、ほら、話してくれたら、これだから……」ジェシルは胸を張る。ブラウスのボタンがまた一つ弾け飛んだ。ブラウスの隙間から、白い滑らかな肌と下着のフリルの一部が覗く。「続きを話してよ」
「あ、ああ……」ロールは頷くが、目はジェシルの胸元に釘付けだ。「……で、どこまで話したっけ?」
「地位やお金でも、手に入らないものがあるってところまでよ」
「……そうだった。で、その手に入らないものが、お相手なんだ」
「お相手? お相手って……」ジェシルは言ってから、その意味するものに気付き、顔を赤らめた。「馬鹿! 変な事、言わせないで!」
「何を純情可憐な乙女してんだよ。白々しいねえ」ロールが呆れたように言う。「オレの持ってる情報じゃ、ジェシル、お前さんは可成りの…… へっへっへ……」
「それ以上言うと……」ジェシルはスーツの内ポケットから小型のメルカトリーム熱線銃を取り出し、スーツで覆い隠すようにして銃口をロールに向けた。「公務執行妨害と強制猥褻罪で射殺するわよ!」
「おお、怖ぇ……」
「それで、お相手って、どう言う事?」
「三人とも趣味が少し変わってんだよ」
「聞かせて」
「まず、西のボスのマグは、とにかくぶよぶよなでぶ女が好みでさ。そんな女に乗っかられて、窒息寸前までいくのが悦びなんだとさ」
「うえ~っ……」ジェシルは思いきり嫌な顔をした。「気は確かなのかしら……」
「東のボスのゼドはマグとは正反対で、骨に皮が一枚付いているような女が良いんだ。そのゴツゴツしたからだを、自分の全身に擦りつけて欲しいんだとさ」
「……痛くないの?」ジェシルは更に嫌な顔をする。「どうかしてるわ……」
「その痛いのが堪らないんだとさ。……で、女教主のアルミーシュは、男勝りの筋肉隆々は女に詰られたり罵られたり苛められたりされると、嬉しくて泣いちゃうんだぜ」
「何よ、それぇ…… 信者を導く教主様なんでしょ?」
「普段、あれこれ説教やら指導やらしているから、逆に色々と言われたり、やられたりしたいんじゃないの?」
「三人とも、最……悪……」
「それでさ、三人共、それなりのお相手はいるんだけど、決して満足はしていねぇ。いつも取っ替え引っ換えしている。配下のごく親しい部下や側近に、常に理想のお相手を探すように命じてもいる。そいつらも手に余るから、オレ達情報屋にも女探しの依頼があるのさ。公にするにゃあ、ちょっと憚られるんで、公序良俗を重んじる宇宙パトロールは知らないだろうけどね」
「成る程ね……」ジェシルは考え込む。「地位や金じゃ、どうにもならない女達か…… どっちにしても最悪ね!」
「……さ、教えてやったぜ。約束通り、見て触ってってさせてもらうぜ」ロールの喉がごろごろ鳴っている。「ここじゃ何だから、オレの部屋に行こうか?」
「あら、もう十分でしょ?」
「馬鹿言うなよ。まだ何もしてねぇだろう」
「楽しんだでしょ?」ジェシルは胸を張る。ブラウスの前が開いて、先程より肌と下着が露出した。深い谷間がくっきりと見えた。「あなたにはこれでも勿体無いわ!」
ジェシルが言い終わると同時に、ロールはテーブルに突っ伏した。ジェシルの素早いつきがロールの鳩尾を撃ったのだ。
「よう、ドムドムのお代わりだぜ」
ロボ・ウェイターがグラスを持って飛んで来た。
「酔って寝ちゃったのよ。だから、いらないわ」
ジェシルが言うと、ロボ・ウェイターはグラスを逆様にして、ドムドム酒を突っ伏しているロールの頭に掛けて、別の場所へ飛んで行った。
「ロール、良い夢見てね」
ジェシルは言うと、テーブルの上の籠からベルザの実を一つ手に取って、立ち上がった。
つづく
「犯罪の容疑者って点かしら?」
「それは捜査官の目線だよ。一般的に考えれば、三人に共通しているのは、揺るぎない地位と有り余っている財力だ。何の不自由も無い暮らしをしている」
「じゃあ、付け入る隙なんか無いじゃない」
「ところがだ。地位でも財力でも、手にするのが難しいものがある」
「何よ?」
「へっへっへ……」ロールはグラスを一気に飲み干した。「おやおや、グラスが空だ」
ジェシルは舌打ちをし、客の間を忙しく飛び回っている球体のロボ・ウェイターの一つを呼び止めた。
「この酔っぱらいにドムドム酒を一杯……」
「おいおい。ジェシルの奢りなんだろ? じゃあ、超高級酒のゼドゼドを一杯だ!」
「……ロール……」ロボ・ウェイターが呆れた口調で言う。「うちの店に、そんな良い酒あるわけないだろ? 分相応にドムドムにしておきな」
「ちぇっ、湿気た店だぜ!」
「常連のあんたに言われたくないぜ」
ロボ・ウェイターはドムドム酒を取りにカウンターへ飛んで行った。ジェシルは遣り取りを見て、ざまあみろとばかりに笑っている。
「あははは! 分相応だってさ! ロボ・ウェイターに説教されるなんて、情報屋ロールも焼きが回ったわね!」
「ふん! なんだか気分が悪いなあ!」
「でも、ほら、話してくれたら、これだから……」ジェシルは胸を張る。ブラウスのボタンがまた一つ弾け飛んだ。ブラウスの隙間から、白い滑らかな肌と下着のフリルの一部が覗く。「続きを話してよ」
「あ、ああ……」ロールは頷くが、目はジェシルの胸元に釘付けだ。「……で、どこまで話したっけ?」
「地位やお金でも、手に入らないものがあるってところまでよ」
「……そうだった。で、その手に入らないものが、お相手なんだ」
「お相手? お相手って……」ジェシルは言ってから、その意味するものに気付き、顔を赤らめた。「馬鹿! 変な事、言わせないで!」
「何を純情可憐な乙女してんだよ。白々しいねえ」ロールが呆れたように言う。「オレの持ってる情報じゃ、ジェシル、お前さんは可成りの…… へっへっへ……」
「それ以上言うと……」ジェシルはスーツの内ポケットから小型のメルカトリーム熱線銃を取り出し、スーツで覆い隠すようにして銃口をロールに向けた。「公務執行妨害と強制猥褻罪で射殺するわよ!」
「おお、怖ぇ……」
「それで、お相手って、どう言う事?」
「三人とも趣味が少し変わってんだよ」
「聞かせて」
「まず、西のボスのマグは、とにかくぶよぶよなでぶ女が好みでさ。そんな女に乗っかられて、窒息寸前までいくのが悦びなんだとさ」
「うえ~っ……」ジェシルは思いきり嫌な顔をした。「気は確かなのかしら……」
「東のボスのゼドはマグとは正反対で、骨に皮が一枚付いているような女が良いんだ。そのゴツゴツしたからだを、自分の全身に擦りつけて欲しいんだとさ」
「……痛くないの?」ジェシルは更に嫌な顔をする。「どうかしてるわ……」
「その痛いのが堪らないんだとさ。……で、女教主のアルミーシュは、男勝りの筋肉隆々は女に詰られたり罵られたり苛められたりされると、嬉しくて泣いちゃうんだぜ」
「何よ、それぇ…… 信者を導く教主様なんでしょ?」
「普段、あれこれ説教やら指導やらしているから、逆に色々と言われたり、やられたりしたいんじゃないの?」
「三人とも、最……悪……」
「それでさ、三人共、それなりのお相手はいるんだけど、決して満足はしていねぇ。いつも取っ替え引っ換えしている。配下のごく親しい部下や側近に、常に理想のお相手を探すように命じてもいる。そいつらも手に余るから、オレ達情報屋にも女探しの依頼があるのさ。公にするにゃあ、ちょっと憚られるんで、公序良俗を重んじる宇宙パトロールは知らないだろうけどね」
「成る程ね……」ジェシルは考え込む。「地位や金じゃ、どうにもならない女達か…… どっちにしても最悪ね!」
「……さ、教えてやったぜ。約束通り、見て触ってってさせてもらうぜ」ロールの喉がごろごろ鳴っている。「ここじゃ何だから、オレの部屋に行こうか?」
「あら、もう十分でしょ?」
「馬鹿言うなよ。まだ何もしてねぇだろう」
「楽しんだでしょ?」ジェシルは胸を張る。ブラウスの前が開いて、先程より肌と下着が露出した。深い谷間がくっきりと見えた。「あなたにはこれでも勿体無いわ!」
ジェシルが言い終わると同時に、ロールはテーブルに突っ伏した。ジェシルの素早いつきがロールの鳩尾を撃ったのだ。
「よう、ドムドムのお代わりだぜ」
ロボ・ウェイターがグラスを持って飛んで来た。
「酔って寝ちゃったのよ。だから、いらないわ」
ジェシルが言うと、ロボ・ウェイターはグラスを逆様にして、ドムドム酒を突っ伏しているロールの頭に掛けて、別の場所へ飛んで行った。
「ロール、良い夢見てね」
ジェシルは言うと、テーブルの上の籠からベルザの実を一つ手に取って、立ち上がった。
つづく
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