宇宙人が空飛ぶ円盤から降りてきた

　宇宙人が空飛ぶ円盤から降りてきた。
　夜中の森の中。
　樹がざわめいた。
　宇宙人は手にした光線銃で樹を撃った。
　枝を揺らしながら樹は消滅した。
　鳥が鳴いた。
　宇宙人は手にした光線銃で鳥を撃った。
　飛び立つのが一足遅く鳥は消滅した。
　野獣が吠えた。
　宇宙人は手にした光線銃で野獣を撃った。
　宇宙人に飛び掛かりながら野獣は消滅した。
　背後で大きな音がした。
　宇宙人は手にした光線銃で背後を撃った。
　背後にあった音を立てて昇降口を閉じた空飛ぶ円盤は消滅した。



　宇宙人が空飛ぶ円盤から降りてきた。
　代表に会わせるようにと目の前の男に英語で言う。
　しかし男は答えない。
　別の言語かも知れないとフランス語で言う。
　しかし男は答えない。
　宇宙人はさらに別の言語を使う。
　しかし男は答えない。
　地球のありとあらゆる言語を使う。
　しかし男は答えない。
　薄気味悪くなった宇宙人は帰って行った。
　そこには田んぼの中に案山子が立っているだけだった。



　宇宙人が空飛ぶ円盤から降りてきた。
　支配をするために地球にやって来たのだ。
　何も無い星だと一人が馬鹿にする。
　これは開発とか言うもののせいだろうと思い納得する。
　山も川も樹もすべて潰してしまったようだと別の一人が笑う。
　これも開発のせいだろうと思い納得する。
　生物も居ないとさらに別の一人が呆れる。
　これも開発のせいだろうと思い納得する。
　つまらぬ星だ帰ろう帰ろうと皆の意見が一致する。
　空飛ぶ円盤は小石の上から飛び立った。
　小さな小さな宇宙人が小石を地球と思った勘違い。