「ほう……」オーランド・ゼムは感心したと言ったようにうなずく。「さすが、天才のムハンマイド君だ。良い切り札の使い方をするねぇ……」
「冗談ではないからな!」ムハンマイドが息巻く。「そして、修理が終わったら、さっさとこの星から出て行ってくれ! さらに、ボクたちには何もしない事を約束しろ!」
「何よ、このボクちゃん!」ミュウミュウはムハンマイドを睨み、銃口を向ける。「調子に乗ってさ!」
「ミュウミュウ、よしなさいよ!」ジェシルは立ち上がる。銃口は素早くジェシルに向けられる。しかし、ジェシルは平気な顔をしている。「ムハンマイドが居なくなったら、困るのはあなたたちよ!」
「それは言えているよ、ミュウミュウ……」オーランド・ゼムは優しく言うと、ミュウミュウの肩に手を置いた。「今、一番必要なのは、ムハンマイド君だよ」
「そうね……」ミュウミュウはうなずくと、ジェシルを見る。「ジェシルは用無しになったけどね」
ジェシルはむっとしてミュウミュウを睨みつけた。ミュウミュウもジェシルを睨みつける。殺気が飛び交う。
「……ところで、ムハンマイド君」オーランド・ゼムが殺気をかき消すように、悠長な口調で話す。「修理には、どれほど掛かるのかね?」
「まだ少し時間が掛かる」ムハンマイドは答える。「これからが大事な所だからな」
「そうかね。……だが、わたしも決して気の長い方では無いのだよ」
「そうは言うがな、この宇宙船は旧式の癖に、場所によっては最新式のものを使っている。無茶苦茶だ。そして、これから修理する所は、今じゃお目に掛かれない旧式の部品の使われている所なんだ。だから、時間が必要だ」
「完璧な修理なんかいらないわよ!」ミュウミュウがいらいらしながら言う。「一番近くのアジトまで飛べば良いのよ。そこで最新式の宇宙船に乗り返れば良いわ。それだったら、もう飛べるんじゃない?」
「おいおい、ミュウミュウ」オーランド・ゼムが言う。「この宇宙船は、わたしの昔馴染みなのだよ。ずっと一緒だったのさ。そんな軽々しく扱うような言い方はしないでもらいたいね」
「でも、そんな事を言うと、このボクちゃんが逆手にとって、だらだらと作業を続けて、その隙に宇宙パトロールにでも連絡されでもしたら面倒だわ」
「うむ、それは充分考えられるな……」オーランド・ゼムはうなずく。それから、ハービィをに向き直る。「ハービィ、聞きたいのだが……」
今まで壊れたように動かなかったハービィが、ぎぎぎと音を立てながら、顔をオーランド・ゼムに向けた。
「はい、何でございましょうか? 何なりとお話し下さいませでございます」
「何よ、ハービィ!」ジェシルは口を尖らせる。「今、わたしは危機的状況よ! わたしを守ってくれるんじゃなかったの!」
「ははは、残念だねぇ、ジェシル」オーランド・ゼムは楽しそうに笑う。「ハービィの主人は、このわたしだ。わたしがハービィと居る限り、わたしが最優先となるのだよ」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らしてそっぽを向く。「やっぱり、アンドロイドって、そんな程度なのね! 信じたわたしが馬鹿だったわ!」
「ハービィ……」オーランド・ゼムはジェシルを無視して話を続ける。「ムハンマイド君は、修理にまだ時間が掛かると言っているのだが、どうなのかね?」
「はい……」ハービィは言うと、動きが止まった。答えるための計算中のようだ。しばらくして、ぎぎぎと動き出す。「わがはいの計算では、この調子で行けば、今日中には終わりますです。ハニーを守るために、早く終わらせなければなりませんのです」
「ふふふ、良かったじゃない、ジェシル」ミュウミュウが小馬鹿にしたように笑う。「ハービィは、やっぱりあなたを守りたいって思っているようだわ」
「言うだけなら、誰でも出来るわ!」ジェシルはさらにむっとして、ハービィを見る。「まったく、もうっ!」
「……と、ハービィが言っているのだがねぇ、ムハンマイド君」オーランド・ゼムはムハンマイドを見て、にやりと笑う。「君の言う事と違っているようだが?」
「それはハービィの計算によるものだろう?」ムハンマイドが言う。「ハービィはアンドロイドだ。飲まず食わず休まずで、ぶっ通しの作業が出来る。それを前提にした計算だ。だが、ボクは生身だ。あんたよりは充分若いがね。それでも生身だ。飲んだり食ったり休んだりしなければ、からだが持たない」
「ねえ、あなた」ミュウミュウがオーランド・ゼムに言う。「ハービィって優秀なアンドロイドなんでしょ? だったら、こんなボクちゃんなんか放っておいて、修理をハービィにさせれば良いじゃない?」
「それが出来れば良いのだがねぇ……」オーランド・ゼムは苦笑する。「彼は基本的のサポート用として作られているのだよ。手伝いは最高なのだが、自分からは出来ないのだよ」
「じゃ、、実際の作業はボクちゃんがやらないとダメって事?」ミュウミュウは不満気に頬を膨らませる。「何よ! 役立たずなアンドロイドね!」
「そう言うな、ミュウミュウ。彼とは長年の友なのだよ」
「そうなの……」ミュウミュウは言うと、意地悪そうな表情に変わる。「じゃあ、わたしとハービィと、どっちが大切なの? もちろん、わたしよね?」
「そうだよ、もちろんだ」オーランド・ゼムはうなずく。「君は、わたしの後継者なのだからね」
「ははは!」ジェシルが笑う。「結局、あなたたちの間には愛情なんて無いよね! 利用し利用されるだけの間柄じゃない! 悪党らしいわね! そして、最後には殺し合えば良いんだわ!」
「うるさいわね!」ミュウミュウはジェシルを睨む。「本当、撃ち殺してやろうかしら!」
「そんな事をしたら、ムハンマイドは言う事を聞かないわよ?」
「あんなボクちゃんなんか……」ミュウミュウは銃を撃った。熱線はムハンマイドの足元に当たった。ムハンマイドはその場に座り込んでしまった。「……ふふふ、見たでしょう? 銃で脅せば素直になるものよ」
「……いや、もう大丈夫だ!」ムハンマイドは立ち上がる。その表情は決然としてる。「驚いただけさ。……ボクだって、親父を見て育ったんだ。多少の修羅場には慣れている。それに、ボクが居なければ宇宙船は動かない。ジェシルに何かをしても同様だ」
「ミュウミュウ、君はムハンマイド君に流れる父上の血をたぎらせてしまったようだね」オーランド・ゼムが言う。「あの物言いは、頑固で言い出したら後に引かない父上そっくりだ。仕方がない、任せるとしよう。もちろん、監視はつけさせてもらうよ」
つづく
「冗談ではないからな!」ムハンマイドが息巻く。「そして、修理が終わったら、さっさとこの星から出て行ってくれ! さらに、ボクたちには何もしない事を約束しろ!」
「何よ、このボクちゃん!」ミュウミュウはムハンマイドを睨み、銃口を向ける。「調子に乗ってさ!」
「ミュウミュウ、よしなさいよ!」ジェシルは立ち上がる。銃口は素早くジェシルに向けられる。しかし、ジェシルは平気な顔をしている。「ムハンマイドが居なくなったら、困るのはあなたたちよ!」
「それは言えているよ、ミュウミュウ……」オーランド・ゼムは優しく言うと、ミュウミュウの肩に手を置いた。「今、一番必要なのは、ムハンマイド君だよ」
「そうね……」ミュウミュウはうなずくと、ジェシルを見る。「ジェシルは用無しになったけどね」
ジェシルはむっとしてミュウミュウを睨みつけた。ミュウミュウもジェシルを睨みつける。殺気が飛び交う。
「……ところで、ムハンマイド君」オーランド・ゼムが殺気をかき消すように、悠長な口調で話す。「修理には、どれほど掛かるのかね?」
「まだ少し時間が掛かる」ムハンマイドは答える。「これからが大事な所だからな」
「そうかね。……だが、わたしも決して気の長い方では無いのだよ」
「そうは言うがな、この宇宙船は旧式の癖に、場所によっては最新式のものを使っている。無茶苦茶だ。そして、これから修理する所は、今じゃお目に掛かれない旧式の部品の使われている所なんだ。だから、時間が必要だ」
「完璧な修理なんかいらないわよ!」ミュウミュウがいらいらしながら言う。「一番近くのアジトまで飛べば良いのよ。そこで最新式の宇宙船に乗り返れば良いわ。それだったら、もう飛べるんじゃない?」
「おいおい、ミュウミュウ」オーランド・ゼムが言う。「この宇宙船は、わたしの昔馴染みなのだよ。ずっと一緒だったのさ。そんな軽々しく扱うような言い方はしないでもらいたいね」
「でも、そんな事を言うと、このボクちゃんが逆手にとって、だらだらと作業を続けて、その隙に宇宙パトロールにでも連絡されでもしたら面倒だわ」
「うむ、それは充分考えられるな……」オーランド・ゼムはうなずく。それから、ハービィをに向き直る。「ハービィ、聞きたいのだが……」
今まで壊れたように動かなかったハービィが、ぎぎぎと音を立てながら、顔をオーランド・ゼムに向けた。
「はい、何でございましょうか? 何なりとお話し下さいませでございます」
「何よ、ハービィ!」ジェシルは口を尖らせる。「今、わたしは危機的状況よ! わたしを守ってくれるんじゃなかったの!」
「ははは、残念だねぇ、ジェシル」オーランド・ゼムは楽しそうに笑う。「ハービィの主人は、このわたしだ。わたしがハービィと居る限り、わたしが最優先となるのだよ」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らしてそっぽを向く。「やっぱり、アンドロイドって、そんな程度なのね! 信じたわたしが馬鹿だったわ!」
「ハービィ……」オーランド・ゼムはジェシルを無視して話を続ける。「ムハンマイド君は、修理にまだ時間が掛かると言っているのだが、どうなのかね?」
「はい……」ハービィは言うと、動きが止まった。答えるための計算中のようだ。しばらくして、ぎぎぎと動き出す。「わがはいの計算では、この調子で行けば、今日中には終わりますです。ハニーを守るために、早く終わらせなければなりませんのです」
「ふふふ、良かったじゃない、ジェシル」ミュウミュウが小馬鹿にしたように笑う。「ハービィは、やっぱりあなたを守りたいって思っているようだわ」
「言うだけなら、誰でも出来るわ!」ジェシルはさらにむっとして、ハービィを見る。「まったく、もうっ!」
「……と、ハービィが言っているのだがねぇ、ムハンマイド君」オーランド・ゼムはムハンマイドを見て、にやりと笑う。「君の言う事と違っているようだが?」
「それはハービィの計算によるものだろう?」ムハンマイドが言う。「ハービィはアンドロイドだ。飲まず食わず休まずで、ぶっ通しの作業が出来る。それを前提にした計算だ。だが、ボクは生身だ。あんたよりは充分若いがね。それでも生身だ。飲んだり食ったり休んだりしなければ、からだが持たない」
「ねえ、あなた」ミュウミュウがオーランド・ゼムに言う。「ハービィって優秀なアンドロイドなんでしょ? だったら、こんなボクちゃんなんか放っておいて、修理をハービィにさせれば良いじゃない?」
「それが出来れば良いのだがねぇ……」オーランド・ゼムは苦笑する。「彼は基本的のサポート用として作られているのだよ。手伝いは最高なのだが、自分からは出来ないのだよ」
「じゃ、、実際の作業はボクちゃんがやらないとダメって事?」ミュウミュウは不満気に頬を膨らませる。「何よ! 役立たずなアンドロイドね!」
「そう言うな、ミュウミュウ。彼とは長年の友なのだよ」
「そうなの……」ミュウミュウは言うと、意地悪そうな表情に変わる。「じゃあ、わたしとハービィと、どっちが大切なの? もちろん、わたしよね?」
「そうだよ、もちろんだ」オーランド・ゼムはうなずく。「君は、わたしの後継者なのだからね」
「ははは!」ジェシルが笑う。「結局、あなたたちの間には愛情なんて無いよね! 利用し利用されるだけの間柄じゃない! 悪党らしいわね! そして、最後には殺し合えば良いんだわ!」
「うるさいわね!」ミュウミュウはジェシルを睨む。「本当、撃ち殺してやろうかしら!」
「そんな事をしたら、ムハンマイドは言う事を聞かないわよ?」
「あんなボクちゃんなんか……」ミュウミュウは銃を撃った。熱線はムハンマイドの足元に当たった。ムハンマイドはその場に座り込んでしまった。「……ふふふ、見たでしょう? 銃で脅せば素直になるものよ」
「……いや、もう大丈夫だ!」ムハンマイドは立ち上がる。その表情は決然としてる。「驚いただけさ。……ボクだって、親父を見て育ったんだ。多少の修羅場には慣れている。それに、ボクが居なければ宇宙船は動かない。ジェシルに何かをしても同様だ」
「ミュウミュウ、君はムハンマイド君に流れる父上の血をたぎらせてしまったようだね」オーランド・ゼムが言う。「あの物言いは、頑固で言い出したら後に引かない父上そっくりだ。仕方がない、任せるとしよう。もちろん、監視はつけさせてもらうよ」
つづく
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