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大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ  拾四

2008年09月07日 | オチラ 対 モヘラ(全27話完結)
 湧き上がったものは、身を横たえた羽田空港全体を覆いつくし、新たな繭玉を作り、風に乗って流れた一部は高層ビルや東京タワーなどに付着した。付着したそれは早速採取され、分析された。その結果、かつてニューヨークを包んだ繭玉と同じ成分である事が分かった。
 一部報道機関は、これを聖書に記載させている神からの賜りものに喩えて「マナ」と呼んだ。キリスト教関係者、及び団体から多数の抗議がなされたが、「マナは日本に降り注ぐ」「マナは日本を浄化する」などと、浮かれたような記事を報じ続け、撤回しようとはしなかった。また、連日報道がなされる各国のメディアも「マナ」を用いたため、モヘラから発せられる白いものを「マナ」と呼ぶ事が、世界の共通認識となった。
 マナは羽田空港を覆った新たな繭玉から日に何度も湧き上がり、繭玉をさらに巨大にし、一部はさらに都心に流れ、日に日に白く覆われるビルが増えて行った。マナが付着した箇所は雑菌が極端に減っていた。
 マナの保持管理は、取り合えず政府の管轄とされたが、国会議事堂外壁からマナを剥がし、帰省先への土産にしようとした宮部敏江衆議院議員が警邏中の警官に逮捕されると言う事態は、マスコミの一斉批判を浴び、マナに関する法整備を促した。
 与党は「マナに関する臨時法案」を提出した。その中の一項、「マナは研究のためには供与する」が「海外の研究者も含む」との見解を示したため、野党は「国益を損なう」と反対したが、数で押し切り成立させた。
 この法案により、付着したマナは海外に供与され、研究開発が国際間で競われる事となった。
 マナは日々定期的に湧き上がり、繭玉を巨大化し続けた。都心へ流れて来るマナも多くなった。
 東京全体が白っぽく見え始めた頃、巨大な繭玉に、突然大きな亀裂が走った。
 繭玉は崩れ、中から巨大な薄黄色の蛾のような生物が現れた。モヘラが成虫となったのだ。
 モヘラは金属的な声を響かせながら一声啼くと、薄黄色の羽根を羽ばたかせ、羽田空港から飛び去って行った。

次回「大怪獣オチラ対宇宙怪獣モヘラ 拾伍」を待て。



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