お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

裏シャーロック・ホームズ その3

2007年11月16日 | 裏ホームズ(一話完結連載中)
「ホームズ! これはなんと言う猟奇的な事件なんだ!」

 私は読んでいた朝刊をホームズに渡した。ホームズはざっと目を通し、鼻で笑い

ながら返してよこした。

「若い女性が深夜にナイフらしき凶器で刺殺されたぐらいじゃ、君には“猟奇的”

でも、僕にはとてもそうとは言えないな」

「じゃあ、聞くが」私はホームズの態度に、いささかむっとして言った。「どんな

のが君にとっては“猟奇的”なんだい?」

「そうだな・・・」ホームズはゆっくりと話し始めた。「どこかの狭い路地の奥で

若い娘が、顔は眠るが如く、そして衣類は肌も露わにズタズタにされ、しかも腹は

ナイフで引き裂かれ、滑らかな肌と対照的などろどろしたはらわたを無残に引きず

り出され、あたりは血の海だ。ついでにその血で路地の壁に何か文字でも書かれて

いれば、言う事なしに“猟奇的”だな」

 ホームズの息が少し荒くなり、目に恍惚とした光が宿っていた。

「そうか・・・ それが君の好みか・・・」

 私はメスをしのばせたジャケットの胸ポケットをそっと叩き、今夜こそはと心に

誓った。




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