お話

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コーイチ物語 2 「秘密の消しゴム」 16

2008年09月16日 | コーイチ物語 2(全161話完結)
「で、今度の会議はいつにしようか?」
 谷畑は受付前のロビーまで見送りに来て、洋子に言った。
「え?」洋子は少し驚いたような顔をした。「会議って・・・今終わったばかりじゃないですか?」
「そうなんだけど、ボクとしては、一日も早く次の会議を行いたい気分なんだ」言いながら、谷畑は洋子に近寄って来た。「もちろん、アフター会議も含めて、ね?」
 谷畑は洋子にウィンクして見せた。・・・ほう、随分と積極的だな。僕にはとても真似できないけど。コーイチは苦笑しながら谷畑を見ていた。
「そうはおっしゃいますけど、社へ戻って報告し、そして次回の段取りを決めなければ、会議はできません」
 洋子は言いながら少しずつ後退りし、コーイチに寄り添った。
「じゃ、今日報告して段取りつけて、明日にでも会議ってのはどう?」
 谷畑はにこにこしながら、さらに洋子に近寄る。洋子はさらに後退り、コーイチの傍らにぴたりと寄り添う。
「それは、約束できません。・・・それに、今日会ったばかりなのに、ちょっと馴れ馴れしすぎませんか? そう思いますよね、コーイチさん」
「ええっ?」
 コーイチは驚いた声を出した。・・・また、僕を巻き込もうとしている。困ったものだなぁ。
「そう思いますか、コーイチさん?」谷畑は必死な顔をコーイチに向けた。「ボクは初対面でも、気に入る人は気に入るんです。まして、こんなに素敵な女性なら・・・」
「やめて下さい」洋子が困惑した表情になった。「素敵な女性だなんて、からかわないで下さい!」
「だって、本当の事なんだ!」谷畑はさらに畳み掛けた。「ボクは、芳川さん、あなたに何か運命的なものを感じているんだ!」
「そんな、一方的におっしゃられても・・・」
「まあまあまあまあ・・・」コーイチは二人の間に割って入った。・・・やっぱりこんな役回りになるんだよなぁ。何か運命的なものってのは、僕が感じているよ・・・ 「すぐに次回があるかどうかは分からないけれど、必ず次回はある。二人ともこの件の担当なんだから、必ず顔を合わせる。・・・谷畑君、明日を信じて待つもの大切な事だよ。『漢方は煮て待て』とか『泡立つコンニャクはライムが少ない』とも言うだろう?」
「そうか、そうですね!」谷畑は満面の笑顔で答えた。「明日を信じて、幾らでも待ちます!」
「じゃ、そう言う事で、谷畑さん」洋子は言いながらコーイチの腕をつかみ、歩き出した。「また、お会いしましょう」
 自動ドアが開き、コーイチは洋子に引っ張られるようにして外に出た。コーイチが振り返ると、谷畑がにこにこしながら手を振っていた。自動ドアが閉まった。
「・・・もう、コーイチさん!」洋子はこわい顔でコーイチをにらんだ。「コーイチさんが変な事を吹き込むから、谷畑さん、本気っぽくなっちゃったじゃないですか」
 ・・・なんで僕が怒られるんだ? コーイチは困った顔をした。
「じゃあさ、芳川さんは谷畑君が気に入らないのかい?」
「そうじゃなくて、あんなに思った事をはっきり言う人って初めてなので、戸惑っているんです」
「そうか、戸惑いか・・・」コーイチは、なぜか一安心をした。「気に入らないって訳じゃないんだ」
「でも、わたし・・・」洋子はコーイチを見て言った。「もっと気に入った人がいるんです」

       つづく

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