お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

追加メニュー 『小噺 敬老の日』

2008年09月15日 | Weblog
「おばあちゃん、今日は敬老の日だよ。これからも元気で、長生きしてね」
 孫が言う。
「ああ~っ? なんか言ったかい?」
 おばあちゃんは補聴器をいじくりまわしながら、大きな声で言う。
「えっ? おばあちゃん、なんか言った?」
 孫も補聴器をいじくりまわしながら、大きな声で言う。
 孫八十六歳、祖母百三十七歳――少子高齢化の進んだ近未来の敬老の日。


「おじいちゃん、今日は、敬老の日」
「ああ、そうかい、そうだったかい」
「ずっと元気でいてね」
「うんうん、ありがとうなぁ」
「おじいちゃん、今日は、敬老の日」
「ああ、そうかい、そうだったかい・・・」
「ずっと元気でいてね」
「うんうん、ありがとうなぁ・・・ やれやれ、インコに教えてみれば(「おじいちゃん、今日は、敬老の日」)、少しは良い気分になれるかと思ったが(「ずっと元気でいてね」)、虚しいだけだ・・・」
 四畳半、溜め息一つ――独居老人の敬老の日。


「おじい様たち、おばあ様たち。末永う、あらっしゃいませ」
 厳かな口調で、何体もの包帯巻きのミイラの前で、祝いを述べる若きファラオ――古代エジプトの敬老の日(んなもの無いか・・・)。


web拍手を送る



にほんブログ村 小説ブログへ


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 妖魔始末人 朧 妖介  21 | トップ | コーイチ物語 2 「秘密の... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事