「岡島君がケガしたら、どうするつもりなのよ!」
川村静世が言って、逸子を睨みつけた。
「なによ。こんなんで転ぶなんて、さっきの本人の言葉じゃないけど『日頃どんな生活をしているんだ。基礎がなってないんだよ』ってところかしら」
逸子も静世をにらみつけた。
「何言ってんのよ。岡島君はね、繊細で傷つきやすいのよ!」
「誰がそんな事言ってるのよ?」
「岡島君自身よ!」
「大の男が、繊細で傷つきやすいなんて自己申告すると思うのぉ? 単なる甘ったれじゃない」
「岡島君はね、私たちが守ってあげなくちゃいけないのよ」
静世が言うと、その友人の一団も「そうだ、そうだ」と相槌を打った。逸子は右人差し指を立て、左右に振り、抗議を示した。
「守ってあげなきゃあ? そんなに過保護にしてどうするのよ。繊細? 傷つきやすい? そんな人が頼まれもしないのにステージに上がったりしないわ。本当にそうなら、頼まれたってステージに上がらないわよ!」
「そうじゃないわ。課長さんをお祝いしたい気持ちが抑えきれなくて、自分を苦しい状況に追い込むことになっても、あえてステージに上がったのよ。そんな事も分からないわけ?」
「分かってないのはそっちよ。お祝いのはずなのに、何? あの『愛を愛を、ボクの投げた愛を』って、愛って投げるものなの?」
「あのリリックは、岡島君のオリジナルな表現よ。より強く愛を届けようと言う意味なのよ」
「届けられても、欲しくない人には迷惑なだけじゃない。それに、話だって自分の事ばかりじゃない。どこの世界に、お祝いの席で自分の自慢話をダラダラとやる人がいるのよ」
「自慢じゃないわ。真実を語っているのよ」
「あなた…… 本気で信じてるの?」
「岡島君が言うんだもん、当然よ!」
静世が言った。逸子と京子は互いに呆れた顔で見合った。
「それに、営業四課のお荷物のコーイチのためにいつも心を砕いてるって、さっき言ってたわ。とっても優しい人なのよ」
「あら、そうなの? 父の話じゃ、面倒な事はコーイチさん任せで、功績は自分の物にするって言ってたわ。それだけじゃなくて、コーイチさんを悪く言うくせに、いつの間にかそっくり真似してるんだって」
「なあんだ、お荷物はその人の方じゃないの」
京子が言って、岡島の方へ一歩踏み出した。静世の友人団が、岡島の前に立ち並んだ。
「さらに、以前言っていた事を、何の前触れも説明もなく変えてしまうんですって。そして、以前の事は無かった事にしちゃうの。あなたの着ている紫色のワンピースも『紫色は高貴なボクにふさわしい』なんて言ってたから着てるんでしょうけど、今は全く言わないし、関心もないみたいよ」
「それはそれで良いじゃない。岡島君は日々進化発展しているのよ。だから、どんどん変わって行って当たり前よ」
「それは進化発展じゃなくて、首尾一貫が無いって事なの。責任を持つ能力が無いって事なの。ま、あなたたちに言っても『歌が耳に念仏』よね」
「あなたたちにしても、岡島君の愛が目の前に溢れているのに分からないんだから『豚の真珠、猫にこんばんわ』だわ」
静世とその一団が一歩前に出た。逸子と京子も一歩前に出た。二組はじいっとにらみ合っていた。まだまだ続くぞぉ…… コーイチは思った。
つづく
川村静世が言って、逸子を睨みつけた。
「なによ。こんなんで転ぶなんて、さっきの本人の言葉じゃないけど『日頃どんな生活をしているんだ。基礎がなってないんだよ』ってところかしら」
逸子も静世をにらみつけた。
「何言ってんのよ。岡島君はね、繊細で傷つきやすいのよ!」
「誰がそんな事言ってるのよ?」
「岡島君自身よ!」
「大の男が、繊細で傷つきやすいなんて自己申告すると思うのぉ? 単なる甘ったれじゃない」
「岡島君はね、私たちが守ってあげなくちゃいけないのよ」
静世が言うと、その友人の一団も「そうだ、そうだ」と相槌を打った。逸子は右人差し指を立て、左右に振り、抗議を示した。
「守ってあげなきゃあ? そんなに過保護にしてどうするのよ。繊細? 傷つきやすい? そんな人が頼まれもしないのにステージに上がったりしないわ。本当にそうなら、頼まれたってステージに上がらないわよ!」
「そうじゃないわ。課長さんをお祝いしたい気持ちが抑えきれなくて、自分を苦しい状況に追い込むことになっても、あえてステージに上がったのよ。そんな事も分からないわけ?」
「分かってないのはそっちよ。お祝いのはずなのに、何? あの『愛を愛を、ボクの投げた愛を』って、愛って投げるものなの?」
「あのリリックは、岡島君のオリジナルな表現よ。より強く愛を届けようと言う意味なのよ」
「届けられても、欲しくない人には迷惑なだけじゃない。それに、話だって自分の事ばかりじゃない。どこの世界に、お祝いの席で自分の自慢話をダラダラとやる人がいるのよ」
「自慢じゃないわ。真実を語っているのよ」
「あなた…… 本気で信じてるの?」
「岡島君が言うんだもん、当然よ!」
静世が言った。逸子と京子は互いに呆れた顔で見合った。
「それに、営業四課のお荷物のコーイチのためにいつも心を砕いてるって、さっき言ってたわ。とっても優しい人なのよ」
「あら、そうなの? 父の話じゃ、面倒な事はコーイチさん任せで、功績は自分の物にするって言ってたわ。それだけじゃなくて、コーイチさんを悪く言うくせに、いつの間にかそっくり真似してるんだって」
「なあんだ、お荷物はその人の方じゃないの」
京子が言って、岡島の方へ一歩踏み出した。静世の友人団が、岡島の前に立ち並んだ。
「さらに、以前言っていた事を、何の前触れも説明もなく変えてしまうんですって。そして、以前の事は無かった事にしちゃうの。あなたの着ている紫色のワンピースも『紫色は高貴なボクにふさわしい』なんて言ってたから着てるんでしょうけど、今は全く言わないし、関心もないみたいよ」
「それはそれで良いじゃない。岡島君は日々進化発展しているのよ。だから、どんどん変わって行って当たり前よ」
「それは進化発展じゃなくて、首尾一貫が無いって事なの。責任を持つ能力が無いって事なの。ま、あなたたちに言っても『歌が耳に念仏』よね」
「あなたたちにしても、岡島君の愛が目の前に溢れているのに分からないんだから『豚の真珠、猫にこんばんわ』だわ」
静世とその一団が一歩前に出た。逸子と京子も一歩前に出た。二組はじいっとにらみ合っていた。まだまだ続くぞぉ…… コーイチは思った。
つづく
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