知床エクスペディション

これは知床の海をカヤックで漕ぐ「知床エクスペディション」の日程など詳細を載せるブログです。ガイドは新谷暁生です。

知床日誌⑫

2020-06-17 18:34:41 | 日記

キトウシヌプリ・定山渓天狗岳・青春の山

知床日誌⑫

日誌11では壊れたカヤックの修理について書いたが、写真を見ると私も壊れかけている。これはもう直らない。私の後ろで四股を踏んでいるのは三浦豪太だ。彼はアンチエイジング研究の日本の第一人者であり
その研究で医学博士の学位を取った。この写真は昨年(2019年)11才の息子、雄豪と一緒に知床を回った時のものだ。自然児だった雄太もすっかりやさしい良い父親になった。

凪の良い時は漕ぎながら他愛のないことを色々考える。カヤックは考える時間がある。私は漕ぎながらその日の上陸地や晩飯のことを考え、陸地や海を見渡す。考えに集中して眠ってしまい、舳を岩にあてることも良くある。
ともかくカヤックには考える時間が多くある。太古の人たちは夢想する時間を持つことで文化を築いたのかもしれない。生きることに精一杯で考える時間がなければ文化は生まれない。同じ海洋狩猟民でもアリュートはすぐれた狩猟文化を築き、ウナンガンはパタゴニアの迷路のような水路でカラス貝を食べ続け、文化が育たぬままやがて滅びた。思考するゆとりがアリュート文化を生んだ。

私は若いころヒマラヤでヤクを飼うチベット人の家族と暮らし現実を知った。漢民族の膨張と圧政だ。その考えと見方は今も変わらない。それを他人事として放置した結果、現代は明らかに誤った方向に進んでいる。何が正しいのかはわからないが自由な考えを封じられた世界は少なくとも私には良いとは思えない。漢民族にも賢人は居ただろうが、現代の中国の賢人は過去の皇帝と同じく暴君としか思えない。たった3000人の幹部が16億を支配し、そのうちの2億に世界は投資する。残りの14億が顧みられることはない。

話が迷路に迷い込んでしまった。私たちはささやかな幸せを求めて日々を生きている。そして制約の中のわずかな自由に満足している。山を登り海を自由に旅できる世界はそれなりに良い社会だ。しかし長くは続かない。
人は繁栄しやがて衰退する。自由に海を漕げるのはありがたいことだ。

新谷暁生


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