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Sliding Cafeマスターのブログ

ヤマハ697Z

今回は久々に楽器に関するマニアックかつピンポイントな話題。
トロンボーン、楽器にあまり興味のない方には申し訳ないです。。。

前回投稿記事のコメントで697Zに関するご質問がありましたので、ヤマハ697Zについて少し詳しく説明してみたいと思います。
またせっかくの機会なので、楽器に対する僕なりの考え方についても少々。

現在使用している697Zは、元々普通のラッカー仕上げだった楽器をベル側金メッキ、スライド側銀メッキに再加工したものです。こうする事により、金の密度の濃い華やかな音色と銀の柔らかく豊かな音色が程よくミックスされた音色になりました。楽器全体を金メッキにしてしまうと、かなり強い抵抗感が出てしまいバテやすくなるし、全て銀メッキにしてしまうと音色が柔らかくなり過ぎてしまいます。ラッカーにしない理由は、単純に697Z以前も金メッキ仕上げの楽器を吹いている期間が長かったため、金メッキの音色と吹奏感に身体がすっかり馴染んでしまったというのが大きいと思います。

この697Zの金、銀メッキ加工にはもう1本697Zを買ってもお釣りが出るくらいの費用がかかったのですが、果たしてその投資に見合うだけの効果があるのかといえば、正直申しまして?の部分は大きいと思います。つまり、あくまでも趣味で演奏を楽しまれている方が高額の投資をされてこのような加工をされる事はあまりおすすめしません。その金額でもう1本楽器を買われた方が良いかもしれません。普通に使用する分には通常のラッカー仕上げで十分かと思います。金、銀メッキに変更した事による効果はそれなりにあるにはありますが、いろいろな部分を突き詰めた結果といいいますか、少しでも音質向上につながる要素があるのならば、とりあえず何でも試してみたくなる自分の性分によるところでしょうか。

で、実はこの697Zは5年くらい前に購入してしばらく使っていたのですが、いろいろ思うところあり、もう1本今度はサテンゴールド仕上げの697Zを注文しました。

存在感ありすぎるゴージャスな仕上げとなりましたが、音色の方も倍音の響きがもの凄くて、極細管でありながらまるで太管のような太い音になりました。で、しばらくとても気に入って使っていたのですが、音は太くて素晴らしいのだけど、吹いているうちに何か697Z本来の良さが犠牲になっている部分があるよなぁ~と感じてきてしまい、結局手放してしまいました。音が太くなるという事は音の輪郭がぼやける事にもつながるようで、楽器全体をサテン加工してしまうと、金管楽器ならではの華やかなキラキラ成分も失われてしまうようです。これがトランペットなら良い具合にキラキラ成分が消えて落ち着いたダークで味わい深い音色になるのですが、トロンボーンの場合は音域が低いのでダークになり過ぎて、音色自体もくすみがちになってしまうようです。トロンボーンにサテン加工するのなら、ベルの外側だけにした方が良いかもしれませんね。

そんな経緯でサテンゴールドを手放した後は1台目の697Zには戻らず、なぜかラッカー仕上げのシャイアーズが気に入ってしまい、2年くらい使う事に・・・。でも、1台目697Zの更に前にはベル金、スライド銀メッキ仕上げのシャイアーズを使っていたという、なんだか自分でも訳の分からん行動。おそらくこの時期は演奏スタイル、音楽指向性、楽器選び等全てにおいて迷いまくっていたのだなぁ。。。

ようやくこの2年間は697Zに定着。今まで変えた楽器はこれで20本目くらいでしょうか。で、さんざん今までいろいろな楽器を試してみて最近たどりつた結論。「楽器なんて何でもいいのである!」半ば極論的でもありますが、普通にスライドが動いて機能的に問題なければ何を吹いても出て来る音色に大差はない。結局、どんなに楽器を変えても奏者自身の音しかしないのですね(もちろん楽器によって、明るい、暗い、太い等の音色傾向の差は出ますが、音色そのものの本質的な核の部分は変わらない)。最初使いにくいと感じる楽器でも半年も使っていればほとんど違和感はなくなる訳ですし・・・。

となると、2万円程度の格安楽器でも十分という事になるのですが(音的にはほとんど問題無いと思われます)、コレが自分が調子を崩した時、原因は自分自身にあるのはわかっていながら、ついつい楽器のせいにしたくなるもので、ましてや使っている楽器が格安楽器となれば格好の標的にしてしまう訳です。自分の道具(楽器)を疑いだしたら、もうおしまい。どつぼにはまります。最近の格安楽器は高級楽器と比べてもほとんど遜色のないクオリティーですが、実はこういった部分に落とし穴があります。絶対に楽器のせいにしないという確信があれば良いんですけどね。

結局はどんな高級楽器(カスタマイズした楽器でさえ)でも100パーセント満足するという事は無いわけで、おそらく今後も100パーセント満足する楽器なんてのは無いと思うので、もうあまり道具(楽器)にこだわる事は止めにしようという考えに至りました。今そこにあるものを使えば良い。

一番大切なのは自分自身そして音楽そのもの。

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コメント一覧

マスター
マウスピース
タイヤマンさん

僕も7~8年くらい金メッキのマウスピースを好んで使っていました。楽器本体の仕上げが銀メッキと金メッキとでは音色と吹奏感に大きな違いが出ますが、マウスピースでは銀と金でそれほどの差はないと思います。確かに口当たりも金の方が柔らかく感じますが、本当に微妙な感覚の差程度です。

金メッキだと銀のように黒く変色しないので、僕の場合は手入れが楽というメリットで金メッキにしていました。

マウスピースのメッキによる差は楽器本体ほどには出ないとはいえ、確かに違いはあるにはあります。僕個人的な印象としては、金メッキのマウスピースは響きがタイトになり、音の輪郭がはっきりする感じがあります。銀メッキは響きが広がる感じでしょうか。僕は、銀メッキの方が音は柔らかく感じます。最近はタイトな音色よりも響きの豊かな柔らかい音色が好みなので、また銀メッキのマウスピースを使っています。
タイヤマン
最近のマウスピース
最近、ライブや演奏会などでよくゴールドのマウスピースを使用される方が増えたような気がします。人によれば疲れにくいとか、やわらかい音色になると聞いたのですが、実際どんな感じですか?
マスター
ヤマハ
タイヤマンさん
コメントどうもありがとうございます。
最近のヤマハは本当に素晴らしいですよね。

895ENは少し吹いた事があります。全て真鍮製だけあって、とても柔らかい音色ですね。895ENは昔の日管(ニッカン)時代の楽器の感じに近いように思いました。日管のトロンボーンも全て真鍮製の素晴らしい楽器でした。
タイヤマン
わたしは・・・
私は昨年から895ENを使用しています。もともと、バックでライブやコンボを楽しんでました。最近のヤマハはいいですね~しかし、マニアックなボーンですね。
マスター
acarranger

697Zは安いし(16万円前後)、品質のばらつきが無いところなどはさすがヤマハ。スライドの気密性の高さは本当に凄いと思うよ。

コンパクトなジャズトロンボーンスタイルにはうってつけの楽器です。
acarranger
僕も697Zに乗り換えようかなぁ・・
(KING 2BGの音は好きなんですが、キツいと感じます)

初めからマスター先輩の助言に従って697Zにしとけばよかった(^ ^;)
「美しくコンパクトに」は、僕のテーマでもあります。
マスター
一昨年にAndy Martinの生演奏を聴いた事があります。マイクを通さない生音を聴きましたが、音量を抑えた柔らかく美しい音で、とてもスムースな演奏でした。

Andy Martinが697Zを使い出したのは、おそらく去年あたりからでしょうね。それまではキング2Bを使われてましたから。
johannes
がんばります。
そうなのです。どうしてもいざとなると派手に吹こうとする傾向があったもので・・・

それと最近出た「JAZZHORN」のインタビューで読んだのですが、今Andy Martinがメイン楽器で吹いてるそうで、納得できる気がしてます。

スライドのことですが、自分の楽器が「ライトウエイトではない」ニッケルスライドなのですが中音以上を低いポジションで鳴らすのが非常に苦しかったところ
一挙に解決でした。

ますますほしくなってきたところですが「買う」となればひとヒネリしてしまいそうな・・その誘惑にまけず当分は奏法改善を優先で頑張ります。

それと、実は最初吹いたのが知り合いが別注でゴールドブラスのベルにした697Zだったのですが、圧倒的にイエローがいいですね!(読んでないことを祈りつつ・・)
マスター
johannesさん

欧米(特にアメリカ)のジャズ・トロンボーン奏者の間では、美しい音でコンパクトに吹くスタイルが主流のようです。もし機会があれば生音を聴かれるととても勉強になりますよ。

ニッケルスライドは音の輪郭がはっきりして良いのですが、響きの面ではやはり真鍮製の方が良いですね。

やはり697Zはいろいろな面で工夫を施されていて、本当に完成度の高い素晴らしい楽器だと思います。
johannes
非常に詳しい説明ありがとうございます!
知り合いに不幸があったり急な出張があったりで
お礼の書き込みが遅くなり非常に申し訳ありません。
大変詳しく書いていただき何回も読ませていただきました。

ゴールドプレートのこと、シルバープレートのこと、
サテンゴールドの場合と、音のイメージはつかめた気がします。
おしゃる通り値段的にも簡単に試してみることは出来ないことですが、確かに普通の仕上げで十分完成品の響きのある楽器であるとは思っています。

実は今まで「広がりのある音」というのを目指してきて、ここしばらく行き詰っていたのですが
「美しくコンパクトに吹く」というタイトルは非常に
タイムリーなお言葉であり、座右の銘として頂戴させていただく所存です。で、それを実現できる楽器だと
思っております。

「最終的に自分の音」というのも納得しつつもやはり
材質や管の太さによる違いはきっといつまでも試行をしてしまう気がします。

長くなるのですが今までの楽器がニッケルのスライドが多かったのですがイエローのスライドというもいいですね。

それとこの楽器の「デュアル・ボア」は
なんと内管の外径が同じで内径だけでデュアルにしてるのですね!
考えれば簡単な発想なのに今までになかった画期的なことで感動してしまいました。

長くなってしまってるので、引き続き読ませていただきまた質問ありましたら書き込みさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いします・

マスター
acarranger

ドラムのスティックもマウスピースも身体に最も近い道具なので、身体の一部分と同じような感覚になるくらいに、自分にしっくりくるものを選び、手(唇)に馴染ませる必要がありますよね。

だから、常に演奏精度を要求される本業の楽器においては、職人の道具的にひとつの道具(スティック、マウスピース)を長年使い続ける必要があると思います。
acarranger
僕もTpやFlh、Flute、Oboe・・節操なくあれこれやりますが、所詮は浮気に過ぎず、楽器本体、マウスピース(リード)とも「あるものでOK」です。
これがTbになると「2号さん」という感じ(どんな感じだ)なので、マウスピースは「今使ってるの(STORK custom T2)がダメになったらどうしよう・・」と悩むでしょうね。
(楽器本体はわりとなんでもいいw)

本業のドラムでも同じ感覚で、セット自体は5~6年周期で乗り換えたりしてますが、スティックとブラシだけは変えませんねぇ。

「楽器本体が何であれ、結局出るのは自分の音」というのは、激しく同意です。
楽器なんて所詮は道具に過ぎませんからね。
(だからこそプロは道具の質やコンディションにこだわる)
マスター
まーさん

なるほど・・・。
僕もトロンボーンとトランペット、トロンボーンとチューバとか極端にサイズが違うマウスピースには違和感は無いのですが、トロンボーンの0.01ミリ程度の差やカップ形状の微妙な違いがかなり演奏精度に影響してしまいます。
まーさん
マスター

おそらく私がアマのTp吹きで特殊管を多用するタイプだからだと思います。
マウスピースを統一して吹く人もいますが、官により変えてしまいます。

また、CorやFlhの持ち替えもあるのでいつの間にか音が出てコントロールできれば十分となったようです。
マスター
マウスピース
まーさん

僕の場合は全くその逆で、マウスピースだけは「この1本でないとダメ」という感じです。同じモデルでも個体差があるので、微妙な口当たりの差だけでも演奏に影響してしまいます。だからマウスピースだけは一度気に入ったら出来るだけ変えないようにしています。

楽器本体よりもマウスピースの方が音色、演奏に対する影響が大きいように思います。
まーさん
こだわり
楽器ではなく、このごろマウスピースが何でもよくなってきました。
とりあえずあるやつでいいや、という感じです。
だめなやつはありますが、たいていのものはそのまま使えます。
たぶん楽器のほうもそれほどかわりないんだろうな、と思うこともありますが、そこまではいたっていません。
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