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Sliding Cafeマスターのブログ

マルチブラスのすすめ~その3

マルチブラスのすすめ~その3、今回は細管テナートロンボーンとバストロンボーンの持ち替えに関して。

ジャズ、スタジオ系トロンボーン奏者で最も頻度の高い、要求される事の多いのが、テナーとバスの持ち替えではないでしょうか。レコーディングでトロンボーン1人だけで呼ばれた場合に、曲によって通常のテナートロンボーンの音域とバストロンボーンでないと出せない低い音域両方を求められる場合もあるので、必然的にテナーとバス両方を吹かなければいけません。

ですが、細管テナーとバスでは、楽器の大きさ、マウスピースの大きさの違いは相当なものなので、両方の楽器をきちんと演奏できるまでには、何年ものトレーニング(修行)を積む必要があります。僕は幸い中学、高校時代はバストロンボーン担当でずっと低音域ばかり吹いていたので、低音域が鳴らないという事で苦労した経験はありませんが、大学に入ってからテナーに転向して1年位は高い音が出せずに非常に苦労しました。

プロとして演奏活動するなら絶対テナーしかない、という思いが強かったため、大学時代もプロとして仕事をするようになってからもずっと細管テナーだけを吹いていましたが、10年位前からまたバスも吹いてみたいと思うようになり、バストロンボーンの練習を再開しました。

が、何年もテナーばかり吹いたせいで唇自体が高音域用のセッティングに変わってしまったため、今度はバストロンボーンでの低音を確実にヒットさせる事が出来なくなってしまい、バスの練習再開後5年間位は実践の現場では全く使えませんでした。ようやくバストロンボーンらしい音が鳴らせるようになったのはここ数年の事でしょうか。

実際のレコーディングにおいては、テナーとバスの持ち替えを頻繁に行う事が多く、瞬時にアンブッシャーの違い、息の使い方の違いに対応する必要があります。そのため普段から、テナーとバスを頻繁に行き来して吹くようにして、極端な話、1小節位の休みでも持ち替えに対応出来るような練習をするようにしています。

とにかく身体にテナーとバスの感覚の差を瞬時に対応させるように覚え込ませるトレーニングが重要です。テナーとバスそれぞれの楽器をきちと正しい奏法でマスター出来た上で、毎日こういうトレーニングを積んでいれば、自然と身体の方で感覚を覚えてくれるので、テナーとバスの持ち替えによる違和感はほとんど無くなります。

テナーとバスを頻繁に持ち替える事で、唇を壊したり、調子を悪くするという事はまずありませんので、柔軟な発想でテナー、バス両方吹くようにすれば、より一層トロンボーン演奏の楽しさ、魅力を再認識出来ると思います。


楽器ですが、バストロンボーンは現在ヤマハYBL622(ダグラス・ヨーモデル)をメインで使用(マウスピースもダグラス・ヨーモデル)。サブとしてシャイアーズを使用しています。

細管、太管ともテナーはシャイアーズなので、バスもシャイアーズの方が統一感はあるのですが、シャイアーズのバスは吹きこなすのにとても体力が必要な楽器である事と(楽器としては素晴らしいと思いますが)、バキバキのパワフル過ぎるサウンドが僕の好みに少し合わないので、ヤマハを使っています。ヤマハのダグラス・ヨーモデルは深く、甘い音色とコントロールも容易で本当に素晴らしい楽器です。


是非、多くのトロンボーン奏者にテナーとバスの持ち替えにチャレンジしていただきたいと思います。トロンボーン演奏の世界観が広がります。


マルチブラスのすすめ、次回はテナートロンボーンとアルトトロンボーンの持ち替えについての話題です。

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