鼻から猫の毛

札幌から東京にやって来たババア一人、猫一匹

映画のワンシーンのような【永訣の朝】

2016-02-26 23:47:46 | 
こんばんわ。

ワカサギのハラワタ取ってて
ぐったりしたsolo_pinです。
何の反動なのか、パンからスパゲティまで
バクバク食べておりますよ。
こんな日はお酒は飲まないっす。

さて宮沢賢治という作家さんは。
彼の作品はそんなに読まないのですが。
ともすれば全然読まないのですが。
(銀河鉄道の夜だってアニメ止まりですよ)カンパネルラー!
で。
ある日ある時、多分皆様は既にご存知の作品を読みました。

「永訣の朝」。

妹の言葉が反芻しているところが
まるで映画のワンシーンのようでした。

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けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)←雨雪(みぞれ)を取って来て下さいな
うすあかくいっさう陰惨いんさんな雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜<じゅんさい>のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀たうわんに
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがったてっぽうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛<さうえん>いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる


ああとし子
死ぬといふいまごろになって
わたくしをいっしゃうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまっすぐにすすんでいくから
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
…ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまってゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまっしろな二相系にさうけいをたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらっていかう
わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ
みなれたちゃわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)←私は私で 一人で逝きます



ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびゃうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまっしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
   ※今度生まれて来る時は自分の為じゃなくて人の為に苦労したい


おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ



方言のところは矢印とか※印にしたけれど
これもまた検索して貼り付けたので、判らんぞ。

美しい作品だなあと思いました。
やるな、ハゲちゃびん。(誰がハゲちゃびんだ)
今さらながら感心し、紹介したくなった次第です。