『存在』
切れそうで
切れない
消えそうで
消えない
忘れそうで
忘れない
例えばそう
あなた
あなた一人
だったとしても
求め続けて
くれる限り
私はそこに
生き続けます
実体無くとも
そこに存在するのです
たまゆらの
風にも似て
※2/9書下ろし。
『順子〈うんつ〉~昭和の幻影~』
いつからからだろう
クラスメトから
『うんつ』と呼ばれ出し
まんざらでもなさそうな君
スレンダーで背も高く
バレー部のキャプテン
それだけで十分輝いて
眩しすぎたのに
こちらの輪の会話に
笑顔で割り込み
深夜ラジオの下ネタ話を置き捨てる
いたずらっぽい顔をして
君はいつだって
他の誰より少しだけ大人だった
偶然に都会で会って
偶然に地元へと帰る列車
とりとめもない会話
過ぎた懐かしき時間
互いに口にはしない
蒼く褪せだした想い
この時の僕らは
次に地元の役所でまた出会い
互いに成り得た役職や
時を刻んだ外見もまだ知らない
今はもう令和
今の僕を見せられない
なんだかふと思い出しただけ
そう思い出しただけ
※2/7に書下ろしたもの。