吸音材を入れない状態で、ユニットと開口部でのNear Field特性を測定をしてみました。
〈ユニットと開口部でのNear Field特性; 吸音材無し〉
ユニットのNear Field特性では、ホーンの共鳴周波数に対応したディップが、約73, 170, 270Hzに見られました。(インピーダンスの谷に対応)
また、開口部でのNear Field特性では、これまで見られた基音、2倍音、4倍音に相当する73Hz、180Hz、及び10dBを超える 290Hzでの共鳴ピークの他に、更に多数の非常に強い高次ピークが見られます。これらは全て、基本音の偶数倍の周波数でした。なお、1260-1800Hzに見られる一連の応答の主体は、音道内部で発生した定在波によるものと推察しています。
ここで今回のバックロードホーンの共鳴挙動について考えてみます。
一端が開いた閉管(共鳴管)では、閉端が空気振動の節に開口部が腹になるので、基本波長は1/4λです。管の長さをLとすると、その周波数fは、f=344/4Lとなります。今回のホーン長は約121cmなので、閉管と仮定すれば、基音の周波数はf=71Hzで、今回のバックロードホーンの基音73Hzとほぼ一致しています。
一方、基音の倍音である、2倍音、4倍音などの偶数次の周波数は、344/4L*(2n)、n=1, 2, 3•••で、両端が開いた開管の振動モードです。スロート部と開口部は空気振動の自由端なので、振動の腹になるのでしょう。
このように、今回のバックロードホーンでは、基音は、一端が閉じた閉管(共鳴管)の周波数で、その倍音は、両端が開いた開管と同じ偶数倍の周波数になっています。倍音が、基音の奇数倍である共鳴管とは全く違う振動様式です。
吸音材を配置しない状態で、馴染みのモーツァルトのピアノ協奏曲などを聴いてみると、周波数特性から受ける荒々しいイメージとは異なり、マイルドでワイドレンジな印象を受けました。男性、女性の声もクリアに聞こえます。ただ、300Hz付近に代表される強い共鳴ピークのホーン的な響が気になりました。
今回のバックロードホーンの設計では、クロスオーバー周波数を188Hzに設計しましたが、この周波数を超えて発生する高次共鳴ピークは音質の妨げになるので出来るだけ抑制したいところです。
〈続く〉