今、私の手元に1枚の年賀状がある。
差出人は函樽線蘭越駅・新見温泉。
受取人は岩内町ライ電 工藤長蔵。
消印は大正15年1月1日。
少々解説が必要だ。
函樽線というのは函館~小樽間に明治30年代に開通した私鉄・北海道鉄道の名称。
現在のJR函館本線のことだ。
新見温泉は明治45年に創業し、一旦閉鎖後平成29年に再開業した老舗温泉。
一方、受取人の方は、道南の岩内町に海岸伝いに入るルートは、現在は国道229号で簡単に通れるが、
もともとは江戸時代から峠越えの旧街道があった。
弘化元年(1844)に開湯の古い朝日温泉がそこで営業しており、幕末の探検家・
松浦武四郎も通過したのは確実。
開拓使~北海道庁もその交通の要所を認識しており、明治40年から昭和16年まで雷電駅逓として
認可を与えた。
この駅逓の二代目取扱人が工藤長蔵なのである。
朝日温泉は、旧街道がただの山道として通行不能になったのちも山の湯として営業を続けていた。
その頃のことは水上勉の小説、「飢餓海峡」に詳述されている。
しかし近年、土砂災害により閉鎖のやむなきとなり、いまだに再開されていない。
新見温泉の経営者が、同じような環境にある山中の雷電温泉(朝日温泉)の取扱人に年賀状を出すのは
自然な行為だが、その90年も前の証拠が私の手元にあるとは、不思議な気持ちだ。
北海道交通史の貴重な史料を、わたくしするのは本意ではないので、ネットで売ることにした。
探してみてください。
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