西行歳暮和歌七首
題しらず
567
山ざくら 思ひよそへて ながむれば 木ごとの花は ゆきまさりけり
仁和寺の御室にて、山家閑居 見雪といふことをよませ給ひけるに
568
降りつもる 雪を友にて 春までは 日を送るべき み山辺の里
山家冬深
569
訪ふ人は 初雪をこそ 分け来しか 路とぢてけり み山辺の里
570
年のうちは 訪ふ人さらに あらじかし 雪も山路も 深き住処を
世を遁れて、鞍馬の奥に侍りけるに、筧氷りて、水もうで来ざりけり。春になるまでかく侍るなりと申しけるを聞きて、よめる
571
わりなしや 氷る筧の水ゆゑに 思い捨ててし 春の待たるる
みちのくににて、年の暮れによめる
572
つねよりも 心細くぞ 思ほゆる 旅の空にて 年の暮れぬる
山家歳暮
573
あたらしき 柴の編戸を たてかえて 年のあくるを 待ちわたるかな
今年もこの拙いブログに訪れてくださった皆さん、どうか良き新年をお迎えくださいますよう。