風のいろ・・・

どんな色?

楽な生き方より・・・

2024年03月13日 | 羊の群

 

楽な生き方より、

戦うことを選びたいと。

 

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誰かが言った。

何も考えないということは、

人が望んだ安らぎという死の形だと。

それなら生きる形とは、

苦痛を避けるための快楽ではなく、

ラッセルの幸福論にある、

退屈の反対は興奮することだ。

人間は興奮するためには苦痛さえも喜ぶといったような、

病的な高揚ではないはずだ。

わからないから探すのだし、

あきらめないなら人は退屈などしない。

 

「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You

 

 

 

 

 

 


耳を澄ますだけでいい・・・

2024年02月15日 | 羊の群

 

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まず自分が何を選ぶのかってことが大切なんだ。

羊飼いは誰にでもいるよ。

眼を閉じて耳を澄ますだけでいいんだ。

後は待つだけさ。

そうすれば羊飼いが自分を呼ぶ声が聞こえるよ。

生きている意味のない人間なんてたったの一人もいないんだ。

どこかで、誰かと必ずつながっている。

人生はそれを見つける、宝探しをしているようなものだよ。

使命だなんて難しく考えるのは苦手なんだ」

 

「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You ❣

 

 

 

 

 

 

 

 

 


何が起きても・・・

2024年02月15日 | 羊の群

 

僕の心は地を走り、空を飛ぶ

太陽の昇る雲一つない朝の光、

雨の後に地の若草を照らせ

 

 

「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You !

 

 

 

 


ひどく偽善に思われどうにも腑に落ちない・・・

2023年12月27日 | 羊の群

 

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まり子には皆目見当もつかない。

考える内に段々腹が立ち、最後まで手前勝手な輝子に親としての無責任さを胸中で語る。

まり子の心は悲しみではなく、むしろ恨めしが大半を占めた。

輝子の着ていた白いワンピースは、居間に掛けられた額縁の油絵と同じだった。

唯一父親が描き残した若き日の輝子の肖像画だ。

輝子は生前毎日その絵ばかりを眺めていた。

いかにも懐かしむように虚ろな眼差しを向けていた。

まり子はそんな輝子を軽蔑していた。

母親としての最低ぼ役割さえ放棄し、病的なくらい無気力で冷たかった。

常に周囲の人間を無視するように殻に閉じ籠ってばかりいた。

結局一度も心を通わすことなく、輝子を好きにもなれらかった。

後悔に似た感傷はあっても母親を亡くした痛みはない。

十七歳の少女にはかえってそれが悲劇ではなかったか。

この家の人間模様はすでに崩壊していた。

なのに今更憔悴し、しょげかえる信宏が、ひどく偽善に思われどうにも腑に落ちない。

何かしっくりいかない割り切れないものがある。

輝子の死は、花嫁衣裳に身を包んだ花嫁のように、何故か幸せそうに見えた。

あんなに安らいだ顔は肖像画の中でしか見たことがないのだ。

それにしても自殺という人生の終わり方は、逃げ口以外のなにものでもなかった。

自分は捨てられたのだと改めて実感した。

残された人間のことなど何も考えない、最も卑劣なやり方だと、まり子はそう思った。

さしずめ、先のことを考えると気が重い。

家には兄と自分との二人きりになる。

この時点で良子の存在は頭の中にはなかったが、忍び寄る不気味な気配は感じていた。

 

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小説「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You ❣

 

 

 

 

 

 

 

 


人の思惑を超越して予測もなく・・・

2023年12月26日 | 羊の群

 

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時間にしたらほんの一瞬だった。

なのにその幸福感と充実感は、今まで味わったこともないくらい甘美に広がる。

それは涙が出そうなほどの喜びの回復だった。

信宏は急いで部屋に戻る。

自分の胸に手を置く。心臓が動いていた。

当たり前のことが嬉しかった。

自分は生きている、そういう実感だった。

血液は脈動し体中を巡っている。久しぶりの躍動感だ。

まり子が一瞬にして信宏を蘇生させた。

いいや、厳密に言えばそれはまり子自身ではなく、人を愛おしく思える気持ちが人を生かした。

それを信宏は知った。この気持ちこそが奇跡だった。

自分のような罪深く冷酷な人間にさえ、芽生えることのできる命を育む尊く純粋なもの。

それこそ生きるために最も必要な力なんだと思えた。

いや、体験を通しての実感だった。

信宏はこれを、愛などと陳腐な名で呼びたくなかった。

何故ならこの力は死と隣合わせに存在し、肉体の快楽とは遠く隔たっていたからだ。

何故なら元来自分の中にあったものではなく、突然心に現れ、人の思惑を超越して予測もなくやってきたからだ。

まるで天から与えられた魂の呼吸、やっと深く息ができたような感覚に似ている。

信宏はこの世に初めて生まれてきたような気さえしていた。

そして、それが錯覚と言うにはあまりにも瑞々しく新鮮だった。

この日以来、信宏の世界は色が塗られ輝き始めた。

しかしその六日後、怖ろしく信じ難い事件が起きた。

 

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「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You ❣