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アダチ分光器とは?(1)

2020-08-10 07:49:06 | エッセイ

 惑星の観測研究で知られている安達誠さんへ敬意を表して、少しご紹介したい。ただ、彼には全く断りを入れていないので、これで叱られて、絶交などということに発展するかも知れないが、その時はその時に考えよう。

 さて、彼は永らく教員生活を送った後、最近、リタイアしたかに聞いている。そんな歳である。その彼が学校へ移る前、京都市青少年科学センターに勤めていたことがあった。関係資料の中に、1975年にコダック社のパンクロの乾板を購入しようとした時の資料があるので、それから1980年頃までの間だったかと思うが、その頃、彼に作って貰った分光器の話である。

 その頃筆者は大阪市立電気科学館に勤め始めたところで、先輩の黒田武彦さんがしきりに研究活動を促すものだから、それなら恒星分光でもやってみようかと思っていた。東亜天文学会の集まりを電気科学館でやっていたこともあり、自然と安達さんやその他の天文家の方のお顔を拝見する機会があった。その頃、安達さんは京都から大阪に通学している大学生であった。一見、とても爽やか、朗らかなものだから、気軽に冗談や軽口をぶつけることができた。ぶつけることはできたが、外見から受ける印象とは全く違って、彼はこうしたことに容易に乗ってくることはなく、笑みの消えた生真面目な顔つきで応じてくる極めて真面目な青年であった。そのことは、彼の仕事人生を見ればわかるはずである。それはさておき、そんなものだから彼には信頼感を抱くことができた。その彼が卒業と同時だったかと思うが、京都の科学センターのスタッフに加わったのである。

 それからやや時間が経ってからである。30cm鏡を自作したという話が伝わってきた。器用だなとまず感心し、それには科学センターの設備を活用できたことも手伝っていたからだろうと思い、あるアイデアが浮かんだ。それは、その30cm鏡に分光器を作って載せたらどうか、という案だった。学生時代、同じサイズの30cm鏡+中分散分光器の実習を行っており、これだけあれば結構な仕事ができそうな感触をつかんでいたのである。望遠鏡を自作できるなら、分光器だってできるはずである。

 こうして、相当嫌がっていたと思うが、多少は興味を示してくれたのか、承諾してくれて製作が始まった。あれ!! 今になってどうなっていたかと思うが、材料費は誰が負担したのだろうか。光学素材は用意したが、それ以外にどうなっていたか、記憶がない。もしかすると、安達さんには相当どころか、ひどく迷惑をかけ、全く清算していないかも知れない。顔から火が出る思いである。安達さん、覚えていますか?

 数年かかったのではかろうか。仕事の合間を縫ってのことであるし、彼には彼のやりたいことがある。また、途中で科学センターから学校へと移り、完成した頃には教員生活に入っていたかと思う。時間がかかるのは当たり前だった。が、しかし、実に立派なものが完成した。上の写真をご覧戴きたい。自作30cm鏡に取りつけた中分散プリズム分光器である。右下に突き出ているスリット監視鏡の左に空いている穴にカメラレンズを差し込み、カメラをセットして形が整う。



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