第9波に突入した新型コロナの流行。その陰に隠れた後遺症患者は「適切な支援が受けられない」と訴えています。けん怠感、動悸、息切れ、記憶力の低下に苦しむ多くの患者。
CASE A
「手足が動かん」
「手足が動かんから、何もできん…しゃべるのも苦しいし…」 横浜市に住むAさん(40代)。コロナに感染した2022年7月以降、全身に力が入らず、一人で立ち上がることができなくなった。 教員として勤めていたが休職。2023年に入ってようやく車いすに乗れるようになり、夫の付き添いで病院に通えるようになった。医師 「だいたい1か月ぐらいですかね、その後、いかがですか?」コロナ後遺症の診断を受けたのは、感染から9か月後の2023年4月。それまで、複数の病院を転々としたが、不調の原因が分からず、心ない言葉を投げかけられたという。 Aさん 「コロナの後にこんな風な症状になる人はいないよ、聞いたことがないよと言われて、気持ち(の問題)じゃない?と言われて」 夫 「これはコロナ後遺症だよって認めてもらったことで、私はもう、その時から、だいぶ気持ちが楽になったんですよね。どういう病気なのか分からなかったというのと、あと治療方法とかも、自分で手探りで探しているような状態だったので…」やった後から、倦怠感がひどくて。半日寝ている感じです」「(治療を)やった後のほうが調子悪くなる?」
Aさん 「前回は(治療を)やった後、すごく良くて、今回は(治療を)やった後に悪くなる、というのが繰り返し来てます」 ■医師は「後遺症の患者だけが取り残されてしまう」 Aさんが受けたこの治療は、上咽頭擦過療法(じょういんとう・さっかりょうほう)と呼ばれるものだ。医師によると、患者の鼻や喉に、ウイルスの一部が残り続けることがある。残ったウイルスが鼻と喉の間にある上咽頭の炎症を起こし、後遺症の原因になっている可能性があるという。 殺菌作用のある液体に浸した綿棒を、上咽頭に擦りつけて出血させる。こうして溜まった老廃物を出して炎症を解消するのだが、激しい痛みを伴う。 Aさん 「すごく痛いので、我慢しようと思ったんですけど、やっぱり痛いですね。ただ、それをやらないと良くならないんだろうなと思うので」医師 「去年の第7波のときがピークで、月に50人ぐらい(の患者が来た)。すごく多かった。コロナ(後遺症)の人たちは、全身のけん怠感があり、疲れやすい。確かにみんな今、アフターコロナといったコロナ禍じゃないものを求めているけれど、(後遺症の)患者さんだけが取り残されてしまうので」 今も強いけん怠感に襲われるため、3歳になる息子の世話も家事も夫に任せきりになっているAさん。手に力が入らず、食器も軽いプラスチック製のものに変えた。 夫 「箸も持てなかったので」 Aさん 「とにかく軽いものしか使えなかったから、持てないんですよ」 行政に支援を求めたが… Aさん 「『コロナ後遺症としてのサービスはない』と言われ、受けられるサービスは本当に全くなかったです」 寝たきりの状態からは脱したものの、職場には戻れていない。このままの生活が続けば、住宅ローンを返済できなくなるため、引っ越しも考えている。 Aさん 「息子と遊びたい。公園で思いっきり遊びたいし、(保育園の)お迎えにも行きたい。今一番かわいい時期なので、色々なことをやってあげたい時期なのに、それが何もできなくて」 「日常生活で当たり前だったことを、当たり前にできるようになりたいという思いがあります」
CASE B
「学校に行ったら30秒でしんどく」→救急車で病院へのBさん。 中学時代はバスケットボールに打ち込む、活発な生徒だった。 しかし、中学2年生だった2022年1月、コロナに感染。その後、後遺症と疑われる多くの症状が現れた。 息切れや動悸、けん怠感が襲い、一人で立ち上がることすらできなくなった。 さらに頭に霧がかかる“ぼーっとする”ような感覚や、記憶力が低下する、いわゆる“ブレインフォグ”に苦しめられた。 Bさん 「(2022年)2月に一回学校に行ったら、30分もしないぐらいでまたしんどくなってしまって、救急車で病院まで行って…」 「人の名前が出てこなかったり、顔はわかるけど、あれ?みたいなのがあったり」 複数の病院を受診したが、けん怠感や記憶力低下がコロナと関係しているかどうか分からず、専門外来のある病院でようやく「コロナ後遺症」と診断された。「デルタ株のときは嗅覚・味覚障害といったにおいとか味が分からない、料理が美味しくない、作れないといった悩みが多かったのですが、オミクロン株になってからは減ってきて、反対に、けん怠感、疲れやすいとか、それに基づいた頭痛とか、睡眠障害、不眠症、こういった症状がぐっと増えてきた」 大塚教授によると、後遺症は人それぞれ症状が異なり、症状の重さも違うため、診断には時間がかかり、適切な治療になかなかたどり着けないという。 ■自転車で通学できるまでに 一方、言葉が出なくなることも Bさんがこの日、リハビリのため病院を訪れた。 課題は、一度記憶した図形を再現すること。後遺症で記憶力が低下した脳の働きを回復するためのものだ。この病院では、後遺症の患者すべてにこのリハビリが行われている。 最初はスムーズにペンが進んだが、次第に手が止まる。 Bさん 「もう覚えていないです」 しかし、リハビリを始めた時よりは、改善していた。 左は、2022年10月のもの、右が2023年5月のもの。大きな差がある。
言語聴覚士 「聞いたり見たりして、頭の中で処理をする力というのは、前に比べるとだいぶ良くなっていると思う」 後遺症に苦しんできたこの間。高校受験の際には中学の先生の支えがあった。 Bさん 「(勉強が)全然できなかったんです」 起き上がることができないBさんに、自宅を訪れた先生が床にノートを広げて勉強を教えてくれたという。 Bさん 「(先生が)すごく考えてくれて、受験には間に合いました」 そして2023年4月、高校に無事進学したBさん。今では自転車で通えるほどにまで回復したが、最近でも言葉が出なくなることがある。 取材の最後、後遺症に苦しむ人たちへのメッセージを尋ねた時だった… 母親 「希望を持って、諦めないことだよね、最後まで」 Bさん 「諦めずに…なんだっけ?もう一回言って」 母親 「信じて諦めないでやっていったら良くなってきたので、みんなもいっしょに頑張っていきましょう」 Bさん 「信じて頑張ってやっていったら?」 母親 「大丈夫?まずはリラックスして。まずは(自分が)良くなるってことを信じないといけないよね、自分がね…」 Bさんの後遺症の治療は今後も続く。
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e649b7633ada376b9ec7b2885169bc5530f3687?page=1
https://news.yahoo.co.jp/articles/2e03b80394a4f72cc7a826f0031c35190836a92c
https://news.yahoo.co.jp/articles/ebaa33fd0544b6a65908ae9e6043e1dc6867336c
https://nordot.app/1025741003604574208?c=899922300288598016
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f7789aab1dd086dca20f3331de478e5e83dd934
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/814be21be9afd75868055aad9c8f9626e7d56974
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6fd57c24755ed84a1a62e5a2a297ef589c1ecb3a