ふわりふわりと
ねむの花
うっとりするよな
やさしい
花
横に横に
広く大きく差し伸べた枝に
ふんわり
ゆらゆらした花を
群れ咲かせて
ねむは
いざなう
甘く
やさしく
ほのかに悲しい
夢のなか
海の底
深く
まるで
ローレライ
ゆらゆらと
淡いピンクの
花糸の群れ
「花糸」は
「かし」と読むのが正しいけれど
はじめて
その言葉を知ったときから
いつも
「はないと」
って、読んでしまう
小さな丸い
淡い緑のつぼみから
花糸は
縮れた糸くずのように
くしゅくしゅと
姿を見せて
気づくと
真っすぐに伸びて
きれいな刷毛のような形に
なっている
蝉や蝶が
羽化したとき
小さく縮れていた翅が
美しく広がるのに
似ている
深い
葉の緑に
淡い花の群れ
甘酸っぱい香りが
あたりを包んで
やがて花が
満開になったころ
葉は閉じて
眠る
花も
葉も
おとぎ話みたいで
珊瑚のような
海に咲く
水中花のような
ゆらゆらと
甘く
やさしく
ほのかに悲しい
ねむの波間に
たゆたう
夕べ
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