かくれんぼした言葉が
鬼に見つからない一日は
なぜか虚しい
かくれんぼ
鬼のいないかくれんぼ
かくれんぼした心が
鬼に見つからない一日は
なぜか淋しい
かくれんぼ
誰も探してくれないかくれんぼ
異和感のあるあなたの中に入って
どうしてそうなるのか知りたい
お薬がどんどんあなたの中に入っていくけど
お薬はあなたの中で一体何をしているのでしょう
異和感がなくなったとは言えず
ただほんの少し生気がなくなっておとなしくなっただけ
だから
異和感のあるあなたの中に入って
どうしてそうなるのか知りたい
そして
苦しみから少しでも解放して
楽にしてあげたい
どうすれば
異和感のあるあなたの中に入っていけるのでしょう
ある日、90歳を超える母が目を丸くしてこう云うのだ。
「夜中に目が覚めるとね、黒い蝶が飛んでいたの」
母は、認知症の症状は一切ない人である。
多少神経質で心配性ではあるが、日常生活に差し障りがあるわけではない。
肉体的には弱ってきてはいるが、自立した生活を送っている。
ただ心配事が多く、ストレスも一人で抱え込むタイプである。
なかなか寝付けなく、処方してもらった睡眠薬を飲まないと眠れないとも言っていた。
私は、夢でも見たのだろうと、軽く受け流した。
その日母もそれ以上はそのことに触れなかった。
それから数日して、母は再び同じことを言った。
「黒い蝶がひらひらと飛んでいるのよ。本当よ」
何か訴えているかのようでもあった。
母は2ヶ月に一度のペースで通う内科の主治医がいる。
私は次に先生に会う時に話してみようと母を落ち着かせた。
何の心配もいらないという態度を見せながら、私の頭の中は、認知症の予兆なのかと不安が横切った。
心が手をつないで
輪になってすわると
どの心も見えるようになる
優しさも敵意も
熱意も怠惰も
みんな手をつなぐんだ
ぐるっと見渡して
みんな自分なのだ
僕が感じるほどに
君の心は動かない
君が気づくことに
僕は無関心だ
僕に見えるものを君は見ず
君に聞こえるものを僕は聞かない
そうなんだよ
誰もがみんなひとりよがり
それで気分を悪くする
ばかげた話だ
桜は花だけがいい
指先ほどの花びらが集まって
幹も枝も隠し
滑らかになだらかに
大きな生き物になっていく
白色のあるいは薄紅色の
天に導く龍のようだ
限られた短いときの中で
命の色を保ったまま
散っていく
地に落ちた桜の花の道
無造作に歩くことはできない
僕は
風に乗り
アクロバットする
一枚の枯葉
重さがなiい
上昇気流で空へ
失って急降下
目的地まで
風をよまねばならぬ
見ていたが読むことはしなかった
視力2.0
読解力0.0
風は止み
地上に落下した一枚の枯葉
踏むな!
君が感じるほど
僕は悪人ではない
そして
君が思うほど
僕は善人ではない
その間を
行ったり来たりしている
振り子のようなものだ
やがて動きは収束し
程よいところで止まるのだ
目を押さえても
悲鳴は聞こえる
山の崩落
海の変容
そして世界の爆発音
耳を塞いでも
混沌は見える
街の電光板
朝一番の行列
そして世界の血図
逃げない
目を開き
耳を傾け
受けとめる
君は
セゴビアのシャコンヌを
聴いただろうか
濁流
水面は飛び散り
水底は荒れている
ひょうひょうと笛など吹けはしない
俯き 陥り 抜け出せない
だが
どこか一点
真っ平な場所があるはず
君よ
また聴くのだ
もう一度
聴くのだ
何度も何度も
聴くのだ
Segovia plays Chaconne by Bach
もう
まだ
試されるとき
波立つ水面の
空気の酸素なら上
水中の酸素なら下
人なら空気
沈むか
干上がるか
鍵はひとつ
上か下か
さあ
君よ
まだだろ
回すだけだ