同性婚について
先日(2023/6/8)本件についての福岡地裁の判決が出たことで、新聞紙面でも同性婚についての報道、論説がまた活況を帯びてきた。
2019年に全国5地裁で起こされた訴訟は、同性婚を認めない民法、戸籍法は憲法に違反するかどうかということで、争点として対象となった憲法の条文は主に下記3つとなる。
(1) 憲法24条1項 「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」
(2) 憲法24条2項 「婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して成立」
(3) 憲法14条 「法の下の平等」
判決は、(1)に対しては5地裁とも全て合憲、(2)に対しては札幌、大阪地裁は合憲、東京、福岡地裁は違憲状態、名古屋地裁は違憲、(3)に対しては、大阪、東京、福岡地裁は合憲、札幌、名古屋地裁は違憲というものであった。
朝日新聞は6/9の社説で、「憲法に違反するとの指摘を、いつまで放置するつもりなのか。国会は直ちに是正に動かねばならない。」と述べており、また主要7か国(G7)で同性カップルに対して国として法的な権利を与えていないのは日本だけで、世論調査でも同性婚制度に肯定的な意見が、否定的な意見を上回っており、同性婚を法律で「認めるべきだ」が72%で、「認めるべきではない」は18%にとどまったと報じている。
しかし私自身はこの同性婚というものにどうも違和感を感じて仕方がない。
同性カップルが好きあって一緒に住むのは自由だが、何故結婚(法律婚)という形にこだわるのか。
これについては、6/9の朝日新聞の「いちからわかる」というコラムで、「同性同士で法律婚できず・・・どんな不利益がある?」と題して下記書かれていた。
・税金の配偶者控除がない
・相手の法定相続人になれない
・子供の親権は共同で持てない
・パートナーが病気になっても家族ではないとして病状の説明を断られることもある
・外国人パートナーに配偶者ビザはでない
なるほどと思ったが、それならば、結婚ではなくこのような権利を保障する制度を別途作ったらどうかと思ったところ、自治体では「パートナーシップ制度」を導入しているところが少なからずあるという。
これは自治体が同性カップルを結婚に相当する関係と認めて証明書を発行する制度のこと。
少なくとも323の自治体が導入しており、自治体により内容は様々だが、これにより家族向けの公営住宅への入居が出来るなどの対応がとられており、また民間でも、証明書があれば配偶者として扱う保険会社などもあるとのこと。
(しかし、法的な効果はなく、法律婚と同じとは言えないとのこと。)
日本の憲法や法律には同性婚をはっきりと禁じる規定はないが、民法や戸籍法には「夫婦」「夫」「妻」という言葉を使っており、実務上同性同士の婚姻は出来ないことになっている。
従って、同性カップルの人たちは、異性婚と同等の権利、保障を求めて、現行の制度は「人権無視」「差別である」とし、憲法に違反していると主張しているようである。
この要求自体は分からなくもないが、やはり当方は同性同士の結婚ということになると不自然さを感じてしまう。
単なる言葉の定義上の問題かも知れないが、私は「結婚」という言葉はやはり異性同士の結びつきを対象とすべきで、同性間では使うのはおかしいと考えている。
同性カップルが異性婚と同等の権利、保障を求めるならば、結婚という言葉を使わなくとも、法律でそれらを保障するものであれば別の名称でもよいのではないだろうか。実際、結婚ではなく事実婚として、国によってその名称や法律の適応範囲は異なるものの、このような形をとっている国は多い。
当方当事者ではないので分からないが、同性婚を認めるように主張している人たちもそれで納得するのではと思うし、同性婚に異議を唱えている人たちも受け入れやすいかと思う。
(注)
*事実婚という言葉だが、ここでは次のように定義して使用している。
異性婚 (異性同士の結婚)
同性婚 (同性同士の結婚)
法律婚 (法律上要求される手続きを踏んだ婚姻)
事実婚 (婚姻に準ずる関係)
*法律的には次のような定義が正しいのだろうが、異性関係が前提となっているので、ここでは同性関係でも適用(使用)できるように、敢えて上記のように定義しておいた。
(新聞記事などでも、この点曖昧な形で使用しているケースも見受けられる。)
法律婚 (婚姻届を提出して戸籍上夫婦となっている男女関係)
事実婚 (実質的には夫婦関係にあるといえるものの,婚姻届を提出していないため,戸籍上夫婦とはなっていない男女関係、「内縁」とも言う)
しつこいようだが、なぜ私が同性婚に違和感を持つかというと、これは「自然の摂理」に反すると思うからである。
生物の誕生以降、進化の過程で雄と雌に分化したのは、種族保存にはその方が遺伝面などで都合が良く有利になるということからで、生物学上の観点からすると、婚姻は男女間でなされるものというのは当然のことである。(動物でも例外はあるにせよ(雌雄同体など)、雄と雌という異性同士がペアとなって、種族保存を行っている。)
現行の憲法はこのことを前提として作られ、民法や戸籍法がこれに準じたものであるのは当然のことであろう。
朝日新聞も、「法律婚制度は、男女が子を産み育て、家族として次世代につなぐ関係の保護を目的としてきた。」と述べている。
ところで最初に述べた裁判所の判断はどうだったのだろうか。
裁判所の判決は条文及び過去の判例と照らし合わせてなされるが、条文の解釈で判断が難しいという場合は立法の精神(意図)に基づいて判断するというのが基本である。
憲法24条1項に対しては全ての裁判所が合憲としており、その理由として「異性カップル」を想定しており、同性婚は保障していないとしている。
しかし、憲法24条2項及び憲法14条に対しては、「法の下の平等」「個人の尊厳」ということを重視し、同性カップルが法律婚で得られる効果や利益を一切得られない現状は問題があるとして、違憲或いは違憲状態との判断が下されている。
これは近年の社会情勢の変化、同性婚を認める世界の潮流なども考慮したものでもあろう。
そして立法の目的、意図だが、当時は同性同士の結婚などは全く想定していなかっただろうから、現状をどこまで受け入れるか、裁判官はさぞかし頭を悩ませたことだろうと思われる。
さて、この同性婚、社会の変化ということでもう一つ注目されるのがLGBTである。
同性婚についての福岡地裁の判決が出された翌日6/9に「LGBT理解増進法案」が衆院内閣委員会、6/13に衆院、6/16に参院で可決され成立した。
これも賛否両論、大いに新聞紙面を賑わしたが、このLGBTについては別途記述することにする。
https://kenpokaisei.jimdofree.com/規範力の復元/同性婚訴訟-東京地裁判決の分析/