話の種

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母親とは

2024-09-04 08:44:09 | 話の種

「母親とは」

〇(天声人語)チンゲンサイを障害者と作る(2024年8月26日)

「母親が、我が子の履歴書を持って訪ねてきた。障害のある息子を雇ってほしいという。「うちでは無理です」と断っても、彼女はあきらめなかった。「給料はいらないですから、働かせてください」。そう言って、何度も、何度も頭を下げた▼「驚きました」。浜松市で農園を営む鈴木厚志さん(59)は、30年ほど前の出来事を振り返る。「当時の私にとって、働くとはお金を稼ぐこと。何だか、自分が薄っぺらく感じました」▼福祉に携わる友人に相談すると、言われた。「お母さんは信じているんだよ。この世に無駄な人間はいない。息子にも役割がある。どこかに彼を必要とする人がいると信じているんだ」▼それがきっかけだった。最初は恐る恐る実習生を受け入れた。何か起こるぞと身構えたが、杞憂(きゆう)に終わる。時間はかかるが、彼らの仕事は丁寧だった。助け合いの言葉が職場に行き交い、農園の雰囲気もよくなったという▼鈴木さんは思った。人を仕事に合わせるのではなく、仕事を人に合わせよう。人手を減らすための機械化はいらない。ゆっくりでいい。ほかの農家が敬遠する「手間のかかる野菜」をみんなで一緒に作ろう。「個人戦でなく、団体戦で勝てばいいのだから」。いまや農業法人「京丸園」で働く104人のうち、24人が障害者である▼農園で作られたミニ青梗(チンゲン)菜を頂き、ゆがいて食べてみた。じっくり、たっぷり、いろんな人の手をかけた緑の葉は歯応えがあって、それでいてどこか、やさしい味だった。」


当方当初「給料はいらないから働かせてくれ」という意味が分からなかったが、福祉関係の人の言葉を見て痛く感じるものがあった。「この世に無駄な人間はいない。どこかに彼を必要とする人がいる。」という母親の信念と、「息子に生まれてきたことを後悔して欲しくない、自信を持たせ、生きていることの喜びを与えてあげたい」という母親の必死な思い、愛情の深さである。

一般的に「女は諦めが悪く、男は諦めるのが早い」というが、男の私だったら、「息子に無理をさせなくても、もうそのままでいいではないか」と思うところだろう。

女性の強さというものを改めて知らされた思いである。

 


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