「人生の目的」
学生時代に、「人はなぜ生まれてきたのか」「人生の目的は何か」と悩んだ人は多いと思う。
私も例外ではなかったが、この悩みを解決してくれたのがサマセットモームの「人間の絆」という本だった。
本のストーリーは忘れてしまったが、強く印象に残ったのは「人生はペルシャ絨毯を織るようなもの」という箇所。
ペルシャ絨毯は意匠が凝っていて、織っている間はどのようなものが出来上がるか分からないが、仕上がった時にどのような絨毯になったかが分かる。そして複雑な凝ったデザインであればあるほど美しく価値のあるものとなる。
私はこれを自分なりに解釈し、人生もこれと同じで、生きている間は分からないが、死ぬときになって自分がどのような模様を織ってきたか(人生を歩んできたか)が分かる。
つまり、人生はいろいろ経験すればするほど、それが困難であればあるほど、美しい価値のあるものになると理解し、以後何事も経験だと思い失敗を恐れなくなった(失敗はそれだけ複雑な意匠を織って価値を高めているのだと思うことにした)。
(昔、このことを友人に力説したところ、「要はいろいろと経験をしろということだろう」と一言で片づけられてしまったが。)
これが私の実存主義との出会いだが、実存主義は「人は存在が先にある(目的があって存在するものではない)」ということで、モームがこの本を書いた意図は別の所にあったかも知れないが、私は「人は偶然の産物で、人生に目的などない」と理解し、随分と気楽になった覚えがある。
しかし、人が目的を持った存在ではなくとも、目的を作ることは出来る。
そうでなければ、人生が味気なくつまらないものになってしまう。
人によっては、何のために生きているのか分からなくなり、自分は無意味な存在、生きている価値がないと思ってしまうこともあるだろう。
そこで、宗教や人生論などが存在するのだが、これらはあくまでも指針で、どのような目的を持つか、どのように生きるかは人それぞれである。(当方は宗教や人生論を否定するものではなく、私自身随分とこれらを参考にさせて貰っている。またこれらによって救われ、生きる意味を見い出す人は多いと思う。)
私は「人は他者に迷惑をかけない限り、どうであろうと、何をしようと自由である」と思っているが、これは先に述べた実存主義の人生哲学、価値観に基づいたもの。
最近浮かんだ言葉だが、
「生があるから死がある」
「死があるから生がある」
つまり、「生きているものは必ず死ぬ」これは自然科学の領域。
そして、「死があるから生を考える」これは人文科学の領域。
どうだろうか。
(追記)
このブログの「死について」のところで記載したが、76才の男性が次のように述べていた。
「死について考えることは、いかに生きるかの原点のような気がします。死を見つめてこそ生も充実するかと。本を読み、友と交わり、学び、働き、旅をして、遊んで---経験を積む中で、きっとあなたはこの世の深さや広さ、複雑さを知るでしょう。
よいことばかりとは限りません。矛盾に悩む日も、挫折もあるかも知れませんが、様々な経験を重ねてこそ「生きる力」が育まれると私は信じております。(中略)
私たちがこの世に生まれてきたこと自体に意味があるのではないでしょうか。
人生を理解するには、生きつくす必要がある。それが今の私の正直な心境です。」
(表現に違いはあるが、人生においていろいろと経験を積むことに意味があり、そして生を全うして振り返った時に人生が分かるとしている点では、言おうとしていることは同じかと思う。)
(参考)
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実存主義とは
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実存主義(Existentialism)は、20世紀の哲学的な思想運動であり、個人の存在、自由、責任、選択、孤独、不安などの人間の基本的な問題に焦点を当てています。実存主義者たちは、人間の存在が抽象的な理論や体系的な枠組みに捉えられるべきではなく、個々の経験や実際の生活に根ざした存在の意味を追求するべきだと考えました。
実存主義の主要な特徴と考え方には以下の点が含まれます:
個人の自由と責任:
実存主義者は、個人が自由な存在であり、自分自身の選択と行動に責任を持つべきだと強調します。選択の自由が不可欠な要素であり、その選択が人間の人生の意味を形作ると考えられています。
存在の不安と孤独:
実存主義者は、人間の存在は不安や孤独といった感情と密接に結びついていると信じています。人間は他者との関係を通じて自己同一性を見出す一方で、絶えず孤立や虚無感に直面する存在であると捉えられています。
絶対的な意味の不在:
実存主義者は、絶対的な意味や価値が存在しないと見なす傾向があります。人々は自分自身の選択や行動を通じて個別に意味を築く必要があり、このプロセスこそが人間の存在の意味を形作るとされています。
実存と本質の関係:
実存主義は、人間の実存(具体的な存在)が先行し、その後に本質(本質的な特性や属性)が形成されると考えます。人間は自分の選択と行動によって自己を創造し、その過程で本質が浮かび上がるとされています。
個人の経験と感情の重要性:
実存主義者は、哲学的な論理や理論だけでなく、個人の経験や感情も重要視します。直感や感情が人間の存在と意義を理解する上で重要な役割を果たすとされています。
実存主義の代表的な哲学者には、ジャン=ポール・サルトル、アルベール・カミュ、マルティン・ハイデッガー、シモーヌ・ド・ボーヴォワールなどがいます。これらの哲学者たちは、実存主義の概念を異なる視点から探求し、人間の存在に対する深い洞察を提供しました。