きまぐれ日記2

気まぐれに日々感じることをデータや情報を調べながら自身のためになるよう、なるべく読みやすいよう書いてみます。

低下の一途をたどる日本の研究力

2020-05-11 21:21:39 | 日記
研究力ランキング、日本勢初のトップ10陥落…中国勢が躍進 という記事が本日読売新聞に出された。私が以前から口酸っぱく指摘していることだ。今年はイギリスにも抜かれて世界第5位に落ちた。
過去に私の記事を読んで頂いた方には同じことを書いていて申し訳ないが再度指摘しておきたい。

日本の大学数は平成の30年間で499校から782校に増えた。学生数は206万人から290万人に増えた。その大部分は私立大学の増加で364校から603校に増えている。
それに対して政府の研究負担費は2000年にピークを迎えた後緩やかに減少している。現在3.3兆円程度だ。それに対して中国インドはこの20年余りで3倍に増えている。

その予算の中に私立大学の増加が関係している。加計学園の獣医学部の成り立ちでも明らかになったよう私立大学には多額の補助金がついている。特区ならば文科予算だけではないかもしれないが増えた多くの私立大学の場合は文科予算から出ているであろう。
そして増えた大学生の数に比例して私学助成金が振舞われる。これも文科予算だ。だが文科予算全体は増えていない。ということはどこかがしわ寄せがきているということになる。それが2005年に行われた国公立大学の独立法人化だ。

私の在籍していた大学でもこの独立法人化で助手が任期制になった。任期制ということは任期内に論文で結果を出せなければ次期に採用されるかが不透明ということだ。
研究というものはすぐに結果の出るものもあればトライアンドエラーから生み出されることもある。また基礎研究などはじっくり腰を据えて取り組まなければならないこともたくさんある。これにより研究者が不安定な状態で研究従事させられることになった。さらに私の知る研究講座では人数も減らされていた。

こういうことはすぐには結果が出ない。現在15年経ちそれが顕著となっている。現在ノーベル賞を受賞している研究業績はほぼ全て昭和から平成初期に行われたものだ。山中教授のIPS細胞も平成に入っての研究だが米国留学から日本に帰ったときの研究環境の落差に驚いたとwikiにある。
この30年間で大学も学生数も1.5倍以上に増えた。一方1世代当たりの人口は平成元年の20歳人口は約200万人に対して令和2年に20歳となる人口は120万強だ。大学生密度はおよそ2.5倍程度に膨らんでいる。にもかかわらず学力の低下は止まらない。

それは加計の獣医学部や東京福祉大学の外国人留学生大量失踪、明浄学園の紛争などでわかるよう私学を食い物にしている輩が政治家と結託して補助金を詐取しているからである。
現在新型コロナの問題が深刻化している中、国の感染予防対策予算が減少され防疫体制が不十分であることが指摘されている。これも教育ではないが科学に対する予算の締め付けの一端だ。
感染症などはいわゆる公衆衛生学の現場最先端の部署だ。当然検査機器や人員の確保が必要とされることは明白だ。だが現実はPCRといった基礎的な手技を行える人材さえ枯渇している。

国はGDPが平成の30年間で32%・136兆円も増加し一般会計予算が65兆円から100兆を超えるに至ったのに研究予算は一定のままで経過している。
その一定の予算の中から増え続ける私立大学の助成金が出ている。この30年で1.5倍に増えた大学に対して私学助成金も20%程度上昇している。その実情は東京福祉大学のように外国人留学生を入れてあとは放置し実際は生活費のために働かされている環境を作り出している。
一方で研究者の少なくない人数が研究を諦める事態となっている。その結果研究の裾野が狭まり大きな成果が出にくくなっている。現状はまだ平成初期の余勢を駆って業績はある程度出せるであろう。だがこれから10年経つとどうなるだろうか?現実ネイチャー誌にてその危うさが指摘されていると記事にされている。

3年前に日本が4位に転落したことを(ここではない)以前のブログで記事にした。だがあっという間にイギリスに抜かれ5位となった。この先はもっと悲惨な結果が待ち受けているであろう。
日本は少子高齢化が避けられない。10年後には人口が1億2000万人となりGDPは1.25倍と予測されている(2014年の為替レートで)。だがその間に世界全体のGDPは1.8倍に成長する。つまり日本の実質的に占める割合は3割減少するのだ。それでも世界第4位は辛うじて死守している。
更に30年後は人口が1億600万になりGDPは1.65倍になる。だがこの時世界全体は3倍に成長している。日本の占める割合は現在の半分ちょっとになる。このときGDP順位で日本は世界7位だ。これは2014年の為替レートで出しているので円安の現在を基に計算すればもっと悲惨な数値となりうる。
これが世界の日本に対する見方だ。人口が少なくなったのなら技術や特許など科学研究の占める部分が今以上に多く必要となるはずだ。だがその時代に日本は研究分野から完全に脱落している可能性がかなりあることがご理解いただけるだろうか?

あなたのまわりに大学生と称する人はあるいは大卒である人は相当数いるはずだ。そしてその中に少なからず最高学府を経たと称するにふさわしい知識や観察力などをお持ちの方がおられるはずだ。だが一方で本当に大学を出たのか疑わしい人材も目にすることも事実だ。
大学の中には3単元のSや因数分解を教えている大学があると聞く。趣味で補習塾に通うなら構わない。だがそのなかに税金が投じられている。そしてそんな大学の目論見は学生の知識向上ではなく補助金で金を回して懐を潤すことなのではなかろうか。東京福祉大学の件では露骨に留学生で補助金を取れと指令する大学関係者の声が報道されている。
実際自民党議員を中心に客員教授などを務める者が多い。更に文科省の天下りとしても格好の食い扶持繋ぎだ。文科省の許認可事業である以上大学側も抵抗はしないだろう。

その結果が冒頭の研究論文の低下だ。日本の論文業績の順位を見れば大学はほぼ国立が占めることが理解できるはずだ。私立トップの慶応が15位早稲田は17位だ。その上に筑波や岡山といった地方大学が名を並べている。
国立大学の独法化とそれと並行して行われた研究資金の減少が如実に論文減少とリンクしている。ノーベル賞を受賞した本庶氏はその賞金を研究者支援のための基金創設に使うと表明された。すでに研究者の世界ではこれは危機的状況であるという認識があるのだと思う。
現在120万人世代×4年=480万人の内290万人が大学生である。そしてすでに志願者数が募集定員に満たない大学があまたにある。それほど多くの大卒がいても選挙投票率は下がる一方だ。

新型コロナウイルスはおそらくその後の日本の在り方を変える可能性が高いと思う。ウイルスの感染力の強さや変異能力、世界の感染状況を考えれば今を乗り切ればという話にはならないだろう。そして確実に訪れるであろう経済的な危機を前に今まで政治に無関心でいたこの8年間を総括されるときが来る。
衆議院3分の2参議院過半数を7年間も有して数々の法案を強行採決してきた安倍政権が何をもたらすかが示される。オリンピックという不況因子をこの先抱え、人口減少と更に増加する債券負担および回収できない金融緩和と向き合うことになる。この状況下もはや研究業績の回復は困難となるだろう。

今回国民に配られる一人10万円計12.5兆円はそのまま日本市場の流通紙幣貨幣量を1割増加させる。それは流通量が84兆から107兆に増えた安倍政権下で為替が80円から110円に移行したよう120円程度の円安となる可能性が高い。つまり輸入品の値上げである。
すでに小麦関係は値上げが著しい。輸出企業は喜ぶかもしれないが日本ののGDPの16%に過ぎない。内需が下がることの意味がどれほど大きいかご理解いただけるだろう。
だが給与が上がることはないだろう。すでに日本もアメリカもこういうコロナ状況下に便利な非正規雇用を充分循環させているので人員カットは容易だ。鬼畜犯科帳こと竹中平蔵がほくそ笑んでいるだろう。

失業の増加はおそらくより社会を閉塞化させヘイト運動や犯罪などが増えるであろう。たった1ヶ月自粛要請で他府県ナンバーの車を非難する声がネットに渦巻く時代だ。おそらく寛容さは持てないだろう。
テレビ番組は日本すごい的なマスタベーションを垂れ流しているがその現実はこんなものだ。一人の天才が一瞬でこの状況をひっくり返すというような夢は現実的ではない。
こういう状況を放置してきたのはすべて日本人自身だ。国民が思考を持たない限り為政者が自分に都合の良い政治をしても気づくことができない。こんなに大学生が増えてもだ。
そして政権交代時に投票した有権者が(京阪神の字人口と同じ)1500万人以上選挙に行かない現実がこの状況を放置している。あとで文句を言う人がいるだろう。だがこうさせたのは選挙に行かない人自身だということは忘れてはいけない。