《創られた賢治から愛される賢治に》
伊藤七雄とはさて、ではその伊藤七雄とはどんな人だったのだろうか。
まずは、『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著)所収の「「三原三部」の人」(これは昭和24年発行『宮沢賢治と三人の女性』が初出である)を見てみると、伊藤七雄のことに関して次のようことがそこで述べられていた。
宮沢さんは七雄さんと友人だったのです。七雄さんは大島で農芸学校をつくるので、土地をしらべてくれるようにとちゑさんを伴って、花巻に宮沢さんを訪問したのでありました。
<『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著、津軽書房)180pより>まずここで確認できそうなことは、七雄と賢治は単なる知り合いではなくて〝友人関係〟であったであろうということである。
また同書には次のようなことも述べられていた。
ちゑさんの生家伊藤家は、胆沢郡水沢町にある。花巻の宮沢家とは、また意味の違った豪家である。この家で経営する製粉所が火事で焼けたために、岩手県へ配給になる主食の製粉が間に合わないので、つぶのまま配給したというほどの影響力のある製粉所を持っている。
ちゑさんのきょうだいは、かなりの大人数で、七雄という名のついた兄は、ちゑさんとは、ことにしたしく、あるいは賢治と妹としことくらべられてもよいほどのものであった。七雄が絶対面会しないという安田善次郎の門前にがんばり、ただ一回の面識で、日支交換学生というものが生まれたという話や。(ママ)関東大震災の時、彼の経営する長白寮に二十数人の朝鮮人がいて、彼が超人的なはたらきをしたので、そのうちの一人の犠牲者も出さなかったというような人物であった胸の病はドイツ留学中にえたものであったが、その病気の療養に伊豆大島に渡った。土地も買い、家も建てたという徹底したもので、ここで病がいくらか軽くなるにしたがって、園芸学校を建設することになり、宮沢賢治の智慧をかりることになったのである。
<『宮沢賢治の肖像』(森荘已池著、津軽書房)191pより>ちゑさんのきょうだいは、かなりの大人数で、七雄という名のついた兄は、ちゑさんとは、ことにしたしく、あるいは賢治と妹としことくらべられてもよいほどのものであった。七雄が絶対面会しないという安田善次郎の門前にがんばり、ただ一回の面識で、日支交換学生というものが生まれたという話や。(ママ)関東大震災の時、彼の経営する長白寮に二十数人の朝鮮人がいて、彼が超人的なはたらきをしたので、そのうちの一人の犠牲者も出さなかったというような人物であった胸の病はドイツ留学中にえたものであったが、その病気の療養に伊豆大島に渡った。土地も買い、家も建てたという徹底したもので、ここで病がいくらか軽くなるにしたがって、園芸学校を建設することになり、宮沢賢治の智慧をかりることになったのである。
ここから確認できそうなことは、七雄はドイツに留学するくらいだから進取の気風があり、安田財閥の創設者に直談判するくらいだからなかなかの強者であり、大震災の際に朝鮮人を我が身を盾にして救ったくらいだから正義感の強い人物であったであろうということである。
このような、ある面では賢治に勝るとも劣らないような男であったであろう伊藤七雄と賢治は昭和3年頃友人関係にあったということになる。どういう切っ掛けで、水沢出身で当時在京していたと思われる七雄と賢治は交遊が始まったのであろうか。
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なお、その一部につきましてはそれぞれ以下のとおりです。
「目次」
「第一章 改竄された『宮澤賢治物語』(6p~11p)」
「おわり」
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