徒然なるままに~徒然の書~

心に浮かぶ徒然の書

ギリシャ神話におけるアマゾネス

2020-02-22 18:28:36 | 随想

本で読んだか映画を見たか随分古の事になるので確かではないのだが、アマゾネスとは南米アマゾン川の流域にすむ女系戦闘集団だと思っていた。

ギリシャ神話を読み進んでいくうちに、このアマゾネスの神話が登場するに至って、何とも不思議な感じがした。

ギリシャ神話の中にアマゾネスの様な集団があるということは、古い時代の名残を感じさせる。

そしてまた、我が国の古い時代に、この話をなぞったのかどうかは知ららないが、我が国の話の中にも現実社会から隔絶した、

このような隠れ里がいくつも存在したのだろう。

特に、女だけの隠れ里が笹子峠の下にあった小説を読んだことがある。

この集団は女忍者、くの一の集団で、一人の族長によって支配されている、そのような設定であったように記憶している。

いわゆる世間から隔絶した隠れ里である。

集団を維持していくためには子を残さなければならないから、この里の女たちは優秀な胤を求めて、

全国へ散って優秀な人物の胤を仕込んでくるのだが、男が生まれるとある年齢に達した時、里から追放してしまう。

 

さて話はギリシャへ戻ろう・・・・

この不思議な女性集団の王国は北方の未知な地方にあると考えていたようである。

この国は女たちだけの国で、他国の国の男と交わって子を産んでいたようである。

女だけの国であるから男が生まれると、殺して、女だけを育てていたと言われているのだが、実際は如何であったか定かではない。

ある程度の年齢までは育てるがそれ以後は、集団から追い出していたと考える方がいいのかも知れない。

これには諸説がある様である。

因みに、アマゾネスとは乳なしを意味するらしい。

ギリシャ語でamazos・・・・このaは否定を意味し、mazosは乳房を意味するという。

神話はこのアマゾネスを色々な場面に登場させている。

この女性集団は弓が得意で、弓を引くのに邪魔な乳房を切り取ったという・・・・

それがアマゾネスと呼ばれる由縁らしい。

なるほど弓を引く姿を思い浮かべると、確かに右の乳房は邪魔になっている。

あの当時、現代の女性が弓を引く際に付ける胸当てなどは付けなかっただろうから、特に豊満な乳房は邪魔になったであろう。

神話に出てくる英雄たちが、このアマゾネスに絡んでくるのが面白い。

その中でも、特に名を知られているのがヘラクレス。

このヘラクレスはゼウスとアルクメネの間に生まれた息子。

ヘラクレスは人間の女から生まれた子で、ゼウスの妻のヘラの嫉妬深さで、随分といじめられて育ったようである。

このヘラ、ギリシャ神話を代表する様な悪女の一人・・・いや悪女神と言うべきか・・・・・

このヘラの奸策でエウリュステウスの家来にさせられ、どんな命令にも従わざるを得なくなってしまう。

それがヘラクレスの十二の難業と言われるものとされているのだが、その中にエウリュステウスの娘が欲したアマゾンの女王のアレスの腰ひもを取ってくるというのが、

ヘラクレスとアマゾンとの出会いであった。

アマゾンの国へ行ったときの時の女王はヒッポリュウテであったが、ヘラクレスに腰ひもを渡すことに同意したが、ここでも薄汚いヘラの奸策で、

ヘラクレスは女王の裏切りと思い、アマゾンの女王を殺してしまう。

腰ひもを手にしたヘラクレスは逃げ出してしまうのだが、ヘラの悪女の面目躍如と言う場面なのかもしれない。

次に、アマゾンとかかわるギリシャの英雄はテーセウス。

テーセウスはアテナイ王とトロイゼン王の娘との間の子。

テーセウスの一番有名な冒険として、アマゾンの遠征がある。

アマゾンがヘラクレスに襲撃されて、未だ回復しない内に襲って、女王アンティオペを連れ帰ってきた。

今度はアマゾン国がアテナイへ攻め込んできて市街戦となったが、セーテウスの勝利となる。

この戦闘は古代の彫刻家たちが好んだ題材で優れた作品が多いという。

この説には異説があり、セーテウスが連れ帰って、娶ったアマゾンの女王はヒッポリュテだという説もあり、その真偽は定かではない。

シェークスピアの夏の夜の夢ではアテネの公爵シーシアスはアマゾンの女王ヒポリタ・・・・・となっており、ヒッポリュウテ女王説を取っておこう。

このセーテウスと言う男いろいろ冒険談があるが、迷宮のミノタウロス退治もあるが、今回はアマゾンの話なのでしばらく置いておこう。

ただ、迷宮事件の時のアリアドネ、このアマゾンのヒッポリュテと言い、女関係は実にいい加減な男の様である。

ただこのセーテウスがヒッポリュテに子供まで生ませているのだが、この子供が女で有ったら果たして引き取っていただろうか。

恐らくアマゾンの国に引き取られたのではなかろうか。

この説を取るとヘラクレスとセーテウスに二度殺されたことになる。

これが神話の神話たる所以なのであろう。

アマゾネスの物語はさらにトロイ戦争にまでからんでくる。

この時のアマゾンは女王はペンテシレイアが率いていた。

ギリシャ神話のトロイア戦争では、ペンテシレイア率いるアマゾン族の女ばかりの軍隊を率いて参戦している。

ペンテシレイアは敵方の武将を何人も打ち取ったが、最後はアキレウスのために殺されてしまう。

アマゾンの女王ペンテシレイアの死に顔に英雄アキレスが恋をする。

人が死ぬとその顔は美しい、穏やかな顔になると言うがアキレスはこのアマゾンの女王の死に顔に恋をした。

自分の倒した敵将の上にかがみこむと、その美しさと若さと勇気に思いめぐらした時、自分の勝利を悲しんだという。

では何故アマゾネスがトロイア戦争に絡んできたのか、どうやらこじ付けになってしまいそうであるが、それでも何らかの理由が必要であろう。

アマゾンの女王がヘラクレスとセーテウスに二度にわたって殺された意趣返しのためにトロイアに味方した、と言う考え方もある。

同じ人間が二度に渡って殺されたというのも、神話ならではの話なのであろう。

アキレウスは海の女神テティスとプティアの王ペレウスの間の子。

このアキレウス女神によって不死身に作られたが、母の不注意で一か所に弱点があるのは有名な話・・・・

後世のギリシャ人たちによってアキレス腱と呼ばれた箇所である。

このギリシャ神話の時代、アマゾンとよばれる女性戦闘集団は一つだったとは限らないであろう。

いくつも存在したような気がする。

このペンテレシアの死は文学や美術にしばしば描かれているという。

このアマゾンの女達、彫刻や美術に描かれた像は乳なしどころか、豊満な乳房を見せている姿が実に美しい。

 

 

参考文献    

ギリシャローマ神話                        大久保博訳      角川文庫     

ギリシャ神話の悪女たち          三枝和子著      中公新書