この絵本は、はっきり言ってタイトル勝ち。
「悲しい本」ですよ。
こんなタイトルの絵本があったら、絶対に目に止まるし、手に取る。
実際、生協のカタログの、表紙の写真とタイトルだけで買ってしまった。
世にも情けない顔をしたおじさんが登場する。
彼は息子を亡くしたばかり。
悲しみを分かち合う家族は誰もいない。
彼は、息子を思い出しながら街を歩きまわる。
大声で叫んだり、物を壊したり、人にひどいこともした。
みんな悲しみのせいだ。
悲しみなんてほかの人にだってあると思ってみたり、
毎日、得意なことをしてみようと思ったり、
何か楽しいことをしてみようと思ったりする。
悲しみについて書いているうちに、死にたくなる。
…しかし、やがて自分がいろいろなものをみつめていることに気がつく。
窓辺の人々、クレーン、いっぱい人を乗せて走る電車…。
ふたたび息子の思い出に浸る。
あの子の誕生日。みんな楽しそうだった。
…そしてろうそく。…ろうそくがなくてはね。
ろうそくの炎が男の顔をあたたかく照らす。
…………
作者が、彼自身の悲しみを紛らわすために作ったと思われるこの絵本。
この本が出来上がる頃、彼は、悲しみから開放されていたと思う。
自分の悲しみからは、自分がもがき苦しまないと抜け出せない。
もし、私に悲しいことがあった直後に、
この本を誰かがくれたとしても、癒しにはならない。
同じ意味で、「千の風になって」も私には癒しにならなかった。
風になる?とんでもない。ちゃんと私のそばにいて!と思っただけだ。
「悲しい本」も「千の風になって」も、
自分の悲しみにけりがついて初めて、じんわりとしみこんでくる。
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