2018年6月9日東海道新幹線「のぞみ265号」
新幹線殺人 死刑に怯え「無期懲役で」小島一朗被告の勝手な言い分
「ちわっす」
短い坊主頭に整えられ、グレーのスエットを着た小島被告が法廷に入ってきた。
キョロキョロと、傍聴席を見回す。11月5日、第四回公判で行われた被告人質問でも、「刑務所に行きたい、それも“無期懲役囚”になりたい」という自身の希望を縷々述べた。また時折、弁護人の質問を遮り「保護室のことを聞いてください」など、自分が語りたいことを聞くように指示し、弁護人から「質問するのは私なので!」と返される一幕も見られた。
昨年6月、東海道新幹線の車内で、乗客の男性を殺害し女性2名に重傷を負わせたとして殺人や銃刀法違反などの罪に問われている住所不定、無職・小島一朗被告(23)の裁判員裁判が11月28日から、横浜地裁小田原支部(佐脇有紀裁判長)で始まった。
起訴状や証拠によると、小島被告は昨年6月9日の夜、新横浜から小田原間を走行中の新大阪行き『のぞみ265号』の12号車で、両隣に座っていた女性2人に対し、手に持ったナタで頭や首を切りつけたうえ、止めに入った兵庫県尼崎市の会社員・梅田耕太郎さん(38=当時)をナタやナイフで切りつけて殺害した罪に問われている。
罪状認否で小島被告は「確かに私は通路に倒れた人を殺そうとして、見事に殺しきりました」と起訴事実を認めた。
日本中を震撼させた大事件を起こした動機は“刑務所に行きたいから”というもの。続く検察側冒頭陳述によれば、小島被告は両親との関係が良くなく、ストレスを理由に仕事も辞め、祖母と同居を開始した。その後、2017年12月に愛知県岡崎市にある祖母の家を出て、長野県内の公園などで寝泊まりするようになった。祖母からの電話をきっかけに「一生刑務所に入るような犯罪を起こそう」と、犯行を決意したという。
事件を起こす前の小島被告は「前途は3つしかない」と考えていた。1つ目は刑務所。2つ目は精神病院。3つ目はホームレスとなって餓死することだ。ところが精神病院には数回入院したものの退院となり、餓死しようと試みたがあえなく断念。祖母からの帰宅を促す電話で、1つ目を選択するに至った。その後、反省の弁を一切口にしていないが、それは“無期懲役囚”になりたいという思いからによるものだと匂わせる。
弁護人 「反省するってどういう意味ですか?」
被告 「私にとっては、反省しないことによって……ん~まあ、ん~、まあ……やっぱり、勾留中にも、逮捕されてからも、反省していない、殺人も反省していないことを示そうと思いました」
昨年には留置場で警察官を鼻血が出るまで殴ったことも明らかにされたが、これも反省していないことを示すためのものだったという。
弁護人 「事件と警察官を殴打することは別物ですよね。どっちも反省しないことと関連があるんですか?」
被告 「普通逮捕されると反省したりおとなしくしているのに、起訴されても暴れていると、反省していないというアピールをできるのかと思いました」
さらに、初公判当日、許可を願い出ることなく勝手に髪を剃り、懲罰を受けたという。初公判では、頭頂部のみ短く刈られていたが、それは剃髪の途中で制止されたためだそうだ。
弁護人 「なぜ剃ったんですか?」
被告 「刑務所に入りたいという主張に説得力が出ると思いました」
弁護人 「なぜ?」
被告 「えー、まあ、剃髪、極めて、その、まあ、宗教的な髪型で、一生入りたいと思っているのは宗教的な、勝手な宗教ですが、その、まぁ、表現でツルツルにしました」
小島被告は3日に行われた被告人質問で「3人殺せば死刑になるので、2人までにしておこうと思った」と、無期懲役という判決が下るように襲う人数を決めたと語っている。彼の“無期懲役のための工作”は細部にわたっており、5日の被告人質問では左ひじを証言台につきながら話をしていたが、これも「無期懲役はやっぱりこういう格好がいいと」と語っている。だが彼がそう狙ったとしても、判決を下すのは裁判所だ。
検察官 「永遠に刑務所に入っていたいと言ってましたが、死刑になるとは思ってないんですか?」
被告 「先日それも弁護士に聞かされたんですが、すごい怯えております」
検察官 「無期懲役になりたいと?」
被告 「はい」
検察官 「もし無期懲役になって仮釈放となり、いつか社会に出たら、そのあとはどうしますか?」
被告 「なるべくそうならないよう努力しますが、もしそうなったら、またなにがしかの殺人を犯そうと思っています」
この日は、梅田さんの母や妻の調書が検察官により読み上げられ、最愛の家族が突然殺害された日のこと、そして現在の思いが明かされた。
「3日前にLINEをくれたのが最後の連絡になりました。この時も、具合の悪い父を気遣ってのLINEでした。(中略)彼は一言で言って最高の息子でした。彼がまだ小さかった時、私が転んで階段から落ちたことがあるのですが、夫と息子が飛んできて、夫は『大丈夫だ、傷は浅い』と声をかけてくれ、息子は『痛いの痛いの、とんでけ』と声をかけてくれました。優しい2人の言葉に私はなんて幸せものなんだろうと思いました。
被告は、一生刑務所に入りたいと事件を計画し、反省を口にしていないとも聞きました。他人を殺す気持ちは理解できませんが、刑務所に行くための手段として殺害することは身勝手で、このような人に殺されたと思うと息子が不憫でならない。どのような罪を犯し、どれだけの人に悲しみをもたらしたのか、心の底から理解してほしい」(母の調書)
「その日私は休日で友人とテニスをするため外出していました。夜9時15分、彼からLINEで『間もなく新幹線乗る』と連絡が来ました。帰宅は夜遅くなると思い『終電で?』と返すと、楽天のキャラクターのスタンプとともに『どうせ君もでしょ』と返信がきました。彼は私が友人とテニスをした後、食事をして遅くなることがわかっていて、そのスタンプを送ったのだと思います。パンダが含み笑いをしているそのスタンプを私も返信で送りました。それが9時37分で既読の表示があります。検察官から、事件の発生時刻は9時45分と聞きました。彼はLINEを確認した後すぐに被害にあったことになります……。
被告に対し、憎いという気持ちがあるかと聞かれましたが、どう憎んでも、処罰されても、夫が帰ってくることはありません。憎んでも意味がないので、考えないようにしています。被告が新幹線の中で女性を襲い、それを助けようとした夫が殺されてしまった結果、最愛の夫を失いました。このようなことが二度と起こらないための判決は何か正しく判断してください」(妻の調書)
こうした調書読み上げを聞いていた小島被告だったが、被害者や遺族への気持ちを改めて問われても「無期懲役になりたいので謝罪の気持ちは一切ないし、無期懲役になっても謝罪は一切しない。なぜなら、無期懲役は仮釈放があるから。謝罪すると仮釈放されてしまう」と独自の理論を唱え続けた。謝罪しないことが無期懲役への道なのだと信じる彼には、どのような判決が下されるのか。
(FRIDAYデジタル 2019.12.9)
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