オスのはかなきこと、この上なし。ここに来てのこの雨、オスには弱り目に祟り目であったようで、梅雨の合間にケージを覗いてみれば、地面に紫の羽の死骸の山。10頭は下らない。他方メスの元気なこと。羽根先もきちんと残っており、健康体そのもの。おそらく卵を産んだ後か、これから産むところかもしれない。自然界の摂理の厳しきことを見せつけられた。
今年は昨年のようなヘマは繰り返さないぞとの思いで、エノキの枝に
付く葉っぱの量と幼虫の数とのバランスを取ることに気を配りました。弱ったエノキから元気の良い、すなわち葉っぱの沢山付いているエノキへの強制的疎開を頻繁に進めました。30匹の幼虫を常時確保しておく作戦を堅持して、20個のサナギを得ることができ、その全てを羽化させることができました。ホッチギスを使っての引越作戦の成功で、ヤッと自信が得られた、という気が湧きました。そして先日、飼育免許を発行交付するかのごとくに、オオムラサキが胸や肩に留まってくれました。その人なつっこさに、仲間にしてもらえた気がして、思わず頬の筋肉が緩み、感謝の気持ちが湧いてきました。
前回記事に誤植がありました。エノキのAはエノキのBの誤りでした。訂正してお詫びします。
ほとんどがわずか2日間の間に、移動を終え、しかも脱皮を終えて、緑色の肌に変身していました。Bのエノキでは生き残れない、今がラストチャンスと判断し、別の木に移動する。この動物的本能は素晴らしい。残された問題は、昨年まで順調に葉を付けていたエノキBが、どうして枯死寸前の状況に陥ったかである。丹波の森公苑のエノキも3年前までは、似たような樹勢であった。ところがその時点を境に、息を吹き返したように、葉の数、大きさ、艶といい、一変した。地上の温暖化のためなのか、地下の根の突然変異のためなのか、調査研究課題である。
昨日、ケージ周辺の第1回環境整備活動を終えた後、皆で幼虫観察を行った。早速、問題のAのエノキに誘った。そこでは4月初めに樹昇りを済ませた15匹の幼虫が、Aエノキの芽生えをジッと待ち続けていた。1週間前、2~3個の緑色の膨らみがやっと確認できたほどのひどい状況で、枯れることも想定して、鉢植えエノキを3鉢、Aエノキに枝が接するように置いてやっていた。エサが沢山あるエノキに移動してくれるようにとの願いを込めて。作戦は成功した。数匹の幼虫が鉢植えの木で見つかった。そのうちの1匹は、枝の先端部分の葉の上にチョコンと正座していた(写真下
)。これで一安心だ。しかし3鉢のエノキで15匹の食欲を満たすのはとても無理だ。ごく近い将来、2回目の大移動が必要になる。