1979年、機動戦士ガンダムはテレビ放送を迎えた。
作品は
「宇宙世紀0079
地球から最も遠い宇宙都市サイド3ジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
この一ヶ月あまりの闘いでジオン公国と連邦は総人口の約半数を死に至らしめた。
人々は自らの行為に恐怖した」
のナレーションで始まる。「地球へのコロニー落とし」というカタストロフィ後の戦争が描かれている。
52話の予定が視聴率低迷を理由に43話に短縮されて放送打ち切りとなったが再放送で人気に火がついた。後に劇場版3部作が上映されて、ダンダムのモビルスーツプラモデルも爆発的な売れ行きを見せた。ガンプラの累積販売数は4億個と言われている。
◯ファーストガンダム成功の理由
富野由悠季の「ザンボット3」は衝撃的な最終話で話題とはなったが、それまでの子供向けロボットアニメの範疇を越えていなかった。『宇宙戦艦ヤマト』から始まったアニメブームを念頭に「機動戦士ガンダム」は起案された。
「機動戦士ガンダム」は従来のロボットアニメとは一線を画し、宇宙戦艦ヤマトでは疎かだったSF考証に関して専門の人員を配してリアリティにこだわった。
地球と月の引力が拮抗するラグランジュポイントにあるコロニーへ多くの移民が居た時代、ジオン・ズム・ダイクンは宇宙移民の独立を提唱した。ダイクンを暗殺したザビ家はザビ公国を名乗り、地球連邦政府に対して独立戦争をしかけるという、現実の戦争において有り得そうな軍事戦略展開をした。
宇宙戦艦ヤマトシリーズに参加していた安彦良和はガンダムにアニメーションディレクターとして参加している。安彦良和によれば内容にも口出し出来るポジションを確保したかったため、ということのようだ。しかし、宇宙戦艦ヤマトの経験から、当初から続編には参加しない意向だったとされる。安彦は続編の機動戦士Zガンダムときには富野側からシャットアウトされた、とも発言している。
大河原邦男が実際の産業機械としての実用性が有りそうなロボットメカデザインを行った。
脚本は練りに練って4人体制で始まった脚本家は星山博之以外は富野総監督によって外されている。
星野によるとチェーホフの舞台劇に影響を受けたと思われる、決め台詞が突然決まって、その台詞に落とし込むような脚本展開が要求されたとされる。
以下箇条書き
・敵役シャア・アズナブルの行動に必然性がある、ように見える設定が行われている。
・それまでにアニメ界が培った様々な映像技術が注ぎ込まれている。富野が高畑作品のハイジや三千里に絵コンテで参加。
・ファミコンなどのゲーム機がなかった。
・イデオロギー戦争に対する恐怖感が現在よりも濃厚だった。
・そもそも、競合するアニメ作品が少なかった。
・安彦キャラクターの魅力ある人物を多数配置した。
・大河原邦男デザインのモビルスーツの持つ魅力。
・製作者サイドの自発的な意見が尊重された。
(それでも、安彦によれば、スポンサーサイドから、CMの前後で戦闘シーンが入るように要求され、富野は忠実にそれを守ったとされる。)
・石ノ森章太郎原作の宇宙SF作品の意匠を取り込んでも居る。
・先んじて「海のトリトン」の美少年キャラや「ライディーン」などの美形キャラに対してファン層が形成されていた。
・脚本を練り込んで、ヒューマンドラマを数多く盛り込んだ。
・SF考証を行いリアリティにこだわった。
・登場型ロボットが自律型ロボットよりも自動車の運転に似ており、親しみを感じた。
・補給や修理を徹底的に描いた。(マチルダさん達)
・視聴率テコ入れのために新型のモビルスーツが作品に続々と投入された。
◯機動戦士ガンダム THE ORIGIN
安彦良和の手によるマンガ機動戦士ガンダム THE ORIGINが23巻で完結している。ファーストガンダム本編以外に、ザビ家によるジオン・ズム・ダイクン暗殺からルウム戦役までの本編直前までが描かれている。ルウム戦役で5隻の戦艦を沈めたシャア・アズナブルの活躍を見ることが出来る。この部分は、劇場版アニメとして、機動戦士ガンダム THE ORIGIN 1話-6話で製作されている。
ファーストガンダムに相当する部分も製作予定であり、2019年に上映されると言われている。(要検証)
安彦は自分で作品をコントロールしたかったと繰り返し述べている。特に、作中に登場するエスパー的超人である「ニュータイプ」の概念が独り歩きして、選民思想と結びつくことを警戒した。同名の「ニュータイプ」というアニメ雑誌が創刊されており、その懸念が荒唐無稽とは言えないほど、社会現象となっていったのである。
THE ORIGINでは主人公アムロ・レイを当初は「感の良いエスパー扱い」から入り、科学者による科学観察や研究対象として扱い、万能的な人物ではない、という演出を打ち出している。
また、宇宙移民の独立を提唱したジオン・ズム・ダイクンに対する極端な神格化も避けるように描いている。作中では演説中に毒殺されてあっけなく死んでしまう。
また、主人公たちが乗り込む「ホワイトベース」は、当初は偽装輸送艦として登場し、戦闘艦なのか不明なまま運用されて、強襲揚陸艦として使われると噂されて、最終的にジャブローで改装されてペガサス級宇宙戦艦となる。
このような「ホワイトベース」に対する軍艦運用の描かれかたはファーストとの違いとして挙げられる。
◯安彦良和とマルクス
安彦良和はマルクス経済学を徹底的に読み込んだ経緯で、ベトナム反戦運動にも取り組んだ経緯がある。現在では
「マルクス主義は間違いだが、マルクス経済学は今でも通用すると」
言及している。
マルクス主義の負の側面は存在するのは確かである。独裁政治による粛清や、統制経済による生産停滞が起きた。
だが、ソビエト連邦に限って言えば発足から、他国により営々と戦いを強いられた国家であり、経済の疲弊は避け難かった。
マルクス主義は米帝国主義よって敗北に追い込まれたのである。
ソ連はナチスとの戦いだけでも2000万人の死者を出した。
戦後は米国との核兵器競争が始まる。
1950年から始まった朝鮮戦争で、搭乗員こそロシア人では無かったが、米国とジェット戦闘機で交戦している。
ベトナム戦争ではベトナムはソ連や中国からの援助を得て対米戦争を勝ち抜いている。
ソ連は1973年まで戦争の当事者で有り続けたと言える。
1979年からはアフガニスタン紛争へ介入し1989年に撤兵で幕を閉じるが、これがソ連邦崩壊の決定打となった。
皮肉な事に、帝政ロシアが戦争を繰り返し、人民の疲弊が極限に達し、革命を産んだ。
ソ連革命政権は米国の帝国主義に対抗するために戦乱に明け暮れて、最終的に崩壊した。
西側を自由主義陣営だとか、民主主義陣営と呼んでいるが、実情は米帝国主義陣営であった。
ナオミ・クラインのショック・ドクトリンなど、米帝国主義批判が行われてはいるが、日本ではそれほど米国の国際政治政策が危険視や問題視されているとは言い難い。
そもそも、大戦後も各地で戦争が起きており、「冷戦」という表現が現実に即していない。
日本では第二次大戦後は平和な時代が続いたとみなされるが、日本本土が戦争になっていないだけで、朝鮮戦争特需やベトナム戦争特需で社会資本を蓄積することができた。
日本は米国保護領、そして、資本主義陣営のショーウィンドウ国家として一定の繁栄が許された。
一言で言えば、米帝が「ソ連の存在を許さずに抗争し続け結果的に崩壊した。一方で日本は米帝保護領としたので繁栄した」のである。
戦争時に培った製造技術の民間転用と、戦争需要で「下駄を履いて」経済成長したのである。
安彦はベトナム反戦運動で大学に二週間も立て籠もり除籍になった人物であるから、人一倍民族主義・アジア主義的な価値観に基づく抗米戦争に敏感だった。であったがゆえに、虚構の世界における戦争描写でも手を抜かないで、現実味をもたせることに執着したのである。
戦争描写における高い再現性は「装甲騎兵ボトムズ」などで活躍する高橋良輔にも見て取れる。高橋はアニメ「ヤングブラック・ジャック」でベトナム戦争やあさま山荘事件の脚本を担当している。
日本のアニメーションは日本国内が経済的基盤を得て、人民の生活にある程度の余裕があったから、それなりの市場規模を確保しえた。アニメ技術の成熟は製作者達の賜物であることは言うまでもないが、多数多様な作品がオタク層を育み、そのオタク層がアニメーション界を支えてきた。アニメ文化の爛熟は東側と西側両陣営が激突する間隙を縫って、偶発的な「歴史のあや」によって発生したとも言える。
戦争当事国や支援国は必要な生産を維持するだけで労働者は時間を奪われて、趣味的な活動を行う時間を持てないのである。
日本も2000年の清和会政治となってからは、米国への金融支援や軍事支援によって国力を吸われており、生活水準が低下しつつある。今後、日本アニメ界が生き残ろうとするのなら、日本以外の市場を獲得せざるを得ない。
作品は
「宇宙世紀0079
地球から最も遠い宇宙都市サイド3ジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
この一ヶ月あまりの闘いでジオン公国と連邦は総人口の約半数を死に至らしめた。
人々は自らの行為に恐怖した」
のナレーションで始まる。「地球へのコロニー落とし」というカタストロフィ後の戦争が描かれている。
52話の予定が視聴率低迷を理由に43話に短縮されて放送打ち切りとなったが再放送で人気に火がついた。後に劇場版3部作が上映されて、ダンダムのモビルスーツプラモデルも爆発的な売れ行きを見せた。ガンプラの累積販売数は4億個と言われている。
◯ファーストガンダム成功の理由
富野由悠季の「ザンボット3」は衝撃的な最終話で話題とはなったが、それまでの子供向けロボットアニメの範疇を越えていなかった。『宇宙戦艦ヤマト』から始まったアニメブームを念頭に「機動戦士ガンダム」は起案された。
「機動戦士ガンダム」は従来のロボットアニメとは一線を画し、宇宙戦艦ヤマトでは疎かだったSF考証に関して専門の人員を配してリアリティにこだわった。
地球と月の引力が拮抗するラグランジュポイントにあるコロニーへ多くの移民が居た時代、ジオン・ズム・ダイクンは宇宙移民の独立を提唱した。ダイクンを暗殺したザビ家はザビ公国を名乗り、地球連邦政府に対して独立戦争をしかけるという、現実の戦争において有り得そうな軍事戦略展開をした。
宇宙戦艦ヤマトシリーズに参加していた安彦良和はガンダムにアニメーションディレクターとして参加している。安彦良和によれば内容にも口出し出来るポジションを確保したかったため、ということのようだ。しかし、宇宙戦艦ヤマトの経験から、当初から続編には参加しない意向だったとされる。安彦は続編の機動戦士Zガンダムときには富野側からシャットアウトされた、とも発言している。
大河原邦男が実際の産業機械としての実用性が有りそうなロボットメカデザインを行った。
脚本は練りに練って4人体制で始まった脚本家は星山博之以外は富野総監督によって外されている。
星野によるとチェーホフの舞台劇に影響を受けたと思われる、決め台詞が突然決まって、その台詞に落とし込むような脚本展開が要求されたとされる。
以下箇条書き
・敵役シャア・アズナブルの行動に必然性がある、ように見える設定が行われている。
・それまでにアニメ界が培った様々な映像技術が注ぎ込まれている。富野が高畑作品のハイジや三千里に絵コンテで参加。
・ファミコンなどのゲーム機がなかった。
・イデオロギー戦争に対する恐怖感が現在よりも濃厚だった。
・そもそも、競合するアニメ作品が少なかった。
・安彦キャラクターの魅力ある人物を多数配置した。
・大河原邦男デザインのモビルスーツの持つ魅力。
・製作者サイドの自発的な意見が尊重された。
(それでも、安彦によれば、スポンサーサイドから、CMの前後で戦闘シーンが入るように要求され、富野は忠実にそれを守ったとされる。)
・石ノ森章太郎原作の宇宙SF作品の意匠を取り込んでも居る。
・先んじて「海のトリトン」の美少年キャラや「ライディーン」などの美形キャラに対してファン層が形成されていた。
・脚本を練り込んで、ヒューマンドラマを数多く盛り込んだ。
・SF考証を行いリアリティにこだわった。
・登場型ロボットが自律型ロボットよりも自動車の運転に似ており、親しみを感じた。
・補給や修理を徹底的に描いた。(マチルダさん達)
・視聴率テコ入れのために新型のモビルスーツが作品に続々と投入された。
◯機動戦士ガンダム THE ORIGIN
安彦良和の手によるマンガ機動戦士ガンダム THE ORIGINが23巻で完結している。ファーストガンダム本編以外に、ザビ家によるジオン・ズム・ダイクン暗殺からルウム戦役までの本編直前までが描かれている。ルウム戦役で5隻の戦艦を沈めたシャア・アズナブルの活躍を見ることが出来る。この部分は、劇場版アニメとして、機動戦士ガンダム THE ORIGIN 1話-6話で製作されている。
ファーストガンダムに相当する部分も製作予定であり、2019年に上映されると言われている。(要検証)
安彦は自分で作品をコントロールしたかったと繰り返し述べている。特に、作中に登場するエスパー的超人である「ニュータイプ」の概念が独り歩きして、選民思想と結びつくことを警戒した。同名の「ニュータイプ」というアニメ雑誌が創刊されており、その懸念が荒唐無稽とは言えないほど、社会現象となっていったのである。
THE ORIGINでは主人公アムロ・レイを当初は「感の良いエスパー扱い」から入り、科学者による科学観察や研究対象として扱い、万能的な人物ではない、という演出を打ち出している。
また、宇宙移民の独立を提唱したジオン・ズム・ダイクンに対する極端な神格化も避けるように描いている。作中では演説中に毒殺されてあっけなく死んでしまう。
また、主人公たちが乗り込む「ホワイトベース」は、当初は偽装輸送艦として登場し、戦闘艦なのか不明なまま運用されて、強襲揚陸艦として使われると噂されて、最終的にジャブローで改装されてペガサス級宇宙戦艦となる。
このような「ホワイトベース」に対する軍艦運用の描かれかたはファーストとの違いとして挙げられる。
◯安彦良和とマルクス
安彦良和はマルクス経済学を徹底的に読み込んだ経緯で、ベトナム反戦運動にも取り組んだ経緯がある。現在では
「マルクス主義は間違いだが、マルクス経済学は今でも通用すると」
言及している。
マルクス主義の負の側面は存在するのは確かである。独裁政治による粛清や、統制経済による生産停滞が起きた。
だが、ソビエト連邦に限って言えば発足から、他国により営々と戦いを強いられた国家であり、経済の疲弊は避け難かった。
マルクス主義は米帝国主義よって敗北に追い込まれたのである。
ソ連はナチスとの戦いだけでも2000万人の死者を出した。
戦後は米国との核兵器競争が始まる。
1950年から始まった朝鮮戦争で、搭乗員こそロシア人では無かったが、米国とジェット戦闘機で交戦している。
ベトナム戦争ではベトナムはソ連や中国からの援助を得て対米戦争を勝ち抜いている。
ソ連は1973年まで戦争の当事者で有り続けたと言える。
1979年からはアフガニスタン紛争へ介入し1989年に撤兵で幕を閉じるが、これがソ連邦崩壊の決定打となった。
皮肉な事に、帝政ロシアが戦争を繰り返し、人民の疲弊が極限に達し、革命を産んだ。
ソ連革命政権は米国の帝国主義に対抗するために戦乱に明け暮れて、最終的に崩壊した。
西側を自由主義陣営だとか、民主主義陣営と呼んでいるが、実情は米帝国主義陣営であった。
ナオミ・クラインのショック・ドクトリンなど、米帝国主義批判が行われてはいるが、日本ではそれほど米国の国際政治政策が危険視や問題視されているとは言い難い。
そもそも、大戦後も各地で戦争が起きており、「冷戦」という表現が現実に即していない。
日本では第二次大戦後は平和な時代が続いたとみなされるが、日本本土が戦争になっていないだけで、朝鮮戦争特需やベトナム戦争特需で社会資本を蓄積することができた。
日本は米国保護領、そして、資本主義陣営のショーウィンドウ国家として一定の繁栄が許された。
一言で言えば、米帝が「ソ連の存在を許さずに抗争し続け結果的に崩壊した。一方で日本は米帝保護領としたので繁栄した」のである。
戦争時に培った製造技術の民間転用と、戦争需要で「下駄を履いて」経済成長したのである。
安彦はベトナム反戦運動で大学に二週間も立て籠もり除籍になった人物であるから、人一倍民族主義・アジア主義的な価値観に基づく抗米戦争に敏感だった。であったがゆえに、虚構の世界における戦争描写でも手を抜かないで、現実味をもたせることに執着したのである。
戦争描写における高い再現性は「装甲騎兵ボトムズ」などで活躍する高橋良輔にも見て取れる。高橋はアニメ「ヤングブラック・ジャック」でベトナム戦争やあさま山荘事件の脚本を担当している。
日本のアニメーションは日本国内が経済的基盤を得て、人民の生活にある程度の余裕があったから、それなりの市場規模を確保しえた。アニメ技術の成熟は製作者達の賜物であることは言うまでもないが、多数多様な作品がオタク層を育み、そのオタク層がアニメーション界を支えてきた。アニメ文化の爛熟は東側と西側両陣営が激突する間隙を縫って、偶発的な「歴史のあや」によって発生したとも言える。
戦争当事国や支援国は必要な生産を維持するだけで労働者は時間を奪われて、趣味的な活動を行う時間を持てないのである。
日本も2000年の清和会政治となってからは、米国への金融支援や軍事支援によって国力を吸われており、生活水準が低下しつつある。今後、日本アニメ界が生き残ろうとするのなら、日本以外の市場を獲得せざるを得ない。
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