実施日時:2013年 6月29日 10時~14時
実施場所:小下沢林道 小下沢林道入り口~野営場跡の間の往復
講 師:日本植物友の会副会長 山田隆彦氏
参 加 者:TSR会員 15名
研修の目的: 「植物や昆虫を中心とした生態を知る」ことにより自然環境の保護・保全の大切さを理解すること。および自然観察会のも
つ意味や役割、来山者に対する説明の仕方などの習得。
Ⅰ.本日の目的及び行程確認をし、講師紹介と講師挨拶。
最近山で気になることは「① 高尾山ではミシェランガイドに登録されて以来来山者がよりいっそう増え踏圧による裸地化や土壌固結
化が懸念される。② 登山者の歩行障害にならないためにされていると思われる下草刈りは短く刈ると表土が流れやすくなる。また、今
の時期の下草刈りは秋植物が十分成長出来ず種子の成長が十分でなくなることが懸念される。③ 近年は高尾山に限らず、イノシシ、
シカ、ヒルなどの影響が大きくなってきている。」
なお、本日の観察会に関しては判らないことがあればどのような事でも、何度でもよいから質問して下さい。自然を理解するには無理矢
理覚えようとしないで周りにいる知っている人に聞くことが早道です。私も全てが判る訳ではないが持ち帰ってでも調べます。
観察については全体像を見て次いで部分の特徴を確認し同定するやり方が良いと思います。今日は一日よろしくお願いします。
Ⅱ.解説内容
1)よく似た同士間の同定
①イタドリとオオイタドリ
イタドリは葉の基部が切り形でオオイタドリは心形。他にオオイタドリは葉の裏が白っぽく草丈も人の背丈を大きく超えるものも
ある。
②カラムシとアオカラムシ
カラムシは葉の下面が綿毛が密生していて白いがアオカラムシは緑色
③ミズキとクマノミズキ
ミズキの葉は互生でクマノミズキは対生。花の咲く時期はクマノミズキが1ケ月ほど遅い。
④ヒメジョオンとハルジョオン
茎の中心がハルジョオンでは中空であるのに対し、ヒメジョオンでは中空ではない。また根生葉より上の葉はハルジョオンでは
茎を抱くのに対しヒメジョオンは抱かない。
⑤コボタンヅルとボタンヅル
コボタンヅルは2回3出葉で小葉は9コあるのに対し、ボタンヅルは1回3出葉で小葉は3コ。
⑥フジ(ノダフジ)とヤマフジ
上方に向かってノダフジは右巻き(Z巻き)。ヤマフジは左巻き(S巻き)。
⑦マグワとヤマグワ
葉での同定は難しいが、ヤマグワは花柱が長く花柱にも長い花柱が残る。
⑧ジャノヒゲとオオバジャノヒゲ
ジャノヒゲは葉が細くて巾2mmしかなく、花茎は葉よりも短い。
⑨イタヤカエデとオニイタヤ
小葉の切れ込みがイタヤカエデでは大きく、オニイタヤでは浅い。イタヤカエデで小葉の切れ込みが特に大きなものはエンコウ
カエデとも呼ばれる。いずれもムクロジ科(新しい分類法ではカエデ科はムクロジ科に変更された)であるが、ムクロジ科はすべて
対生である。
2)名前の由来に基づく同定
①カラムシ
名前の由来は茎(カラ)を蒸して皮をむくことから。昔は繊維を利用するために栽培していた。
②スイカズラ
花の色は最初白く、やがて黄色になるので金銀花とも呼ばれる。
③ガクウツギ
見た目はアジサイの仲間。でも茎は中空になっているのでウツギの名がある。でもやはりアジサイ科。名前の由来ははっきりし
ないが、ガクアジサイに似たウツギという説もある。
④コモチマンネングサ
葉の付け根にムカゴを付けることから。ムカゴは触れるとぽろりと落ちる。
⑤ハエドクソウ
草全体に有毒成分があり煮出し汁をうじ殺しなどに利用したためという。
⑥タガネソウ
鍛冶職人の使うタガネに葉の形が似ているからという。
3)その他、特徴のあるものの同定
①イロハモミジ
裂片をイロハ・・・と数えることから、モミジは木の葉が色づくことからくる古語「もみち」から、カエデはカエルの手から。別名のタカ
オカエデは京都の高雄にちなんだ名前。
②クサノオウ
茎は白っぽい緑で切ると黄色い乳液を出す。そのため草の黄の名がついた説と、またできものに効くので瘡の王との説がある。
③エノキ
葉の根元に小さな花を咲かせる。花の後ろに球形の果実を付け、熟すと橙褐色になり食べると甘い。
④コクサギ
小さな匂い木で独特の匂いをもつ。葉は2枚づつ互生するコクサギ型葉序。
⑤イラクサ
茎や葉にさわると皮膚に折れ込んでくる刺毛がありかなり痛い。
⑥マタタビ
花は葉の下に付き目立たないので、開花時には葉が花のように白く変化し虫に開花を知らせ受粉をするといわれる。花期が終
わると元に戻る。
⑦ニガキ
名は苦木で枝や葉に強い苦みがある。
⑧エイザンスミレ
スミレ類の種子(閉鎖花も含めて)の付き方は朔果の中に3列・2列・1列に配列したものに分かれる。おおむね花の大きさに比
例している。
⑨ハナイカダ
雌雄異種のミズキ科の落葉低木。特徴は葉の中央に花が咲き、実がなる。名前の由来は花の咲く葉を筏にたとえたもの。
⑩ツタウルシ
つる性の落葉藤本。名前の由来は潤液(ウルシル)または、塗汁(ヌルシル)の略されたものという。毒性が強い。秋には真っ赤
に紅葉する。
⑪アカメガシワ
葉を、食物をのせるのに使い新葉が赤いことに由来する。
⑫ウワミズザクラ
古代の亀卜(亀甲占い)で溝を彫った板(波波迦)に使われたことに由来する。小枝の多くは落葉後に落ちる。枝の付け根は落ち
やすいようにコブのような形になっている。
Ⅲ.感 想
わずか片道30分の行程を、往復4時間かけての観察でした。この間延べ107種の植物について同定し解説して頂きました。
先生は冒頭での挨拶通り、とても易しく簡単な言葉で丁寧かつ我慢強く解説して頂きました。
参加者一同「とても解り易かった。しかも優しく説明して頂き、とても実のある観察会であった。これなら年2回は是非実施して欲
しい!どこかの誰かのように“いいかげんに覚えて。いつまでも覚えられないのは覚える気がないからだ。次同じ質問をしたら解説
料を取るからね。“といった気配を全く感じさせること無く親切かつ紳士的であった。
観察中はずっとしゃべり続け!かなりお疲れになったのではないかと心配しました。
本当に有り難うございました。
以 上(By Sak)
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