よろず戯言

テーマのない冗長ブログです。

仕事納めの大晦日、カレー店にて。

2023-01-05 01:28:56 | 日記・エッセイ・コラム

昨年大晦日。

仕事納め。

昼前には仕事が終わり、退社。

途中、スーパーや家電店に立ち寄って買い物。

まだ正午前。

 

このまま帰路に就いてもいいが、せっかくなんで贅沢に外食としゃれこもう。

会社で忘年会なんてなかった。

まあ、あったとて、嫌な社長やパートのやかましいオバハンらとともに楽しめるはずもないが。

 

以前の会社では、よく仕事帰りに外食したもんだ。

インドやネパール料理が好きで、お気に入りの店を4店舗ほど見つけ、

順繰りに週一で各店に通っていた。

つまり、ひとつのお店にツキイチで通っていた。

今の勤務先からは、その通っていたお店が帰路途中でなく、

自宅より遠ざかってしまうため、かれこれ一年以上行けていない。

予定よりも早く上がれたし、ちょっと遠回りして、久しぶりにあのカレー店へ行くか。

 

車を田川ではなく、飯塚方面へと向かわせる。

旧200号線沿い、小竹町から飯塚市に入り、しばらくするとそのお店が現れる。

川津交差点のちょい手前、オレンジ色の店構えと幟が目印。

火曜日が定休日だったんで今日は大丈夫なはずだが、大晦日は営業しているかな?

 

寒風にはためく幟が見えた!

入口の扉には“OPEN”の掛札。

ちょうど正午過ぎのランチタイム。

だが駐車場には一台も車が止まっていない。

車を降りて、ワクワクしながら店に入る。

 

「イラシャイマセー!」

懐かしい!

久しぶりに会った、小太りマスター。

背は低め、肌は浅黒く、マスクで見えないけれど、

うっすらと口ひげをたくわえていた。

もちっと濃かったらマリオだわ~・・・といつも思っていた。

貫禄があるが、きっと自分より年下なんだろう。

 

実際にはきちんとマスク着用していました。

 

厨房の奥には無口で背の高い、若いニイちゃん。

このニイちゃんも久しぶり。

やはり浅黒くて、なんだかイケメン。

馴染みのこのふたりを見ると、実写版のスーパーマリオの主演俳優ふたりを思い出す。

 

「ヒトリ?」

「はい、一人です。」

「ドーゾー。」

カウンター席へ案内される。 

昨年(年変わったので一昨年)の秋までは、

注文メニューもほぼ固定の常連だったけれど、さすがに忘れられてるだろうな。

 

いつも注文していたメニュー、

マトンサグ(ほうれん草とマトンのカレー)とライス、

それと特製サラダとサモサを頼もうかと思ったが、

ランチタイムなのでテーブルの上にはランチメニューの案内があった。

寄るのはいつも夕方~夜だったので、そういやランチメニューを食べたことがない。

 

どれどれ・・・単品で注文するよりもずっとお得なランチメニュー。

せっかくなんで、それを注文することにした。

選べるカレーは日替わりのエビのカレー。

辛さは前からずっと“3辛”。

選べるドリンクはラッシーをチョイス。

スタンプカードが満タンになっていたので、サービスでシークカバブ2本。

それとは別に単品でサモサ2個も注文。

 

さすが大晦日。

ランチタイムなのに客が自分だけだ。

この辺は市役所や総合庁舎なんかがほど近く、オフィス街でもあるので、

平日の昼はきっと客で賑わっているのだろう。

どこもとっくに仕事納めなので、客が居ないようだ。

 

料理の到着を待つ間に、久しぶりの店内を見渡す。

厨房の周りに飾られた、インドのお酒や調味料の空き瓶も、

レジの前に置かれた、真鍮皿の上のカラフルなフェンネルシードも、

天井から吊るされた、らせん状の黄色い像のモビールも、

座敷の仕切りに使われている、複雑な刺繍の入ったオレンジ色のレースカーテンも、

窓際に飾られている、ほどよくくたびれたストレリチアの鉢も、

どれもこれも一年前とおんなじだ。

 

カコンカコン、ジュワジュワと厨房から聞こえてくる調理音が、

朝からバナナ一本しか食べてなくて、空腹だった腹をさらに空かせてくれる。

はじめのひと口はカレーだ。

出されたお冷には口を付けず、グッとこらえて料理を待つ。

そんなとき、駐車場に車が止まる音。

自分以外の客が来店したようだ。

 

バタンバタンと次々とドアが締まる音がして、

カロンカロンと店の扉が開く。

「イラシャイマセー!」

小太りマスターが反応する。

「3人です。」

 

パッと見、20代後半とおぼしきニイちゃん達がゾロゾロと入ってきた。

声のトーンや口調からして、陽キャラの集団っぽい。

せっかくひとり静かに、久しぶりにここの料理が楽しめると思っていたのに・・・。

よりによって嫌いなタイプの陽キャどもがやって来やがった・・・。

 

「この店、ちょうど一年ぶりくらいっすよ!」

「マジで?覚えてねえ~。」

「正月休みでここで先輩らとカレー食ったの覚えてます。」

「ああ~あんときチーズナン食ったの覚えてるわ!」

「ほら!やっぱ、一年前です、ちょうど去年の大晦日!」

「マジで!?すごくね?」

 

ああ・・・やかましい連中がやって来たわ。

サントリー サタデー・ウエイティング・バーの教授みたく、

聞き耳を立てて陽キャ連中の会話を聞く。

九工大の学生らかな?

いや、正月休みでここに来るってことは、地元が飯塚で他所へ行ってる連中か?

それにしても典型的な飯塚なまりでしゃべりやがるな。

 

ちょうどここで料理が届く。

ランチのセットメニューがワンプレート。

ミニサイズのナンに、小さな真鍮皿のライス。

中くらいの真鍮皿にサラダと日替わりのエビとトマトのカレー。

そしてプレートに直にタンドリーチキンが一本。

 

「どうなんよ、結婚とか?」

「あ、ちょうど言おうと思ってたとこです。」

「俺も、みんな呼ぶけん。」

「あ、先輩も来年っすか?」

「うん、10月26日!」

「!・・・マジすか!? 俺も10月26日!!」

「仏滅?」

「仏滅!」

 

「はっ!嘘やん?」

「もう変えられん。」

「俺も変えられん。」

「どうするん?!」

「いや、変えて。」

「変えられんちゃ。」

「俺も変えられん。」

 

へぇ~こんなことがあるんやな。

どうやら連中のうち二人が来年結婚。

その式の日が丸かぶりしてしまったようだ。

奇遇としか言いようがない。

カレーをすくって口に運びながら、面白いのでずっと聞き耳を立てる。

いや、連中は声がでかいうえに、すぐ後ろの座席に着いたので、

聞き耳を立てなくとも、否が応にもその会話が耳に入ってくる。

 

トマトベースのカレーだったか。

スパイスは控えめだが、濃厚で旨い。

辛さ3で正解だった。

ライスが少ないのが不満ではあるが、

まあナンのお代わり自由だから、足りなくなれば追加注文すればよかろ。

 

「いや、変えれちゃ、客どうするん?」

「誰呼ぶんす?」

「**も、**も、**も・・・・。」

「客も丸かぶりじゃないすか!」

「当たり前やん、だき変えれちゃ。」

「いや、変えれん。」

「俺ももう変えれん。」

 

「オマタセシマシター、シークカバヴデス、アツイノデ キオツケテクダサイ。」

ジュワ―と音を立てて、グリルプレートに乗せられたシークカバブが届く。

見た目ちくわのような、鶏の挽き肉にハーブとスパイス、野菜を混ぜて焼かれた料理。

具と香辛料が入った鶏のつくねと思えば判ってもらえるか。

別の小さな器に入った、こげ茶色した謎のソースを付けて食べる。

これが旨いんだ。

 

 

謎のソースをシークカバブに塗りながら、連中の会話を聞く。

「こんなことある?」

「あるんすね・・・。」

「マジ、キショっ!キショっっ!!」

「式場どこなん? 俺****。」

「********ホテルです。」

「何時から?」

「3時。」

「俺5時。」

 

アツアツのシークカバブをフォークでカットして口へ運ぶ。

ハフハフ旨い。

寒い時期にこれは最高だ。

グリルプレートの底に敷かれた、タマネギやピーマンなどの生野菜もいい。

これにも謎のソースとシークカバブから滲み出る肉汁をしみ込ませ、残らずにいただく。

 

 

陽キャラ共が注文を済ませ、会話が続く。 

「その式場、場所どこっすか?」

「中洲川端。」

・・・。

・・・・。

「わりと近いっすね。」

「ほんとやん、目と鼻の先やん。」

「2時間やったら、これ両方、行けるくないすか?」

「連続で行けるけど、二次会とかどうするん?」

「一緒にしたらいいやん。」

「いや、料理どうするん?」

「ひとり三品ずつにする?料理代浮くやん。」

 

おもろいなそれ。

ナンをちぎって頬張りながら、話を訊き続ける。

カロンカロンと、また扉の開く音。

「イラシャイマセー、ナンニンデスカ?」

ここでカップル客が来店してきた。

女性がめちゃくちゃ美人の若い子だ。

くっそ、またもリア充が来やがったか!

 

「オマタセシマシター、サモサデス。ゴユックリ ドウゾー」

最後に揚げたてのサモサが到着。

これで注文した料理がすべてそろった。

サモサはインドの揚げ料理。

茹でてすりつぶしたジャガイモに、数種類の豆や挽肉、スパイスが加えられ、

小麦粉の皮で三角形にくるまれて油で揚げられた、日本のコロッケのような料理。

ケチャップを付けて食べる。

 

 

ナンもライスもとうに無くなっていたが、

サモサが来るのを見越して、ナンのお代わりは控えていた。

あまり食い過ぎて、年末年始に胃もたれを起こしたくはない。

年末年始は毎回、胃もたれに悩まされるからな。

 

サモサにケチャップを付けて、フォークでおもむろに割る。

ターメリックで黄色くなったジャガイモの餡が出てくる。

スパイスの効いた刺激的な香り。

アツアツのこれを、ハフハフ言いながら食べる。

旨い!

 

 

サモサをハフハフしながら、連中の話の続きを聞く。

「いや、変えれるんやったら変えようや。」

「いや~もう無理っす。」

「俺も無理。」

「というか、なんで俺に言わんかったん?」

「いや、今日言うつもりやったんで・・・。」

「早く判っときゃ変えれたやん。」

「変えれんの?」

「変えれんす。」

「俺も変えれん。」

もう不毛である。

会話がグルグルぐるぐると輪廻転生。

 

ふたつ目のサモサに取り掛かる。

ここのサモサは豆がたっぷり入っているからいい。

とりわけカシューナッツがたっぷりで食感がいい。

スパイスと塩加減も絶妙だ。

いくらでも食えるかもしれん。

 

「なんで10月26日なん?仏滅やったき?」

「はい、仏滅で安かったし、二回延期になって、キャンセル待ちで決まったんすよ。」

「予約でだいぶ待たされて・・・変えるの厳しいです。」

「俺もだいぶ待って、決まったっちゃんね・・・。」

「でもどっちかが変えれたら、それがベストやん。」

「式場に話してみて、なんとかならんの?」

「いや、彼女の方の実家とか友達とかがダメと思うんで。」

 

「オマタセシマシター、チーズナンセット、エビカレーノ サンカラ、ラッシー。」

「チーズナンセット、ヒキニクノカレーノ サンカラ、アイスコーヒー。」

「チーズナンセット、ナストヒキニクノカレーノ サンカラ、ラッシー。」

連中にも料理が到着。

やかましい会話が途切れとぎれになる。

 

自分はラストのタンドリーチキンを頬張る。

冷めてしまうと肉がパサパサになる、タンドリーチキンを最後にするのはナンセンスだが、

ここのタンドリーチキンは冷めても旨いのだ。

骨に付いた肉も、軟骨も骨髄までも余すことなくいただく。

 

連中はまだ例の会話で盛り上がり中。

会話と同時にハフハフ音と、鼻をすする音が聞こえる。

辛さに咽ぶ声も。

このお店の3辛は一応「激辛」設定だからな、うっかりすると咽る。

自分にゃ程よい辛さだが、そうでないひとも居るだろう。

 

結婚式か・・・そういや友達の結婚式に呼ばれたの一度きりだったな。

リアルで友達が居ないから、連中のような会話で盛り上がることもない。

唯一居る、高校時代からの友人も、めっきり疎遠になってしまって、年賀状だけのやり取り。

というか、アイツ完全なる喪男で、たぶん魔法使いを経て賢者になっているだろう。

結婚式の話で揉めるのも、友達が多いからこそ、若いからこそ。

連中のことが羨ましくなる。

 

カップルのところにも料理が運ばれている。

チラっと見ると、男の方が自分に背を向け、女性の方がこっちを向いている。

本当に若くて美人だ。

スタイルも良さげ。

背中しか見えないが、男が羨ましい。

さぞ男前なんだろうさ。

 

ラッシーを飲み干し、テーブルを片付ける。

紙ナプキンで口を拭き、マスクを付けて席を立つ。

会計のため、レジへ向かおうとすると、カロンカロンとまた扉が開く。

若いニイちゃんがひとりで入って来た。

「イラシャイマセー!」

小太りマスターから訊かれる前に、無言で指を一本立てる若いニイちゃん。

「オヒトリデスネ、ドーゾー。」

自分が座っていた隣のカウンター席に静かに座る。

 

支払いを済ませ、カップルの男の方をチラっと見る。

おっさんやん!

男前でもねえ!

自分よりも年上だぞ・・・こいつ、なのにあんな若くてきれいなネエちゃん・・・。

なんて羨ましいやつなんだ!!

そんなことを思いながら、店を出る。

あ・・・カップルじゃなく、父娘だったとかかな?

それだったら安心だ。

いや、なにが安心なんだか解らないが、そうであって欲しい。

 

久々に美味しいカレーを食べられて満足。

いい仕事納め、いい大晦日を迎えることができた。

遠回りでも、たまには来ないといけないな。

今度はいつも食べてた、マトンサグにしよう。

単品で1,050円もするけれど、ここのマトンサグは最高なんだ。

大晦日だけど、ポカポカ陽気のお昼。

気分よく帰路に就く。

 

 

年賀はがき買わんといかんな・・・。

郵便局はとっくに閉まっているし、コンビニででも買うか。

紅白は出場歌手ノーチェック。

もうテレビはスルーでいいや。

ドラクエのカウントダウンイベントに参加するかな?

 

車のエンジンを回す。

カーステからCDが流れる。

ここ2ヶ月ほど入れっぱなしのhitomiの最初のベストアルバム。

流れる曲は、デビュー曲、“Let's Play Winter”。

寒い冬にぴったりのナンバーだ。

個人的に、広瀬香美の“ゲレンデがとけるほど恋したい”と並んで、ゲレンデで聴きたい曲。

いや、スキーもスノボもやらないんだけどね。

 

今年一年いろいろあったが、いい年末を迎えられた。

家庭も仕事も問題は山積だけど、ぼちぼちこなしていけばいい。

あたふたしていても仕方がない・・・。

そんなことを思いながら、家へと車を向かわせる。

朝は空いていたのに、最後の買い物だろうか?

大晦日の昼の道路はやたらと混んでいた。

 

hitomi / Let's Play Winter

1994年にリリースされた、hitomiのデビュー曲。

小室哲哉プロデュースで華々しくデビューしたものの、

安室奈美恵や華原朋美、globeの陰に隠れてそこまでのメガヒットはなかった。

本人も「小室ファミリーの落ちこぼれ」と自虐的にこぼしていたが、

小室ファミリー出身で、最後までリリースを続けていたのは、安室奈美恵とhitomiだけ。

自分は29年ずっとファン。

 



2 コメント

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Unknown (mcm0815)
2023-01-05 04:27:52
面白かったぁ(笑)。
よく、セリフ覚えてるなぁ。
そして絵が上手い!

カップルは、きっと親子だよ(笑)。
娘さん親孝行してるんだよ。。。
まぁ、多分だけど。
安心安心(何がだ?)。
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しょうもないことに記憶力を発揮します ()
2023-01-06 01:38:49
みはねさんこんばんは、コメントありがとうございます。
 
実はこの記事、大晦日に帰宅してすぐに書いたんです。
あの面白かった会話内容を忘れてしまわないうちに・・・。
式場の名前や招待予定の友人の名前まで、
伏字にしている部分もしっかり覚えているんですよ。
そこまで書いちゃうと特定できてしまうな・・・と伏字にしました。
 
絵はペイントでマウスと格闘しながら描きました。
以前はちゃんとケント紙に絵具で描いていたのですが、
最近は絵具使うのが億劫になってしまって・・・。
 
十中八九、父娘だと思うとります。
でも、あの年頃の娘さんと二人で食事できるってのも、
同じ娘を持つ父として、やっぱり羨ましい・・・。
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