資料1
資料2
「第7回南アルプス写真展」資料1「南アルプスの三角点」、資料2「静岡県山岳番付」を興味深く拝見しました。「番付」につきましては、納得の山もあり、物言いをつけたい山もあり、それぞれの価値観の違いが面白いということでした。一方、「南アルプスの三角点」につきましては、次の点で少し疑問がありました。
一つは、タイトルの「南アルプスの三角点」という名称ですが、資料にあるのは静岡県内に限られています。“南アルプスの”といった場合には当然、長野・山梨両県も含まれると思います。また、資料では南アルプスの範囲にいわゆる深南部と白峰南嶺の続きとして安倍東山稜も含まれていますが、その中で三等の取捨の基準はどこにあるのかが不明でした。二つ目は“三角点”としていますが、資料に載るのは三角点が埋設された山(ピーク)であって、尾根途中にある三角点はごく一部(「蕨段」)を除いて上げられていません。このようなことを考慮しますと、タイトルは「静岡県内南アルプスの三角点峰」とでもするのが本資料の正確な標記かと思いました。
資料で省かれている三角点を上げてみます。(図参照)
①Ⅲ伊那荒倉(2698.0m 北荒川岳)
仙塩尾根上のピークだが、「伊那」と点名に付くとおり、山頂が伊那側にあることが外された理由だろうか。
②Ⅲ小西俣(2253.8m)
小河内岳北の前小河内岳(2784m)東尾根上の小ピーク。
③Ⅲ西小石(2827.9m)
東岳(悪沢岳)北尾根上。
④Ⅲ蛇が沢(2007.0m)
西俣悪沢北側の枝尾根上。
⑤Ⅲ万斧(2068.6m)
白峰南稜2159標高点P西尾根上の明瞭なピーク。但し登山道は無い。
⑥Ⅲ奥槙沢(2564.4m)
小赤石尾根上、赤石小屋南東200mほどの小ピーク。登山道は西側を巻くが、「小屋裏展望台(名なし三角点)」と称し標識及びトレースは有る。
⑦Ⅲ小石下(1586.8m)
椹島から千枚岳への登山道上の展望地。同じ千枚道上にあって蕨段が「取」で、小石下が「捨」は何故だろうか。
⑧Ⅲ兎岳(2799.8m)
主稜線上の兎岳山頂(2818m)から南西に200mほど長野県側。伊那荒倉と同様に長野側にあることが外された理由か、あるいは山頂ではないからか。しかし、隣の聖ノ岳(2978.7m)も奥聖岳(2982m)山頂ではない。
次は、深南部で外された三角点峰。尾根上の小ピークなどは最初から外した。
⑨Ⅲ千頭山(1946.4m)
池口岳南峰南尾根上の山。光岳の好展望地として知られたが、支尾根上ということで外されたのか。
⑩Ⅲ黒沢山(2123.4m)
中ノ尾根山から南下する榛原郡界尾根上のピラミダルな山。
⑪Ⅲ合地山(2104.9m)
中ノ尾根山から寸又川に向かって下る尾根上、「合地山」名のピーク(2149m)南にある三角点ピーク。これも支尾根上という判断か。
⑫Ⅱ諸ノ沢山(1750.4m 諸沢山)
合地山の尾根をさらに南下。支尾根上ではあるが、この山は二等三角点である。
⑬Ⅲ六呂場(1748.0m 六呂場山)
黒沢山から榛原郡界尾根をさらに南下。
⑭Ⅲ五葉沢(1796.3m 五葉沢の頭)
小無間山南西尾根、小無間小屋の立つピーク。
⑮Ⅱ奥仙俣(1513.4m アツラ沢ノ頭)
安倍奥西山稜、井川峠南側。「静岡県民の森」内の目立たないピークだが二等三角点峰。
こうしてみますと三角点は全ての主要ピークに設置してあるものではなく、また標高や山頂(最高地点)とも基本的には関係がないことが分かります。したがって、“三角点の有無”という視点で南アルプスの山々を俯瞰するのは少し無理があると思いました。特段、“番付”の材料にはならないということです。日本第二位の高峰・3193m北岳(3192.5m「白根岳」)は三等三角点ですし、第三位の3190m奥穂高岳には三角点そのものが設置されていません。その意味では、一等三角点最高峰である我が赤石岳は立派(?)なものです。赤石岳に隣接する県内の各一等三角点との距離は、毛無山35km、大無間山23km、熊伏山33kmとなります。
静岡県の一等三角点
蛇足ですが、奥聖岳山頂と三等三角点「聖ノ岳」の位置は一致しないことは前述しましたが、聖岳の最高地点は前聖岳(3013m)ですから、地理院地図には三つの標高が記載されています。さらに、わが国最高峰の富士山剣ヶ峯は単一の狭い山頂の範囲で、①電子基準点「富士山」3774.9m ②二等三角点「富士山」3775.5m ③富士山最高地点(剣ケ峰)の標高3776m(二等三角点標石より北へ約12m)と三つの標高が存在することになります。