映画と渓流釣り

希望の国

 題名は大いなる皮肉なんだろうか?それともラストシーン、抱きあう若妻の未来を信じる涙に秘められた希望なのか?分かりやすい反戦映画のような作風であるのに、そのあたりが非常にあやふやな表現になっており消化不良でもある。
 園子温監督らしくない静かな語り口なのだが、常に心をざわめかせる背景音が画面を波立たせるため、ヒリヒリした緊迫感が全体を覆う。あまりにもワザとらしい反原発映画なので、問いかけている主題の重さは充分わかっていても素直に我が事のように感じることができなかった。その意味では失敗ではなかろうか。前作「ヒミズ」で映された災害後の瓦礫のほうが、よほど哀しみとか怒りとか喪失感とかを雄弁に語っていた。

 映画としては成功したとは思えないが、今この映画を作ったことの意義は大きい。
ドキュメンタリーの心の奥底を見せるには、作り物のドラマにすることしかないし、それをできるのは映画監督しかいないのだということを園子温は知っているのだろう。
 このところ、毎年、年に二本の製作は体力も精神力もキツイことだろうけど、今しか出来ない事を限られた時間の中でやり続けて欲しい。
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