映画と渓流釣り

山田洋次御大健在ナリ

 「小さいおうち」

 御大が撮影に入ったと聞いた時に図書館で見つけた原作は、作家のことも何にも知らずに読んだのですが、大変面白い小説でした。去年読んだ小説では一番楽しめたので、よほどのことが無い限り失敗はしないだろうと思っておりました。

 戦前戦中の上流階級と女中の関係性がよく分かるように描かれていた分、小説より映画のほうが説得力があるように感じました。女主人と女中の信頼がしっかりと描かれたからこそ、老女が女中として過ごした青春時代の小さな罪に感情移入できるのです。大切であるからこそ、失いたくないからこその小さな罪作り。肌理細やかな日本映画の佳品です。

 黒木華はこのところ本当に良いですね。
松たか子の風格漂う演技に負けていませんでした。
現代顔でないところも、昭和初期に田舎から都会に来て女中をしている設定にぴったりはまっていました。
雰囲気もあり映画女優らしい奥行きも感じられこれからが楽しみですが、蒼井優のように曲がっていかなければ良いけれど。

 キャストが「東京家族」とかなり被っていました。
妻夫木と夏川結衣の兄弟、橋爪功と吉行和子の夫婦には笑いましたし、中島朋子のいでたちは少々違和感を覚えました。小林稔侍、林家正蔵も使われており、山田洋次の趣味も感じられました。

 一貫して、戦争による庶民の思想を束縛する事への嫌悪感を描いておりますが、「母べえ」の時のような直接的な表現で無かった分記憶に残る作品となりました。
最近の御大作品群では一番良い出来であったと思います。
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