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映画と渓流釣り

MOTHER 母とは 毒親とは


この時期、渓流で竿を振っていると、鴨の親子によく出会う。孵化したばかりの小鴨が母鴨の後を遅れまいと必死についてゆく姿を見ると、微笑ましくも丈夫に育って欲しいと親の気持ちにもなってしまう。鳥だって子が母親を慕う健気な感情はあるし、まして母親が子供の成長に付き添う様は母性としか言いようがない。

母親になったことがないから母性については語れない。
ただ、息子として母の愛情を身に染みることはこの歳になっても常々ある。年に二度ほどしか帰省しないから年老いてゆく老母の心配はあるけれど、それ以上に母親が息子に対するお節介にも近い情愛は大きい。

それにしても毎年起こる母親の子殺しや育児放棄は、特異な例だとしても絶えることはない。
そこにある心理こそは皆目闇の中で知りようがないけど、今日この映画を観てもしかしたら育児放棄はかえって子供のためなのかもしれないと思ってしまった。ましてや、無理心中や障害児の子殺しは極度な愛情の裏返しなのかも知れないとまでも。親の勝手な言い分であることは重々理解して書いている。

MOTHERに登場する母親は、息子を私物化して奴隷のように扱っているが、息子は心の支えでもある。だから放棄ができないでいる。是枝作品「誰も知らない」のYOU演じる母親はあっけらかんと子供たちを放棄した。どちらも悲劇だけど、母親無くとも子は育つ。こんな酷い母親なら消えてくれた方がよっぽどマシな気がする。

自分の欲望のため息子に自分の両親でもある祖父母を殺害させる母親を、どんなふうに理解したらいいんだろう。塀の中で接見するケースワーカーに息子は「それでもお母さんが好き」と話す。それを伝え聞いた母親の無表情な視線がこの作品の全てであるようだ。

長澤まさみはこのところ映画に出ずっぱりで、女優としての絶頂期を迎えつつあると思う。少々オーバーアクションで気に掛かるところもあるけど、ラストのまなざしだけでも彼女の代表作に数えていいと思う。今年の映画賞を沢山もらうだろうな。阿部サダヲはいつものクズっぷりをいかんなく発揮した。感心したのは新人の奥平大兼の息子役。スポイルされないで味のある役者に育って欲しい。

大森監督は常に標準以上の作品が作れる人だけど、今回の作品の成功は脚本に港岳彦を迎えたことだ。「あゝ荒野」の骨太な脚本で注目され、今一番脂がのっている脚本家だ。これからも楽しみな人なので、注目していこうと思う。
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